第151回国会(常会)
答弁書第一二号
内閣参質一五一第一二号 平成十三年四月六日 内閣総理大臣 森 喜朗
参議院議員日笠勝之君提出C型肝炎の対策等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員日笠勝之君提出C型肝炎の対策等に関する質問に対する答弁書 一の1について 人口動態統計によれば、平成十一年の我が国の肝がんによる年間死亡者数は三万三千八百十六名(男性二万三千四百九十二名及び女性一万三百二十四名)であり、部位別がんごとの年間死亡者数の中で第三位となっている。その年次推移については、昭和四十五年には九千四百四十二名であったものが、平成七年には約三倍の三万千七百七名に急増し、同年以後はほぼ横ばいの傾向にある。
一の2について 我が国の肝がん患者に占めるC型肝炎ウイルスの持続感染者の割合については、厚生労働省に置かれた「肝炎対策に関する有識者会議」(以下「有識者会議」という。)に出席した専門家が、千九百九十年代に発症した肝がん患者のうちの七十六パーセントがC型肝炎ウイルスの持続感染者であった旨の報告を行っている。 一の3について C型肝炎ウイルスの持続感染者は、百万人から二百万人程度存在すると推定される。 一の4について C型肝炎ウイルスは昭和六十三年に発見されたものであり、いまだ十分な知見の集積がなく、また、その感染から肝がん等の発症までには長期間が経過するため、C型肝炎ウイルスの持続感染者の肝がん等の発症率について一概に述べることは困難である。
一の5について C型肝炎ウイルスの持続感染者は、その多くが慢性肝炎の症状を呈し、一部は肝硬変、肝がんへと進行し、また、感染時の年齢にかかわらず四十歳代前後で肝炎の症状が進行し、六十歳から六十五歳で肝がんの発生が増加する場合が多いと考えられている。 一の6及び7について 平成十年度の厚生省がん研究助成金により行われた「地域がん登録の精度向上と活用に関する研究」によれば、平成六年の人口十万人当たりの全国がん年齢階級別推定罹患率は、男性では、四十四歳までは十・〇未満、四十五歳から四十九歳までは十九・〇、五十歳から五十四歳までは三四・五、五十五歳から五十九歳までは八十一・八、六十歳から六十四歳までは百五十六・一、六十五歳以上は六十歳から六十四歳までと同程度であり、女性では、五十四歳までは十・〇未満、五十五歳から五十九歳までは十六・一、六十歳から六十四歳までは三十二・八、六十五歳から六十九歳までは五十六・三、七十歳から七十四歳までは五十八・六、七十五歳から七十九歳までは六十五・一、八十歳から八十四歳までは六十五・四、八十五歳以上は七十五・一である。また、精度の高い地域がん登録を実施している地方公共団体として選定された一府十県一市における平成六年の性別による肝がんの年齢調整罹患率の推計では、男性は大阪府、佐賀県及び兵庫県が、女性は大阪府、佐賀県及び福井県が高いとされている。
一の8について 肝がんによる死亡者数の今後の推移については、現在はその将来推計に資するための基礎的な研究が進められている段階であり、お答えすることは困難である。
一の9について 肝がん患者の医療費は、個々の患者の重症度、行われた医療行為の内容等により大きく異なるが、平成十一年の患者調査及び平成十一年の社会医療診療行為別調査報告の結果から「肝及び肝内胆管の悪性新生物」による入院患者一人当たりの平均医療費を推計すると、約八十四万八千円となる。 二の1及び2について 我が国におけるC型肝炎ウイルスの感染のまん延については、有識者会議に出席した専門家が、第二次世界大戦後の混乱期にまず覚せい剤濫用者の間での注射器、注射針の共用・回し打ち等により感染が拡大し、次にこれらの覚せい剤濫用者が当時の売血者集団の一部に加わり、このような売血者集団から供血された血液の輸血を受けた者にも感染が拡大したことや、当時において現時点から見れば衛生的に必ずしも適切とはいえないような医療行為、はり等の民間療法、入れ墨等が行われたことが感染拡大の原因になったと考えられる旨の報告を行っており、このような仮説により一定の説明が可能であると考えている。 二の3について それぞれの医療機関が注射器を適切に使用することが基本となるが、政府としては、その時々の医学的知見を踏まえ、次のように適切に対策を講じてきたところである。
