質問主意書

第149回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一二号

内閣参質一四九第一二号

  平成十二年九月十二日

内閣総理大臣 森 喜朗   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員加藤修一君提出フロン問題についての政府の対応に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員加藤修一君提出フロン問題についての政府の対応に関する質問に対する答弁書

一の1について

 政府は、クロロフルオロカーボン(以下「CFC」という。)及びハイドロクロロフルオロカーボン(以下「HCFC」という。)については、特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律(昭和六十三年法律第五十三号。以下「オゾン層保護法」という。)に基づき、生産量等の規制を行っており、また、これらの取組を補足する観点から、機器に含まれる冷媒に使用されるCFC(以下「冷媒CFC」という。)については、平成九年に関係事業者団体により策定された自主計画等に基づく回収・破壊を促進し、及び地域におけるフロン回収等推進協議会の活動の支援等により回収・破壊を促進している。さらに、政府は、ハイドロフルオロカーボン(以下「HFC」という。)については、平成十年に関係事業者団体により策定された自主行動計画等に基づく排出抑制対策を地球温暖化対策として促進している。
 これらの計画に関し、CFC、HCFC及びHFCともに、生産された時点から廃棄される時点までの期間は一律でないこと、生産量の中には新規の製品に使用する量と既存の製品に補充する量が含まれること、一つの機器に製造年度の異なるCFC、HCFC及びHFCが含まれること等から、特定の年の生産量と回収・破壊量を対比させることは適当ではないため、生産量に対する回収・破壊量の見込みは立てていない。
 なお、HFCについては、関係事業者団体の自主行動計画において平成二十二年(一部の機器においては平成十三年)における冷媒の回収に関する目標を設定しており、自動車においては使用済み自動車のカーエアコンに含まれる冷媒量の七十パーセント、業務用冷凍空調機器においてはメーカー・設備業者の関与する廃棄機器の台数の八十パーセント、自動販売機においては廃棄機器に含まれる冷媒量の七十パーセント、家庭用冷蔵庫及び家庭用エアコンにおいては機器メーカーに引き渡された使用済み製品の台数の百パーセントを回収・処理できる仕組みの整備を目標としているところである。

一の2について

 御指摘のとおり、フロンについては、冷媒、断熱材等の様々な分野において使用されており、製造時、使用時、廃棄時等の複数の段階で排出が生じるため、各分野及び各段階における実態を把握した上で、全体的な対策を行うことが重要である。
 HFC、パーフルオロカーボン及び六ふっ化硫黄(以下「HFC等」という。)については、化学品審議会地球温暖化防止対策部会(以下「審議会」という。)において、毎年、冷媒、断熱材等の分野ごとに、製造時、使用時及び廃棄時の各段階で、関係事業者団体における調査等に基づいて得られた排出係数にHFC等の含有機器等の生産量やストック量を乗じるなどの方法により排出量を推計し、分野ごとに公表している。地球温暖化対策の推進に関する法律(平成十年法律第百十七号)第十三条の規定に基づく我が国全体の排出量についても、同様の方法により算定し、公表することとしている。
 なお、CFC及びHCFCについては、国際的にも生産量及び消費量の規制等によりオゾン層保護対策を行うこととなっており、オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書(昭和六十三年条約第九号。以下「モントリオール議定書」という。)に定められたスケジュールに従って、オゾン層保護法に基づき、生産量及び消費量を規制し、その実績を毎年公表している。また、冷媒CFCの回収量については、関係事業者団体の自主計画及び地域における取組の進捗状況の評価と併せ、毎年公表している。

二の1について

 御指摘の「地球温暖化対策推進大綱」(以下「大綱」という。)におけるHFC等の排出量については二パーセント増程度の影響に止める旨の目標については、大綱を策定する際、HFC等の排出抑制対策としてその時点で実現し得る可能な限りのものをベースに、かつ、それぞれの関係者が厳しい目標を掲げるという前提で設定したものである。
 一方、平成十年の審議会において試算したHFC等について対策を講じた場合の平成二十二年の排出量推計値は、今後の技術開発の進展や関係者の幅広い協力、国際協力といった諸要素が所期の計画どおりに実現し、かつ、産業界が最大限の努力をした対策がすべて実現されると仮定し、分野ごとの計画達成の不確実性の相違については考慮せずに、集計したものである。すなわち、本推計値は、例えば半導体等製造分野における代替物質等の政府による研究開発など、その成否等が明らかになるまでに長期を要する対策等についてもすべて実現されると仮定した場合の数値であり、大綱に定めた目標とは性格が大きく異なる。
 したがって、大綱に定めた前記の我が国の目標は、現段階では変更する考えはない。今後、国際交渉の動向も踏まえ、平成九年の「気候変動に関する国際連合枠組条約第三回締約国会議」で採択された「京都議定書」の締結に向けて国内措置全般について検討が行われる場合には、六種類(二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素及びHFC等)の温室効果ガスに係る国内対策の一環としてHFC等の排出量等の目標についても必要な検討を行ってまいりたい。

