質問主意書

第150回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一九号

内閣参質一五〇第一九号

  平成十三年一月十六日

内閣総理大臣 森 喜朗   


       参議院議長 井上 裕 殿

参議院議員櫻井充君提出医療の質に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員櫻井充君提出医療の質に関する質問に対する答弁書

一及び二について

 外来患者は主として大規模な病院において増加しており、厚生省が平成八年に実施した受療行動調査によると、外来患者の待ち時間は病院の規模が大きくなるほど長くなる傾向にある。また、同調査によると、かかりつけ医がいると回答した患者は、かかりつけ医がいないと回答した患者に比べ、診察及び治療内容に対する満足度が高い傾向にある。
 このため、政府としては、医療機関の機能分化及び連携の推進並びにかかりつけ医の機能の充実が重要であると考えており、地域医療支援病院を制度化するとともに、かかりつけ医の普及及びかかりつけ医と地域医療支援病院等との連携を推進するための助成措置及び診療報酬上の措置を講じている。
 また、医療を提供するに当たって、患者に対して十分な説明を行い、患者の理解を得るよう努めることは、医療従事者と患者との信頼関係を確立する上で重要であると考えており、医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第一条の四第二項も、医療の担い手は、医療を提供するに当たり、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならないと規定しているところである。

三について

 医療従事者が患者に対し適切に接するためには、医療従事者としての倫理、コミュニケーション能力等を身に付けることが大切であることから、医師、看護婦等の医療従事者の養成を行う大学、短期大学又は養成施設において、倫理に関する教育、コミュニケーション技法に関する教育等を充実してきているところであり、また、医師の臨床研修においても、患者及び家族とのより良い人間関係を確立しようと努める態度を身に付けることを目標として掲げているところである。
 今後とも、このような医療従事者の養成におけるカリキュラムの改善及び臨床研修の充実に努めることが重要であると考えている。

四について

 医療従事者は、患者に対し、適切な説明を行い、理解を得るよう努める必要があり、この一環として、患者が診療録、エックス線写真、看護記録等の診療記録の開示を求めた場合には、原則として診療記録そのものを開示していくことが必要であると考えている。また、診療報酬明細書等についても、保険者による被保険者へのサービスの充実を図る観点から、患者が診療報酬明細書等の開示を求めた場合には、保険者において原則として開示することとしている。
 診療記録の開示を法制化することについては、医療審議会において議論されてきたが、法制化するべきであるとする意見と、医療従事者の自主的な取組にゆだねるべきであり、法制化するべきではないとする意見があり、平成十一年七月に取りまとめられた中間報告においては、今後の患者の側の認識及び意向の推移、医療従事者の側の自主的な取組並びに診療情報の提供及び診療記録の開示についての環境整備の状況を見つつ、更に検討するべきであるとされたところである。
 これを踏まえて、医療法等の一部を改正する法律(平成十二年法律第百四十一号)において「診療録その他の診療に関する諸記録に係る情報を提供することができる旨」を医業等に関して広告できる事項に追加するなど、診療記録の開示に向けた医療従事者の自主的な取組を支援しているところであり、政府としては、これらの自主的な取組の医療の現場への普及及び定着の状況等を見つつ、診療記録等の開示の法制化について更に検討を行う必要があると考えている。

五について

 出来高払いを原則とする現行の診療報酬体系に対しては、過剰投薬や過剰検査を招きやすいとの指摘がある。
 このため、投薬については、多剤を投薬した場合の処方料、処方せん料及び薬剤料の逓減措置を講ずるとともに、過剰投薬の要因ともいわれる不合理な薬価差を解消するため、市場価格を踏まえた薬価改定を行い、また、薬価改定において市場価格の加重平均値に上乗せする一定の価格幅を段階的に縮小し、平成十二年四月の薬価改定では薬剤流通の安定のための価格幅として二パーセントとしたところである。
 また、検査についても、市場価格を踏まえた検査料の適正化を図るとともに、検査等を包括化した診療報酬点数を設定する等の対応を行ってきたところである。