二の4について 輸血用血液製剤によるC型肝炎ウイルスの感染を防止するため、日本赤十字社を指導し、献血の際の問診において過去の輸血歴、麻薬及び覚せい剤の使用歴等の確認を行わせるほか、別表第一に掲げる対策を講じてきたところである。政府としては、従来、その時々の科学的知見を踏まえた適切な対策を講じてきたものと考えており、今後とも輸血用血液製剤の安全性の確保に努めてまいりたい。 二の5について それぞれの医療機関が医療器具を適切に使用することが基本となるが、政府としては、その時々の医学的知見を踏まえ、次のように適切に対策を講じてきたところである。
二の6について 非加熱の血液凝固因子製剤には、血液凝固第VIII因子製剤、血液凝固第IX因子製剤、血液凝固第XIII因子製剤、フィブリノゲン製剤、フィブリン製剤、トロンビン製剤及びハプトグロビン製剤がある。このうち多数の血漿を用いて製造されること等により肝炎ウイルスの感染率が高いと想定されるものとしては、血液凝固第VIII因子製剤、血液凝固第IX因子製剤及びフィブリノゲン製剤がある。
三の1について C型肝炎について、正しい知識の普及啓発を行うことや、感染者又は感染の可能性の高い者が自らの感染状況を認識し、必要な相談、指導、医療等を受けるように広く呼び掛けることは、極めて重要であると考えている。
三の2について C型肝炎ウイルスの感染の有無に関する検査としては、C型肝炎ウイルス抗体検査、C型肝炎ウイルスRNA検査、C型肝炎ウイルス遺伝子型検査等があるが、これらの検査のうち診療報酬の算定対象となるもの及びその診療報酬点数は、別表第二のとおりである。なお、診療報酬の算定対象外の検査については、その費用等を把握していない。 三の3について C型肝炎ウイルスの感染の有無に関する検査は、各医療機関で個人が費用を負担して受診することが基本となる。
三の4について 御指摘の調査は、血友病以外の疾病で非加熱血液凝固因子製剤を投与されていた者はC型肝炎ウイルス又はB型肝炎ウイルス(以下「C型肝炎ウイルス等」という。)に感染した可能性が高く、また、当該製剤を投与された旨の認識がない場合が多いと考えられることから、これらの者のC型肝炎ウイルス等の感染実態を把握するための調査研究として行うものである。
(一) 平成八年の「非加熱血液凝固因子製剤による非血友病HIV感染に関する調査」(以下「平成八年調査」という。)の対象製剤であるクリスマシン、コーナイン、ベノビール、コンファクト八、コンコエイト、コーエイト、クリオブリン、プロフィレート、ヘモフィルS、ヘモフィルH及びファイバ「イムノ」
調査方法としては、平成八年調査において(一)に掲げる製剤を血友病以外の疾病の患者に投与した旨の回答があった医療機関及び投与状況が不明である医療機関並びに(二)及び(三)に掲げる製剤の製造業者等から当該製剤を納入した旨の報告があった医療機関(以下「対象医療機関」という。)を公表し、調査対象者に対してC型肝炎ウイルス等の検査の受診を勧奨するとともに、対象医療機関において調査対象者を可能な限り特定し、個別にC型肝炎ウイルス等の検査の受診を勧奨する。また、検査費用については、調査研究費の一環として国が負担することとしている。
三の5について C型肝炎ウイルスの感染者の数は極めて多く、全国に広く分布している状況にかんがみ、その把握は体系的、効果的かつ効率的に行う必要があると考えている。例えば、感染率や治療の必要性等の要素を勘案して、ある程度対象集団を絞り込み、まずそれらに対して重点的に検査を行うこと等が考えられる。
