質問主意書

第151回国会(常会)

質問主意書


質問第一四号

日本政府の対ミャンマー(ビルマ)政策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十三年三月二十九日

竹村 泰子   


       参議院議長 井上 裕 殿


   日本政府の対ミャンマー(ビルマ)政策に関する質問主意書

 長年にわたる軍政下で、アウンサンスーチーさんを始めとする民主化勢力に対する弾圧と深刻な人権侵害が続いているミャンマー(ビルマ)に対して、国連やILO等の国際機関や欧米各国政府、NGOなど国際社会が、同国の民主化と人権状況の改善のために努力していることは周知のとおりである。最近、軍事政権と国民民主連盟(NLD)との「対話」再開が伝えられる中で、日本政府の対ミャンマー(ビルマ)政策が改めて問われる幾つかの問題が生じている。私は、軍事政権とアウンサンスーチーさんら民主化勢力との本格的対話が進展し、国民和解の上に同国に民主主義が回復することを心から期待しているが、これに反して、日本政府の対応が軍事政権への一方的肩入れと理解されるようなことはあってはならないと考えている。
 そこで、以下の事案について質問する。

一、ミャンマー(ビルマ)軍事政権とアウンサンスーチーさんら民主化勢力との「対話」再開の動きについて、日本政府はどのように評価をしているか。本年三月二日付けニューヨーク・タイムズ紙に、日本政府がミャンマー政府の最近の民主化勢力への歩み寄りを理由に「日本がミャンマーへの全面支援の再開を考慮」との記事が政府関係者の話として掲載されている。この記事の内容は事実であるか。また、事実とすれば、どの時点でどのような援助を再開する計画なのか、政府の見解を示されたい。

二、ILOは二〇〇〇年六月の第八八回総会でミャンマー(ビルマ)政府の強制労働がILO二九号条約違反であるとして制裁の決議を採択し、加盟各国はミャンマー(ビルマ)との関係を見直すべきとの決定を行った。これを受けて、ファン・ソマビアILO事務局長は加盟各国の労働大臣に対して、二〇〇一年二月一五日までに決議の遵守状況を回答することを求めている。日本政府は、どのような回答を行ったか、明らかにされたい。

三、日本政府は、ILOのミャンマー(ビルマ)に対する制裁決議が存在しているにもかかわらず、二〇〇〇年一二月に同国経済計画省ビル内に、日本の経済専門家及び職員を派遣した「ミャンマー経済構造改革支援タスクフォース」事務室を設け、さらに二〇〇一年二月には、ジェトロ主催(経済産業省後援)で「アセアン新規加盟国投資促進シンポジウム」を開催するなど、ミャンマー(ビルマ)への投資を促進する動きをしている。こうした日本政府の姿勢はODA大綱に抵触しているとともに、ILO決議にも違反していると内外から批判されている。日本政府は軍政による深刻な人権侵害が続いているミャンマー(ビルマ)への経済協力並びに直接投資に対して、どのような指針を持っているのか、示されたい。

四、日本の二輪・四輪車メーカーであるスズキ株式会社(以下「スズキ」という。)がミャンマー(ビルマ)で、軍事政権と合弁事業を行っているとして、国際的な「スズキ・ボイコット」運動が起こっている。スズキは、同国で武器の生産等を所管している第二工業省所轄の「ミャンマー自動車・ディーゼルエンジン工業公団(MADI)」を合弁パートナーに二輪・四輪車の生産を行っている。民間企業とはいえ日本の一企業が軍事政権を直接のパートナーに合弁事業を行うということは、同国の人権状況並びに国際社会の取組を踏まえれば、倫理上も問題のあるところである。かかる事態は、日本政府が対ミャンマー(ビルマ)投資のしかるべき指針を持っていない結果ともいえる。
 日本政府は、スズキのミャンマー(ビルマ)での事業内容をどう把握しているか、また、軍事政権を直接の合弁パートナーとする合弁事業の倫理的問題性についてどう考えるか、政府の見解を示されたい。

  右質問する。