質問主意書

第149回国会(臨時会)

質問主意書


質問第三号

「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十二年七月二十八日

竹村 泰子   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」に関する質問主意書

 第百四十七回国会において「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」(以下「法律」という。)が成立したが、審議時間の制約もあり、十分な質疑ができなかった。この法律は、高レベル放射性廃棄物の後始末にかかわる重要な法律であり、原子力委員会高レベル放射性廃棄物処分懇談会においても「国民一人一人が自らの身に迫った問題であるという意識を持つことが望まれる」とされたものである。したがって、疑問を疑問のまま残しておくべきではないと考える。よって、以下質問する。

一、法律では、その定義において使用済燃料の再処理を前提としている。しかし、再処理して得られたプルトニウム等を再び利用するという核燃料サイクル政策については、内外から多くの批判があることは周知のとおりである。そもそもプルトニウムを利用するために再処理をしているのか。あるいは、再処理をするとプルトニウムが出てくるので、余剰を持たないという国際的な約束のために利用しようとしているのか。そのどちらであるのかを明らかにされたい。

二、約四万本の特定放射性廃棄物が発生することは、言い換えると四百トン程度のプルトニウム(核分裂性プルトニウム)が発生することを意味する。それだけのプルトニウムをどう利用しようとしているのか。利用の時期と場所、量など、具体的な計画を明らかにされたい。

三、調査地区の選定に関し、速やかに情報公開を行うという通商産業大臣の答弁があったが、文献調査についても、概要調査地区の基準に適合しなかった地区、適合したが選定しなかった地区を含めて、調査結果が明らかにされると考えてよいか。

四、例えば北海道の幌延町周辺では、幌延地区地下水調査、幌延地区気象調査、幌延地区地震観測、北海道北部地域の地質に関する研究、北海道北部地域の断層に関する研究といった調査が行われている。それらの調査結果は、文献調査にすぐに活用できるものと考えるが、政府の見解を示されたい。

五、概要調査地区等の選定に際しては、地層の特性だけを考えて選定をするのか。そうでないとすれば、どのような点が選定の条件となるのか。五月十日の衆議院商工委員会で参考人の小島圭二地圏空間研究所代表・東京大学名誉教授は「むしろ社会的条件で立地が決まって、そこの地質にどうやって合わせていくかというところに技術の振るいようがあるというのが日本の普通のやり方」と述べ、「やはり、これを受け入れながら、この画期的な一つの三段階の選定ということへ踏み込んでいく必要があるだろう」と主張した。これは政府の考えと同じか。違うとすればどう違うのかを明らかにされたい。

六、五月十日の衆議院商工委員会での審議で通商産業大臣は「処分地の選定過程において、国及び機構が公平な第三者の意見等をいただくことは重要と考えておりまして、適切な仕組みを設けてまいりたい」と答弁した。具体的にどのような仕組みを設けようとしているのかを明らかにされたい。

七、法律の中で「住民」の語が出てくるのは、通商産業大臣が基本方針を定める事項の中に「関係住民の理解の増進のための施策に関する事項」と書かれているのと、機構の業務運営に際し「地域の住民等の理解と協力を得るよう努めなければならない」とあるだけである。住民はただ「理解」、「協力」させればよいと考えているとすれば、明らかに民主主義の根本に違背する。法案審議の中で住民からの直接の意見聴取について、「今後何が必要な手続きであるかということは別途検討する余地はある」と答弁があったように、手続の制度化を行うべきである。調査や施設建設の規模、環境への影響の大きさからすれば、少なくとも環境影響評価法に定めるものと同程度の影響評価手続が必要であると考えるが、政府の見解を示されたい。

八、地元意見を十分に尊重するとの修正が行われ、「地元の意に反して行うということはない」と答弁があった。地元が一度反対を表明したなら、そこはもう候補地から外されるのか、それとも賛成するまで繰り返し意見を求めるようなことはあるのか、明らかにされたい。

九、立地に当たっての都道府県知事及び市町村長の意思確認について、法律原案の「意見を聴かなければならない」と、修正後の「意見を聴き、これを十分に尊重してしなければならない」とは、法的な拘束力にどのような違いがあるのかを具体的に、客観性をもった言葉で説明されたい。また、それらは「同意を得なければならない」とした場合とどう違うのかを説明されたい。

十、北海道、青森県、岐阜県には「地元が処分場を受け入れない意思を表明されているもとでは、処分場の立地場所になることはない」といった内容の科学技術庁長官の確認書がある。「当該都道府県知事及び市町村長の意見を聴き、これを十分に尊重してしなければならない」とする法律の条文と、確認書との間には、法的な差異はあるのか無いのか。あるとしたら、それは具体的にどう違うのか。無いとすれば、約束の有無にかかわらず全自治体は法的に平等だと解釈されるのか。

十一、処分実施主体である機構が行う研究開発と、核燃料サイクル開発機構が今後幌延や東濃で行う研究開発の内容は、どのように区別されるのか。その明確な違いを具体的に説明されたい。

十二、費用の見積りの際に想定されるすべての情報は、市民が入手できるようになっていなければならない。そこで、人件費の算出根拠となった機構の職員数を、設立から処分事業終了までについて具体的に明らかにされたい。

十三、放射性廃棄物の後始末を安全に実施する責任は発生者にあり、国には、安全規制等により放射能・放射線災害を防ぐ責任があると考えられる。両者の責任は明確に区別されるべきである。しかるに、法律では責任の所在が極めてあいまいであると言わなければならない。法律第七十四条にいう「業務困難の場合」が起き、原子力損害が発生した場合において、賠償責任を有する者は誰かを明らかにされたい。また、処分事業の終了後に仮に原子力損害が発生した場合はどうか。

  右質問する。