質問主意書

第150回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一四号

内閣参質一五〇第一四号

  平成十二年十二月二十六日

内閣総理大臣 森 喜朗   


       参議院議長 井上 裕 殿

参議院議員福島瑞穂君提出東海地震と浜岡原発の耐震性等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員福島瑞穂君提出東海地震と浜岡原発の耐震性等に関する質問に対する答弁書

一について

 駿河湾から四国沖までの区域では、これまでマグニチュード八程度の大規模な地震が六百年余りにわたり百年から百五十年程度の間隔で繰り返し発生しているが、当該区域のうち駿河湾西岸の区域では、百四十年余りにわたり大規模な地震が発生しておらず、また、現在においても地殻のひずみの蓄積が進行している状況にあることから、近い将来に東海地震が発生する可能性が高いと考えられている。
 政府としては、東海地震について、異常な地殻の変動等の現象が現れた場合に大規模な地震が発生するおそれがあると認めることは可能であるが、御指摘の文献等に係る現象を根拠として地震発生の切迫性の程度を把握することは、現在の科学技術の水準においては不可能であると考えている。

二及び三について

 浜岡原子力発電所三・四・五号機での地震動の評価については、いずれも、マグニチュード八・〇の想定東海地震、マグニチュード八・四の千八百五十四年安政東海地震及びマグニチュード八・五の限界的な規模の地震として南海トラフ沿いに想定される地震を想定しており、その際、震源断層破壊の進行についても考慮に入れて検討している。
 浜岡原子力発電所三・四・五号機の解放基盤表面での地震動及び周波数特性に関する計算手法及び計算式については、断層モデル及びいわゆる大崎の手法を用いており、詳細についてはそれぞれ「地震断層を考慮した地震動スペクトルの推定(昭和五十四年)」及び「Guideline for Evaluation of Basic Design Earthquake Ground Motions(昭和五十四年)」に記述されている。
 これらに基づく地震動及び周波数特性の計算値は、浜岡原子力発電所原子炉設置変更許可申請書(三号原子炉の増設)の添付書類の六-五-百五十ページ(基準地震動の応答スペクトル値)、六-五-百七十九ページ(S1地震動対象地震の応答スペクトル)及び六-五-百八十ページ(S2地震動対象地震の応答スペクトル)に記載されている。
 また、浜岡原子力発電所一・二号機については、「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」(昭和五十三年十一月八日及び昭和五十六年七月二十日原子力安全委員会決定。以下「耐震設計審査指針」という。)の策定前に設置許可がされており、耐震設計に用いる地震動等の評価に際して、前述のような計算手法等を用いていない。しかし、浜岡原子力発電所一・二号機についても、三・四・五号機と同じ地震動を用いて計算した結果、耐震安全性が確保されていることが確認されている。

四から八までについて

 お尋ねの点については、前提とされる条件等が不明確であるので、答弁を差し控えたい。

九について

 原子力発電所の耐震安全性の審査に当たっては、一般電気事業者及び卸電気事業者に対して、詳細な地質調査を行った上で当該地点に解放基盤表面としての要件を満たすものが存在することを確認すること、その解放基盤表面での最大速度振幅の金井式による計算をすること等を要求している。御指摘の日野町観測点においては、このような詳細な地質調査が行われていないため、解放基盤表面としての要件を満たすものが確認できるか否かは不明であることから、右観測点が解放基盤表面としての要件を満たすとの前提に立って最大速度振幅の値を評価することは差し控えたい。

十について

 政府としては、従前から申し上げているとおり、金井式は、地震工学の分野において妥当性が十分認められており、今日もなお広く使用されている経験式であると認識している。
 なお、四から八までについて及び九についてで述べたような事情から、科学技術庁の強震観測網(Kネット)データの実測値と金井式に基づくお尋ねの計算結果とを比較することはできない。

十一について

 鳥取県西部地震震源付近の地下の活断層については、これまで、その存在が広く確認されてはいなかったものの、その存在を示唆していた学説の評価を含め、現在、各種機関において調査が進められているところであり、調査の結果を踏まえ、今後必要に応じ耐震設計審査指針等の相当性等につき検討を進めていく所存である。

十二について

 安全審査の指針類は、新たな知見が得られれば、その内容を適切に評価し、その結果を反映していくべきものである。
 耐震設計審査指針については、平成七年(千九百九十五年)兵庫県南部地震の状況を踏まえて設置された「平成七年兵庫県南部地震を踏まえた原子力施設耐震安全検討会」(以下「耐震安全検討会」という。)において検討が行われ、右地震の状況等に照らしても、耐震設計審査指針の妥当性が損なわれるものではないことが確認されている。
 しかしながら、耐震安全検討会の報告書にも示されているように、耐震設計においては、常に最新の知見を反映するなど耐震安全性に対する信頼性を一層向上させていくための努力を不断に進めていくべきものであり、政府としては、現在においても最新の知見の収集分析に努めているところである。

十三について

 二及び三についてで述べたとおり、浜岡原子力発電所の安全上重要な施設については、マグニチュード八・〇の想定東海地震、マグニチュード八・四の千八百五十四年安政東海地震及びマグニチュード八・五の限界的な規模の地震として南海トラフ沿いに想定される地震を想定して安全性の検討を行っており、政府としては、浜岡原子力発電所の東海地震に対する安全性は十分に確保されているものと認識している。
 なお、今後とも、必要に応じ、防災上の措置を適切に講じていく考えである。

十四について

 原子力発電所の耐震設計の審査に当たっては、耐震設計審査指針等に基づき、次のような事項を確認している。

1 地点選定に当たって活動性の認められる活断層を避けていること
2 重要な建物・構築物を岩盤に支持させていること
3 耐震設計に用いる地震力については、解放基盤表面における地震動に基づいて評価していること
4 想定されるいかなる地震力に対しても十分な耐震性を有していること

 このため、原子力発電所の耐震設計については、耐震上の安全性に問題はないものと認識している。
 また、耐震設計審査指針策定前の発電所についても、現在の指針に基づいた評価を行い、安全性を確認し、平成七年に、その結果を公表しているところである。
 したがって、御指摘のような耐震安全性についての再検討を行うことは、現時点では考えていない。
 なお、原子力発電所については、電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第五十四条の規定に基づき、一定期間ごとに、通商産業大臣の検査を受けなければならないこととされており、設備の性能及び機能が技術上の基準に適合していることの確認を行って、供用期間中における設備の健全性を維持するなど、老朽化対策にも万全を期している。