質問主意書

第151回国会(常会)

答弁書


答弁書第一四号

内閣参質一五一第一四号

  平成十三年四月二十日

内閣総理大臣 森 喜朗   


       参議院議長 井上 裕 殿

参議院議員竹村泰子君提出日本政府の対ミャンマー(ビルマ)政策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員竹村泰子君提出日本政府の対ミャンマー(ビルマ)政策に関する質問に対する答弁書

一について

 平成十二年十月から開始されたミャンマー政府とアウン・サン・スー・チー女史との直接対話については、同国の民主化に向けた重要な一歩として高く評価している。このような直接対話の実現の背景には、我が国を始めとする国際社会の粘り強い働き掛けに加え、ラザリ・イスマイル国際連合事務総長特使の尽力があったものと考えており、今後とも同特使と連携を図りつつ、ミャンマーの民主化に向けた努力が行われるよう様々なレベルで働き掛けていく考えである。
 御指摘のニューヨーク・タイムズ紙の記事は、このような直接対話を踏まえ、我が国政府が昭和六十三年以来停止していたミャンマーに対する援助を全面的に再開することを検討していること等を報じている。しかしながら、ミャンマーに対する政府開発援助については、従来から、民主化及び人権状況の改善を見守りつつ、当面は既往継続案件や民衆に直接裨益する基礎生活分野の案件を中心にケース・バイ・ケースで検討の上実施するとの方針の下に行ってきており、この方針を変更し、援助を全面的に再開することを検討しているという事実はない。

二について

 平成十二年十二月八日付けの国際労働機関(以下「ILO」という。)のファン・ソマヴィア事務局長の書簡に対しては、次のとおり回答した。

1 我が国とミャンマーとの関係は、ミャンマーにおける強制労働を直接的又は間接的に助長するいかなる要素も含むものではなく、我が国が基礎生活分野を中心にミャンマーで実施している政府開発援助案件についても、同国の強制労働を助長している例はない。
2 我が国は、ミャンマーにおける強制労働問題の早期解決を念願するものであり、そのための同国政府とILOとの建設的な対話が早急に開始されることを希望する。

三について

 ミャンマーの経済計画省ビル内に「ミャンマー経済構造改革支援タスクフォース」事務室を設けたという事実はない。また、本年二月の「アセアン新規加盟国投資促進シンポジウム」は、日本と東南アジア諸国連合(以下「アセアン」という。)との協力を進めるとの観点から、アセアン加盟国間の経済格差の是正及びアセアンの統合支援を目的として、アセアン新規加盟国であるカンボディア、ラオス、ミャンマー及びヴィエトナムへの投資の促進を図るために開催されたものであり、ミャンマーにおける強制労働を助長する要素を含むものではない。
 ミャンマーに対する政府開発援助については、民主化及び人権状況の改善を見守りつつ、当面は既往継続案件や民衆に直接裨益する基礎生活分野の案件を中心にケース・バイ・ケースで検討の上実施する方針としている。このような方針は、開発途上国における民主化の促進、基本的人権及び自由の保障状況等に十分注意を払いつつ、相手国の要請、経済社会状況、二国間関係等を総合的に判断の上、政府開発援助を実施することとしている政府開発援助大綱(平成四年六月三十日閣議決定)に沿ったものである。
 ミャンマーに対する我が国の民間企業による直接投資については、ミャンマーが様々な形で国際社会との関係を持つことが同国の民主化の促進にもつながるものと考えており、特にこれを抑制していない。

四について

 スズキ株式会社は、ミャンマーにおいてミャンマー自動車・ディーゼル工業公団(MADI)外二社とミャンマー・スズキ社を設立し、日常生活用の二輪車(総排気量〇・一二五リットル程度)及び四輪車(総排気量一リットル程度)を生産していると承知している。
 ミャンマーに対する我が国の民間企業による直接投資については、ミャンマーが様々な形で国際社会との関係を持つことが同国の民主化の促進にもつながるものと考えており、このことは同国の国営企業等と我が国の民間企業が合弁事業を行う場合にも当てはまると考えている。