質問主意書

第149回国会(臨時会)

答弁書


第百四十九回国会答弁書第一号

内閣参質一四九第一号

  平成十二年九月二十二日

内閣総理大臣 森 喜朗   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員中村敦夫君提出吉野川第十堰改築事業をめぐる中山正暉前建設大臣と建設省徳島工事事務所長の言動に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員中村敦夫君提出吉野川第十堰改築事業をめぐる中山正暉前建設大臣と建設省徳島工事事務所長の言動に関する質問に対する答弁書

一について

 憲法第十四条第一項は、国民に対し法の下の平等を保障した規定であって、事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づくものでない限り、差別的な取扱いを禁止する趣旨と解されるが、国の行政機関の行為が同項の規定に違反するか否かについては、事案に即して個別具体的に判断する必要があるものと考える。

二について

 昭和五十六年四月十四日最高裁判所第三小法廷判決(最高裁判所民事判例集三十五巻三号六百二十ページ)において、「前科及び犯罪経歴(以下「前科等」という。)は人の名誉、信用に直接かかわる事項であり、前科等のある者もこれをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有するのであって、(中略)市区町村長が漫然と弁護士会の照会に応じ、犯罪の種類、軽重を問わず、前科等のすべてを報告することは、公権力の違法な行使に当たると解するのが相当である。」と判示されていることは承知している。

三について

 お尋ねの中山正暉前建設大臣(以下「前建設大臣」という。)が「個人の犯罪経歴等を第三者に漫然と報告した」ことが具体的にいかなる行為を指すのかが明らかでないため、答弁を差し控えたい。なお、国が国家賠償法(昭和二十二年法律第百二十五号)第一条第一項に規定する賠償責任を負うのは、公権力の行使に当たる公務員がその職務執行に際して故意又は過失により違法に他人に損害を加えた場合であるとされている。

四及び五について

 建設省河川局において、平成十二年八月十一日に大平一典建設省四国地方建設局徳島工事事務所長を呼んで事実関係について聴取を行ったところ、御指摘のような事実はないとのことである。

六について

 政府としては、御指摘のとおり、国会において誠実かつ正確に答弁するよう最大限の努力をしているところである。

七について

 建設省において前建設大臣に確認したところ、御指摘のような関係行政機関に対する事実関係の照会や確認は行わなかったとのことである。
 また、御指摘の平成十二年五月二十三日の参議院国土・環境委員会における前建設大臣の答弁は、前建設大臣が「第十堰住民投票の会」の中心人物の過去の経歴を知った経緯についての質問に対するものであり、御指摘のような国会を軽視した答弁ではないと考える。

八について

 建設省において平成十二年九月四日に前建設大臣に確認したところ、「第十堰住民投票の会」の中心人物の過去の経歴については大学の同窓会関係者から聞いたとのことであり、また、建設省等の国の行政機関が当該人物の過去の経歴を組織的に調査した事実はない。

九について

 国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第百条第一項は「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。」と規定しているが、個々の職員の行為が同項の規定に違反するか否かについては、事案に即して個別具体的に判断する必要があるものと考える。