四の1について 現在薬価基準に収載されているインターフェロン(C型肝炎に適応があるものに限る。以下同じ。)の種類、効能及び銘柄は、別表第三のとおりである。 四の2について 現在我が国においてインターフェロンを製造又は輸入している事業者は、大塚製薬株式会社、シェリング・プラウ株式会社、住友製薬株式会社、武田薬品工業株式会社、東レ株式会社、日本ロシュ株式会社及び持田製薬株式会社である。
四の3について インターフェロンの薬価と諸外国における価格については、投与量、投与期間、効能等が異なることから、単純に比較することは適当ではないと考えているが、仮に価格のみを単純に比較すれば、我が国の薬価が高い場合もあることは確かである。
四の4について C型肝炎に対するインターフェロンの投与に係る診療報酬の算定は、平成四年二月にC型慢性活動性肝炎に対する投与について、平成九年十月にC型慢性肝炎に対する投与について、これを認めたところである。ただし、いずれの場合においても、肝硬変を伴わないこと等の条件を満たす患者に投与した場合にのみ算定を認めるとともに、標準的な投与期間を六月以内としている。
四の5について C型肝炎の治療に用いることを目的に開発されているインターフェロンの持続的作用を期待したペグインターフェロン及びインターフェロンとの併用療法に用いるリバビリンは、いずれも現段階においては未承認であるが、今後薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)に基づく承認申請が行われた場合に、既存の治療薬と比較して有効性等が明らかに優れていると認められる臨床試験成績等が添付されていれば、医療上特に必要性が高いと認められるものとして他の医薬品の審査に優先して審査を行い、可能な限り早期に承認したいと考えている。 四の6について 診療報酬の算定に当たっての様々な条件については、一般に、それぞれの医療行為の有効性、安全性、費用対効果等を勘案し、中央社会保険医療協議会の議論等を踏まえて設定するものである。C型肝炎に対するインターフェロンの投与に係る診療報酬の算定については、薬事法に基づく承認事項、副作用の可能性等を勘案し、四の4についてで述べたような取扱いとしているところであり、今後の取扱いについても、有効性、安全性、費用対効果等の観点を踏まえて検討すべきものと考えている。 四の7について C型肝炎の治療におけるラクトフェリンの効果については、厚生科学研究費補助金による「発がんの高危険度群を対象としたがん予防に関する基礎及び臨床研究」等において、C型肝炎ウイルスに対するラクトフェリンの抗ウイルス作用等についての研究が進められているところである。
四の8について 従来、厚生科学研究費補助金等により、C型肝炎発症に関する宿主遺伝子の解析、C型肝炎ウイルスの増殖機構の解明及びその制御方法の開発、C型肝炎ウイルスの増殖を抑制する抗体の開発、バイオ技術によるワクチン開発等に関する研究が実施されてきている。
四の9について ある研究者によれば、「冷却ゲル内沈降法」とは、約八割のC型肝炎ウイルスの感染者の血液に認められるクリオグロブリンの検出法である「ゲル内拡散泳動法」に改良を加え、免疫複合体を形成していないC型肝炎ウイルスを検出する方法であり、簡便かつ安価であることから、C型肝炎ウイルスの感染が判明している者に対する治療方針の判断のため有用な手法となる可能性があるとされている。
四の10について C型肝炎患者に対するいわれなき偏見や差別はあってはならないものと考えており、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号)に基づく感染症の予防の総合的な推進を図るための基本的な指針(平成十一年厚生省告示第百十五号)においても、感染症に関する啓発及び知識の普及並びに感染症の患者等の人権の配慮に関する方策等について定めている。
|