質問主意書

第148回国会(特別会)

質問主意書


質問第二号

サムット・プラカン汚水処理プロジェクトに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十二年七月四日

中村 敦夫   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   サムット・プラカン汚水処理プロジェクトに関する質問主意書

 現在、タイ国のチャオプラヤ川河口付近サムット・プラカン県クロンダン区において汚水処理施設の建設が進んでいる。この施設は、旧海外経済協力基金によるタイ環境保全基金へのツー・ステップ・ローンから六十八億円、及び日本が最大の出資国であるアジア開発銀行から二億三千万ドルの支援を受けている。
 ところが、このプロジェクトに対して、地域住民から強い懸念の声が出されている。この施設は工場からの排水を扱うにもかかわらず、重金属類を処理するように設計されておらず、豊かな自然の残る地域の海岸の生態系、及びその中で漁業を営む地域住民の生活に大きな影響を与える可能性があるためである。タイ環境技術協会のスチット・パナパプティクン博士は、本プロジェクトが他の代替案と比べて効率的でないと批判しており、三回にわたって行われた技術ヒアリングでも、多くの学者がクロンダン区における建設の問題点を指摘してきた。
 さらに、この施設の建設地はフィジビリティ・スタディで検討された候補地から変更され、実際の建設地であるクロンダン区においては、環境影響評価が行われていない。この事実はタイ政府も認めており、現在新たに環境影響評価のやり直しが進められているほか、アジア開発銀行も独自に本プロジェクトについての調査ミッションを派遣すると聞いている。
 「環境配慮のためのOECFガイドライン」は、下水道プロジェクトについて悪臭、水質悪化、生態系への影響への配慮を求めているが、本プロジェクトにおいてこうした点についての調査が不十分であることは、事業者側がこれから調査するという事実からみて明白である。また、どのような影響が出るかは未だ明らかでない。
 よって、日本政府及び海外経済協力基金の業務を引き継いでいる国際協力銀行は、タイ政府への貸付実行を一時停止し、タイ政府による環境影響評価のプロセス完了を待ち、影響がどの程度あるかどうかをしっかりと把握し、環境ODAによる環境破壊を未然に防ぐべきであると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。