質問主意書

第151回国会(常会)

質問主意書


質問第一二号

C型肝炎の対策等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十三年三月一日

日笠 勝之   


       参議院議長 井上 裕 殿


   C型肝炎の対策等に関する質問主意書

 C型肝炎は一九八八年にウィルスが発見され、主に血液を介して感染することが判明している。
 我が国においては、戦後、C型肝炎ウィルス(HCV)の感染者が急増しており、その感染者は現在、二百万人を超えるのではないかといわれている。
 ところが、感染拡大の原因や感染者の実態などについては未解明の部分が多く、これまで適切かつ有効な対策が講じられてきたとはいえない。その結果、肝がんによる死亡者が近年、急激に増えてきており、このままでは、結核に次ぐ第二の国民病になりかねない状況にある。
 そこで、政府に対し、我が国におけるC型肝炎の実情把握と効果的な対策の確立を促すため、以下の諸点について、質問するものである。

一 C型肝炎ウィルス(HCV)の感染者と肝がんの動向について

1 我が国の肝がんによる年間死亡者数、肝がんによる死亡者数のこれまでの推移を明らかにされたい。
 また、肝がんによる死亡者数とその推移を、肺がん、胃がん等の他部位のがんによる死亡者数、その推移と比較するとどうか。
2 我が国の肝がん患者に占めるC型肝炎ウィルス(HCV)感染者の割合を明らかにされたい。
3 我が国において、C型肝炎ウィルス(HCV)の感染者は、どのくらいと推計されているのか。
4 C型肝炎ウィルス(HCV)の感染者のうち、慢性肝炎になる患者の割合は、年間どのくらいか。
 C型肝炎ウィルス(HCV)に感染した慢性肝炎患者のうち、肝がんを発症する患者の割合は、年間どのくらいか。
 C型肝炎ウィルス(HCV)に感染し肝硬変にまで進行した患者のうち、肝がんを発症する患者の割合は、年間どのくらいか。
5 C型肝炎ウィルス(HCV)に感染してから肝がんを発症するまで、どの程度の期間、どのような経過をたどるのか。
6 日本人の肝がんの発症について、年齢による特徴(年代的特徴)は認められるのか。認められるのであれば、その特徴を明らかにされたい。
7 日本人の肝がんの発症について、地域による特性は認められるのか。地域特性が認められるのであば、具体的な地域名を挙げて、その特徴を明らかにされたい。
8 我が国の肝がんによる死亡者数について、政府は今後、どのように推移していくと見通しているのか、明らかにされたい。
9 肝がん患者に対する標準的な医療費は、現在のところ、一人当たり、およそどのくらいとなっているのか。

二 C型肝炎ウィルス(HCV)の感染が拡大した原因と政府の対策について

1 我が国において、C型肝炎ウィルス(HCV)の感染が拡大したのはいつごろからか。
2 我が国において、戦後、C型肝炎ウィルス(HCV)の感染が拡大した原因を、政府はどのように分析しているのか。
3 注射器(注射針及び注射筒)の使い回しによる感染を防止するために、政府はこれまでにどのような対策を講じてきたのか。政府が講じた措置ごとに、その年月を明らかにして、措置の内容をその後の評価を含めて説明されたい。
4 輸血による感染を防止するために、政府はこれまでにどのような対策を講じてきたのか。政府が講じた措置ごとに、その年月を明らかにして、措置の内容をその後の評価を含めて説明されたい。
5 輸血を伴わない手術や腎不全に対する透析施設での医療用具による感染を防止するために、政府はこれまでにどのような対策を講じてきたのか。政府が講じた措置ごとに、その年月を明らかにして、措置の内容をその後の評価を含めて説明されたい。
6 血液製剤(非加熱の血液凝固因子製剤)による感染を防止するために、政府はこれまでにどのような対策を講じてきたのか。政府が講じた措置ごとに、その年月を明らかにして、措置の内容をその後の評価を含めて説明されたい。

