質問主意書

第150回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一一号

内閣参質一五〇第一一号

  平成十二年十二月二十二日

内閣総理大臣 森 喜朗   


       参議院議長 井上 裕 殿

参議院議員櫻井充君提出遺伝子組換え食品問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員櫻井充君提出遺伝子組換え食品問題に関する質問に対する答弁書

一について

 遺伝子組換え食品については、平成十三年四月から安全性審査が法的に義務化され、我が国で安全性が審査されていない遺伝子組換え食品の輸入、販売等が禁止されるところである。これに伴い、同年四月以降、輸入時に検疫所で遺伝子組換え食品のモニタリング検査を実施することとしているが、現在、適切な検体採取、検査の方法、検査体制等について検討を進めている。また、その検査結果については、統計資料として公表する予定である。

二について

 国外において、遺伝子組換え作物の安全性について注目すべき研究や論文が発表された場合は、我が国においても同様の結論が得られるかどうかを確認するため、その内容について既往の研究結果を踏まえた検討を行った上、必要に応じて国の試験研究機関において試験研究を実施している。昨年度においては、実験室内で害虫抵抗性遺伝子組換えとうもろこしの花粉を摂食させたチョウの幼虫が死亡した旨の米国コーネル大学の試験結果が発表されたことを受け、農林水産省農業環境技術研究所において花粉の飛散状況を考慮に入れた同様の試験研究を行い、自然条件下においてチョウがとうもろこしの花粉による影響を受ける可能性は実際上無視し得るほど小さいと判断できるデータを得ているところである。

三について

 家畜への遺伝子組換え飼料の影響の有無を確認することは重要であると認識しており、政府としては、基礎的な研究の取組として、農林水産省の家畜衛生試験場及び畜産試験場において、本年度から三年間の予定で、遺伝子組換え飼料の家畜の体内での消化、吸収等の研究を行っているところであり、二世代にわたって摂取した場合の影響についても調査する予定である。
 また、社団法人日本科学飼料協会が、本年度から三年間の予定で、遺伝子組換え飼料について、家畜に健康被害が生じることがないかどうか、また、組換えDNA及びこれにより生じたたんぱく質が畜産物に移行することがないかどうかを検証するために行っている飼養試験に対して財政的支援を行っているところである。この中で、二世代にわたって遺伝子組換え飼料を摂取した場合の影響についても調査する予定と承知している。

四について

 生物の多様性の保全等の観点から、締約国がバイオテクノロジーにより改変された生物であって環境上の悪影響を与えるおそれのあるものの利用等を規制すること等について規定した「生物の多様性に関する条約」(平成五年条約第九号)第八条(g)の趣旨を踏まえ、遺伝子組換え作物の国内での生産又は販売に当たっては、平成元年に策定した「農林水産分野等における組換え体の利用のための指針」(平成元年四月二十日付け農林水産事務次官依命通知)に基づき、遺伝子組換え作物の生産又は販売を行おうとする者(以下「事業者」という。)が当該遺伝子組換え作物の雑草性、有毒物質の産生性等を我が国の隔離ほ場等で調査及び評価した結果を、農林水産技術会議に設けられた組換え体利用専門委員会において科学的見地から環境に対する安全性について審査の上、同指針に適合していると認められる場合に、農林水産大臣がその旨の確認を行うこととしている。このことは環境への影響が国外で報告されているものについても、同様である。
 また、同指針においては、事業者に対し、安全性の確認後であっても、当該遺伝子組換え作物の安全性評価に影響を及ぼすような知見を得た場合には、速やかに農林水産大臣に報告することを求めているところである。

五について

 国連食糧農業機関(FAO)及び世界保健機関(WHO)合同の食品規格委員会(以下「コーデックス委員会」という。)におけるバイオテクノロジー応用食品特別部会(以下「バイオ部会」という。)は、本年三月、第一回会合が開催され、現在、平成十三年三月開催予定の第二回会合に向けて準備が進められているところである。
 政府としては、遺伝子組換え食品については、安全性に関し科学的な議論を進めることが重要と考えており、バイオ部会の議長国として、遺伝子組換え食品の安全性に関する国際基準策定に積極的に取り組んでまいりたい。

六について

 予防原則の概念については、コーデックス委員会一般原則部会において議論されているが、現時点では、この概念の内容及びこれをどのような場合にどのように適用することができるか等について不明確であって、各国の認識も異なっているところであり、政府としては、一定の見解を有するに至っていない。

七について

 御指摘のような低アレルゲン性の付与や特定の栄養素の強化など、食品としての付加価値を付けることを目的として遺伝子組換え食品が開発された場合における当該食品の安全性審査については、その遺伝的素材、構成成分等について検討した上で、既存の食品を比較対象として用いるという方法を適用することができるかどうか個別に判断する必要があるものと考えている。