質問主意書

第149回国会(臨時会)

答弁書


第百四十九回国会答弁書第三号

内閣参質一四九第三号

  平成十二年九月二十二日

内閣総理大臣 森 喜朗   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員竹村泰子君提出「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員竹村泰子君提出「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」に関する質問に対する答弁書

一について

 我が国が使用済燃料を再処理してプルトニウム等を回収しているのは、将来にわたるエネルギーの安定確保等の観点から、回収されたプルトニウム等を燃料として有効利用するためである。

二について

 我が国の使用済燃料に関しては、これまでの海外再処理委託契約に基づき、平成二十二年ごろまでに累計約三十トン、国内においては、六ケ所再処理工場が本格的に操業した段階で年間約五トン弱の核分裂性プルトニウムが回収される見込みであるが、これらは、当面、プルサーマル及び高速増殖炉等の研究開発において用いられる予定である。
 プルサーマルにおける利用については、電気事業者は、平成二十二年までに十六から十八基の軽水炉で実施することを計画しており、それぞれの電気事業者により具体的にウラン・プルトニウム混合酸化物燃料の装荷量及び装荷時期が決定されて、順次実施されていく予定である。
 また、高速増殖炉等の研究開発における利用については、高速増殖原型炉もんじゅの運転再開後には、年間数百キログラムの核分裂性プルトニウムが利用される予定である。

三について

 原子力発電環境整備機構(以下「機構」という。)は、特定の地区を対象として、一般的な調査以上の文献調査を行った場合には、当該地区が「概要調査地区の基準に適合しなかった地区」又は「適合したが選定しなかった地区」に該当した場合であっても、当該地区に関する文献調査の結果を明らかにするものと考えている。

四について

 地震等の自然現象、活断層等に関して公表されている調査結果のうち、文献調査対象地区に関するものは、機構による文献調査に活用し得るものと考えている。御指摘の調査結果が文献調査に活用できるか否かについては、機構において、個々の資料ごとに判断することとなると考えている。

五について

 特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(平成十二年法律第百十七号。以下「法」という。)第六条から第八条までの規定により、機構は、概要調査地区等を選定しようとするときは、地層の特性その他通商産業省令で定める事項を考慮すべきものとされている。現在、通商産業省において省令の検討を行っているところである。
 法第六条から第八条までに定める条件に適合していると認められない地区について、社会的条件で概要調査地区等に選定されるということはない。

六について

 御指摘の公平な第三者の意見等を聴く適切な仕組みの具体的内容については、現在、検討を行っているところである。

七について

 通商産業省においては、機構が概要調査地区等を選定しようとするときには文献調査、概要調査及び精密調査の結果や選定の理由等を記載した報告書を作成して縦覧に供し、報告書の内容を周知させるため説明会を開催するとともに、報告書の内容について住民等が意見書を提出する機会を設定する等の手続について、環境影響評価法(平成九年法律第八十一号)を参考に、通商産業省令において明確にすべく検討を行っているところである。

八について

 法第四条第五項は、最終処分計画において概要調査地区等の所在地を定めようとするときは、当該概要調査地区等の所在地を管轄する都道府県知事及び市町村長の意見を聴き、これを十分に尊重すべきものと規定している。このように、概要調査地区等の選定に当たっては、地元の理解と協力が不可欠であることから、国、機構及び発電用原子炉設置者は、地元の理解等を得るべく最大限の努力を行うこととしている。それでもなお、地元の理解等が得られず、当該都道府県知事等が概要調査地区等の選定につき反対の意見を示している状況においては、当該都道府県知事等の意見に反しては、概要調査地区等の選定は行われないものと考えている。国が、地元の理解等が得られると考える場合において、結果として、当該都道府県知事等に対して複数回にわたり意見を求めることはあり得るが、当該都道府県知事等が概要調査地区等の選定につき反対の意見を示すであろうことがあらかじめ容易に予測し得る場合においてまで、当該都道府県知事等に対して「賛成するまで繰り返し意見を求める」ことはないものと考えている。

九について

 法第四条第五項の「意見を聴き、これを十分に尊重してしなければならない」との規定は、国は、最終処分計画において概要調査地区等の所在地を定めようとするときは、当該概要調査地区等の所在地を管轄する都道府県知事及び市町村長の意見を十分尊重する旨を明確化したものであると考えている。
 右規定は、「同意を得なければならない」という規定とは異なり、当該都道府県知事等の同意を得るということを国の決定についての要件とするものではないが、国に対して当該都道府県知事等の意見を十分尊重しなければならないという義務を課するものである。

十について

 御指摘の文書は、国の行政機関の長である科学技術庁長官が、北海道知事等にあてて政策意図を表明したものであるのに対し、法第四条第五項の規定は、国に対し、概要調査地区等の所在地を管轄する都道府県知事等の意見を十分尊重しなければならないという法律上の義務を課するものであって、両者はその性格を異にしている。
 なお、右規定の適用については、すべての地方自治体は平等に取り扱われると考えているが、国は、最終処分計画において概要調査地区等の所在地を定めようとするときは、当該概要調査地区等の所在地を管轄する都道府県知事及び市町村長の意見を十分尊重しなければならないのであって、このことに照らすと、当該都道府県知事等が概要調査地区等の選定につき反対の意見を示している状況において、当該都道府県知事等の意見に反しては、概要調査地区等の選定は行われないものと考えている。

十一について

 機構は、法第五十六条に定める業務の一部として、最終処分業務等の安全な実施、経済性及び効率性の向上等を目的とする技術開発を行うものと考えている。一方、核燃料サイクル開発機構が、今後、北海道幌延町や岐阜県瑞浪市において行うことを計画している研究開発は、核燃料サイクル開発機構法(昭和四十二年法律第七十三号)第二十四条に定める業務の一部として、深地層の科学的研究等の基盤的な研究開発、最終処分の安全規制・安全評価のために必要な研究開発及び地層処分技術の信頼性の向上に関する技術開発等を目的として行うものと考えている。

十二について

 通商産業省に置かれた総合エネルギー調査会が、本年七月に最終処分に係る費用の試算を行うに際して想定した機構の要員数は、別表のとおりである。

十三について

 特定放射性廃棄物の最終処分に係る原子力損害に関しては、最終処分についての安全規制に関する今後の検討結果を踏まえて、賠償制度を適切に整備することとしている。

別表 費用の試算を行うに際して想定した機構の要員数 1/2

別表 費用の試算を行うに際して想定した機構の要員数 2/2