三 C型肝炎ウィルス(HCV)の感染者の把握について

1 C型肝炎ウィルス(HCV)の潜在的な感染者の実態把握を急ぐ必要がある。
 C型肝炎の対策においては、自分がC型肝炎ウィルス(HCV)に感染していることを知らない潜在的感染者が少なくない現状を踏まえると、大規模なキャンペーンを実施するなど広報の充実を図るとともに、輸血、手術、血液製剤の投与を受けた患者などを対象にC型肝炎ウィルス(HCV)の抗体検査を受けるよう周知し、その徹底を図るべきではないか。
 このような施策の必要性に対する政府の認識と取組を明らかにされたい。
2 C型肝炎ウィルス(HCV)に感染しているかどうかを調べるためには、現状ではどのような方法があるのか。その際に要する費用はどの程度か。医療保険の適用がある場合とない場合のそれぞれについて、説明されたい。
3 C型肝炎ウィルス(HCV)の抗体検査を希望する者には、保健所等で匿名で受診できるように配慮すべきであると考える。
 厚生労働省においても、平成十三年四月から全国の保健所で匿名検査を受け付けたり、相談窓口を設ける方針であると承知しているが、政府の今後の対策について、費用負担の在り方を含めて説明されたい。
4 厚生労働省は、血液製剤(非加熱の血液凝固因子製剤)を投与された患者を対象にC型肝炎ウィルス(HCV)感染の調査を行う方針であると承知しているが、この調査の趣旨、実施する時期、調査対象者及び国内で製造された血液製剤PPSBの投与患者についての追跡方法を含めた調査の方法について明らかにされたい。
5 潜在的な感染者の実態把握を徹底するためには、例えば老人保健法に基づく基本健康診査にC型肝炎ウィルス(HCV)の抗体検査を加えるとともに、この措置を国の補助事業とするなど、四十歳以上を対象とする全国規模のC型肝炎ウィルス(HCV)抗体検査を実施する必要があると考えられる。
 政府においても、C型肝炎ウィルス(HCV)の感染者の実態把握について、このような対策を早急に検討し実行すべきであると考えるが、政府の今後の取組を明らかにされたい。

四 C型肝炎ウィルス(HCV)感染者の治療等に対する支援について

1 現在、我が国の医療現場に流通しているインターフェロンの種類、効能、銘柄を明らかにされたい。
2 現在、我が国においてインターフェロンを製造している製薬メーカー、輸入している業者及びその国内における銘柄ごとの価格、販売量を明らかにされたい。
3 我が国におけるインターフェロンの価格については、国際的な水準より極めて高く、例えば韓国におけるインターフェロンの価格と比較しても三倍にもなっているとの報告もある。経済的な要因が患者の負担となって治療の妨げになっているとすれば、国は費用負担の軽減を図るべく積極的に問題の解決を図る必要がある。
 そこで、国内価格の実情と価格高騰の原因を、政府はどのように分析しているのか、明らかにされたい。
 また、患者やその家族、保険者の負担を軽減するため、インターフェロンの国内価格を安価なものにする方策を検討すべきではないかと思われるが、政府の対応を明らかにされたい。
4 現在、我が国で使用が認められているインターフェロンについて、医療保険の適用条件がどのようになっているのか、これまでの経緯を含めて説明されたい。
5 効果が注目されているインターフェロンとリハビリンの併用療法、患者の身体的負担を大幅に軽減する可能性があるといわれているペグインターフェロン等の臨床試験について、その現状と今後の見通しを説明されたい。
6 肝がんは、治療に投入した費用がそのまま実効性を発揮する唯一のがんであるとの指摘もあるところから、肝がん治療に要する医療費を必要以上に抑制することがあってはならないと考える。
 そこで、各種の治療方法に加えられている制限措置(インターフェロンの投与制限等の医療保険の適用制限を含む。)については、治療効果が高まる可能性がある限り、積極的に緩和する方向で見直す必要があるのではないか。
 この問題に関する政府の基本的な考え方と今後の取組を明らかにされたい。
7 C型肝炎の治療に、牛乳に含まれるタンパク質であるラクトフェリンが有効ではないかとみられている。これまでの研究成果と今後の臨床試験の進め方を明らかにされたい。
8 ワクチンなどのC型肝炎ウィルス(HCV)そのものの増殖を押さえる医薬品の研究開発について、我が国の取組状況と今後の見通しを明らかにされたい。
9 C型肝炎の新しい検査方法である冷却ゲル内沈降法について、その特徴を説明されたい。
 また、今後の臨床への応用を促進するための方策について、政府の取組を明らかにされたい。
10 C型肝炎の患者に対しては、就業の継続や就職に際しての不当な扱いが少なからずみられるという。
 このような雇用上の差別を含めた市民生活上のいわれなき差別を解消するために、政府がこれまで講じてきた措置を明らかにするとともに、差別の解消に向けた政府の今後の取組を明らかにされたい。

  右質問する。