二の2について

 HFC等の排出抑制に係る関係事業者団体の自主行動計画には、家庭用エアコン及び業務用冷凍空調機器については低冷媒充てん量機器の開発、家庭用冷蔵庫については炭化水素系等冷媒使用製品の開発及びこれへの転換、カーエアコンについては冷媒使用量の少ない機器の開発及びHFCを使用しない機器の研究が、それぞれ盛り込まれている。また、平成十二年五月の審議会において、エアゾールの使用抑制を啓発するための自主表示要領の普及、断熱材における利用分野ごとの要求性能等の体系化等の方向性が示されているところである。政府としても、これらの関係事業者団体の自主行動計画の厳格なフォローアップによって、産業界の一層の取組を促してまいりたい。

三の1について

 政府は、オゾン層保護対策については、CFCから他の代替物質への転換を進めていく中で、HFC等への転換とともに、自然冷媒、炭化水素系発泡材等への転換を進めてきている。
 また、モントリオール議定書に基づく技術経済評価パネル(以下「TEAP」という。)のタスクフォースの作成に係るモントリオール議定書の遵守とHFC等の排出抑制とを両立させるための方策等に関する報告書(平成十一年十月)においても、HFCはオゾン層破壊物質の代替物質であり、HFCを用いることがエネルギー効率上有利な場合にはHFC使用は温室効果ガス排出抑制に寄与し、HFCに代替する物質がない分野もあるとの位置づけが与えられている。
 このような状況も踏まえつつ、政府としては、大綱に基づき、産業界の計画的な取組の促進と並んで、代替物質の開発等を促進することとしている。通商産業省においても、オゾン層を破壊せず温暖化効果もより少ない新規代替物質の開発が不可欠と考えており、現在、政府予算により、研究開発を進めているところである。もとより、研究開発を進めていく上で、国際的な動向も念頭に置いている。

三の2について

 TEAPのタスクフォース報告書(平成十一年十月)においては、同一物質であってもエネルギー効率は用途、技術等により異なるとされており、HFC等からの代替が可能な分野については、ライフサイクルアセスメントや安全性等を考慮しながら、自然冷媒等を含む代替物質、代替技術を導入することが重要であると考えている。
 関係事業者団体の自主行動計画にも、家庭用冷蔵庫における炭化水素系冷媒を使用した製品、カーエアコンにおける二酸化炭素冷媒等の非フロン系の冷媒を使用した製品の研究等が盛り込まれている。また、審議会は、関係事業者団体から、断熱材における利用分野ごとの要求性能等の体系化、家庭用冷蔵庫に使用する炭化水素系冷媒の安全基準策定の検討開始等の取組の報告を受けており、政府としてもこれらを促しているところである。

四の1について

 現在、温室効果ガス削減のための種々の政策手法の組合せについて検討しているところであり、HFC等の削減対策についても、二酸化炭素、メタン及び一酸化二窒素の温室効果ガスの削減対策との整合性及び公平性と共に、それぞれのガスの利用の形態等の特性を踏まえ、削減の効果及び国民経済に与える負担について比較検討した上で、経済的措置の活用も含め種々の政策措置の組合せについて検討していくこととしている。

四の2について

 冷媒等で使用されているフロンの回収及び破壊の促進については、廃棄経路が機器によって異なり、それぞれの機器に関与する事業者が多岐にわたるという実態を考慮し、機器ごとの生産、流通、使用、廃棄等の実状に応じた取組により、フロンの回収等に関する仕組みの整備を実質的に進展させることが適当であると考えている。
 例えば、特定家庭用機器再商品化法(平成十年法律第九十七号)においては、特定家庭用機器に該当する冷蔵庫及びエアコンについて、機器の排出時に消費者が費用を負担し、製造業者等に対し、リサイクルと一体的に冷媒フロンの回収・破壊を行うよう義務づけている。
 御指摘の「デポジット制度」については、費用の確実な徴収、徴収費用の管理、適正な費用設定等において、検討すべき課題があると承知している。今後ともこれらの諸手法を総合的に勘案し、適切なフロン回収等の仕組みについて検討することが重要であると考えている。

五の1について

 関係十八省庁から成る「オゾン層保護対策推進会議」において、平成九年九月にフロンの回収及び破壊の促進方策を取りまとめた。これまでに、関係業界に対してフロンの回収等に関する仕組みの構築を要請するとともに、地域におけるモデル事業の実施、地方公共団体や関係業界等から成るフロン回収等推進協議会の活動の支援等の取組を促進してきたところである。
 また、先にも述べたとおり、特定家庭用機器に該当する冷蔵庫及びエアコンについては、特定家庭用機器再商品化法において、冷媒フロンの回収・破壊を製造業者等に対して義務づけている。
 今後とも、フロン回収問題の重要性を踏まえ、関係省庁が協力し、従来の取組の強化を図るとともに、これらの対策の状況を見つつ、必要に応じて法制度の確立も含めてフロンの回収の仕組みの構築・強化につき検討を進めてまいりたい。

五の2について

 CFC管理戦略の策定については、現在政府において検討中であるが、CFCの使用・回収等に関する調査その他の調査を実施するとともに、関係省庁が協力して、関係する事業者その他の関係者に対して一層の強い要請を行っていくこと等により従来の取組の強化を図るなどし、これらの成果等をCFC管理戦略に反映させていきたいと考えている。