質問主意書

第149回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一三号

JRによる不当労働行為に対する救済命令の実効性確保に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十二年八月九日

大脇 雅子   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   JRによる不当労働行為に対する救済命令の実効性確保に関する質問主意書

一、JRは、これまで多くの地方労働委員会の救済命令に対して不履行を続けている。地方労働委員会の救済命令は、行政処分としての効力をもつ。すなわち、使用者がその命令につき再審査あるいは行政訴訟で争っている場合でも、それが中央労働委員会によって取り消されるか、裁判所の取消判決が確定するまでは命令の効力があり、これを履行しなければならない。現行の法律も次のように規定している。

(1) 労働委員会の救済命令は、その命令書の「交付の日から効力を生ずる」(労働組合法第二七条四項)
(2) 使用者は、「遅滞なくその命令を履行しなければならない」(労働委員会規則第四五条一項)
(3) 中労委への再審査の「申立は、当該命令の効力を停止せず、その命令は、中央労働委員会が第二五条の規定により再審査の結果、これを取り消し、又は変更したときに限り、その効力を失う」(労働組合法第二七条五項)
(4) 裁判所への「処分の取消しの訴えの提起は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない」(行政事件訴訟法第二五条一項)

 したがって、救済命令の不履行は違法行為と考えるが、政府の見解を示されたい。

二、例えば、JR東日本は、本年六月二十八日の株主総会での監査報告書で、「取締役の職務遂行に関する不正の行為又は法令に違反する重大な事実は認められません。」と述べ、また、株主からの質問に対する回答でも、小島紀久夫常務取締役は、「係争中の間、労働委員会命令に従わないことになるが、これはわが国の法制上許容されるところであって、問題はございません。」としている。
 しかし、労働委員会命令の不履行自体が、再審査や行政訴訟中であっても、前述のように法令の規定に反する行為である。その数は現在およそ百件にも及んでいる。
 加えて、昨年十一月十五日には、神奈川バッジ事件の不当労働行為救済命令確定(最高裁上告不受理)により、会社は松田社長名の謝罪文掲示や夏期手当カット分の支払いをし、また、本年四月二十八日には東京地裁判決で、労働基準法違反として時間外労働の割増賃金の支払いを命じられている。
 それを違法行為なしとするのは、商法第四九八条一項一九号の「監査報告書ニ不実ノ記載ヲ為シタルトキ」及び同項五号の「総会ニ対シ不実ノ申述ヲ為シタルトキ」として、過料に処せられるべき行為ではないか。
 また、政府は裁判所に過料制裁の申立をする等、早急に是正措置をとるべきではないか。

  右質問する。