質問主意書

第151回国会(常会)

答弁書


答弁書第一三号

内閣参質一五一第一三号

  平成十三年三月二十七日

内閣総理大臣 森 喜朗   


       参議院議長 井上 裕 殿

参議院議員櫻井充君提出民間移送会社による精神障害者の移送に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員櫻井充君提出民間移送会社による精神障害者の移送に関する質問に対する答弁書

一及び二について

 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号。以下「法」という。)においては、精神障害者本人の同意に基づく任意入院(法第二十二条の三)以外の入院形態として、措置入院(法第二十九条)、医療保護入院(法第三十三条)等が規定されている。
 御指摘のひきこもりの症状が見られる精神障害者とは、どのような症状を指すかが必ずしも明らかではないが、一般には自身を傷つけ又は他人を害するおそれはない場合が多いと考えられ、仮にこのような場合に精神障害者の保護者から法第二十三条の申請があっても、都道府県知事(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市の市長を含む。以下同じ。)は法第二十七条第一項に規定する精神保健指定医による診察の措置を講ずることはないと考えられる。
 一方、精神障害者が任意で精神病院(精神病院以外の病院で精神病室が設けられているものを含む。以下同じ。)を受診することがあるが、その際に民間の移送サービスを利用するか否かにかかわらず、医療保護入院をさせるためには精神保健指定医による診察が必須とされており、その診察において医療及び保護のため入院の必要があると判断されれば、精神病院の管理者は保護者の同意を得て医療保護入院をさせることができる。また、医療保護入院の必要がない場合は、精神障害者本人の意思に基づき、任意入院又は通院により適切な医療が提供されることとなる。
 以上のように、精神障害者の入院形態等に差異が生ずるのは、都道府県知事に対する申請等の有無によるためではなく、個々の精神障害者の症状に即した適切な医療及び保護を提供するためであり、また、精神障害者本人を同意なしに精神病院に入院させる場合には、受診に際して民間の移送サービスを利用するか否かにかかわらず、精神保健指定医の診察が必須とされていることから、御指摘のような法律上の不備はないと考えている。

三について

 精神障害者が任意で精神病院を受診する際に、移動の便を得るために民間の移送サービスを利用することは否定されないが、その際に刑法(明治四十年法律第四十五号)第二百二十条に規定する逮捕又は監禁のような犯罪行為が行われてはならないのは当然のことである。
 また、一及び二についてで述べたとおり、精神障害者を本人の同意なしに精神病院に入院させる場合には、精神保健指定医の診察が必須とされている。

四及び五について

 御指摘のような移送サービスを行っている民間事業者が警備業者として都道府県公安委員会の認定を受けている場合には、その警備業務の実態は都道府県公安委員会が把握し得るところであり、この内容を必要に応じて各都道府県等の精神保健福祉部局が把握することは可能である。また、厚生労働省においては、平成九年度厚生科学研究費補助金により実施した「精神障害者の人権擁護に関する研究」において、全国の保健所を通じて民間事業者による精神障害者の搬送の状況等を調査するとともに、現在、都道府県、財団法人全国精神障害者家族会連合会等を通じて民間事業者による移送事例に関する調査を実施しているところである。
 これらの調査結果等を踏まえ、精神障害者に対する適切な医療及び保護を確保する観点から必要があると判断される場合には、精神障害者及びその家族に対する情報提供等を図ってまいりたい。