第149回国会(臨時会)
質問第一号
吉野川第十堰改築事業をめぐる中山正暉前建設大臣と建設省徳島工事事務所長の言動に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 平成十二年七月二十八日 中村 敦夫
吉野川第十堰改築事業をめぐる中山正暉前建設大臣と建設省徳島工事事務所長の言動に関する質問主意書 本年一月二十三日に徳島市で行われた吉野川可動堰建設に関する住民投票は、投票率五五・〇%、建設に反対が九一・六%、賛成が八・四%という結果となった。
一 行政機関が逮捕歴の有無等を理由として、法令等の根拠や合理的な理由なく、特定の個人や団体に対して利益や不利益を与えたり、約束を不履行とすることは、憲法十四条で定める法の下の平等に照らして認められないと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。 二 最高裁判所判決(一九八一年四月十四日第三小法廷判決)によると、人の名誉、信用に関わる事項をみだりに公開されないことは法律上の保護に値する利益であるとして、公務員が個人の犯罪経歴等を第三者に漫然と報告することは違法な公権力の行使に当たると判示しており、判例としても確定している。政府は、このことを承知しているか。 三 二で示した最高裁判所判決から、建設大臣が「個人の犯罪経歴等を第三者に漫然と報告した」ことは、「違法な公権力の行使」に当たると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。 四 大平一典建設省徳島工事事務所長(以下「徳島工事事務所長」という。)が、建設大臣の発言が発覚する以前から住民投票メンバーの過去の経歴について情報を取得し、これを各所で第三者に告げていたと聞いている。徳島工事事務所長は、その情報をどのようにして入手したのか、内閣の責任の下で厳正な調査の上、経緯を明らかにされたい。また、調査期間や体制など、調査形式の概要に関しても併せて示されたい。 五 徳島工事事務所長の行為が事実であれば、これも「違法な公権力の行使」に当たると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。 六 政府は、国権の最高機関である国会において、常に万事遺漏のないよう誠実かつ慎重な姿勢で答弁していると認識しているが、どうか。 七 建設大臣は、住民投票メンバーの過去の経歴を大学の同窓会関係者から聞いたと五月二十三日の参議院国土・環境委員会で答弁している。この件に関して、建設大臣は、関係行政機関に事実関係を照会・確認したのか。照会・確認したのならば、照会の時期・内容や関係行政機関等の保有する個人情報提供の有無などの経緯を明らかにされたい。確認していないならば、国民の個人情報という行政として重大な取扱いを必要とすることに関して、不明確な伝聞情報に基づいて大臣が国会で答弁したことを認めることになり、国権の最高機関である国会を軽視するにも甚だしいと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。 八 建設大臣は罪名や逮捕が二回にわたることなど住民投票メンバーの過去の経歴を詳細に把握しており、同窓会関係者からの伝聞で知ったという建設大臣の答弁は、非常に不自然である。むしろ、四で指摘した徳島工事事務所長の行為などから、行政機関等が組織的に同人の経歴を調査していたと強く疑わざるを得ない。建設大臣が住民投票メンバーの過去の経歴に関する情報の入手した経緯について、内閣の責任の下で厳正な調査の上、明らかにされたい。また、調査期間や体制など、調査形式の概要に関しても併せて示されたい。 九 国家公務員が、合理的な理由や法令等によらず、逮捕歴等の行政機関が専有する個人情報を第三者に対して明らかにすることは、国家公務員法百条に違反する行為であり、懲戒処分に該当し、同法百九条で定める「一年以下の懲役又は三万円以下の罰金」という罰則の適用もあり得ると考えるが、どうか。 右質問する。 |