質問主意書

第147回国会(常会)

答弁書


第百四十七回国会答弁書第四二号

内閣参質一四七第四二号

  平成十二年八月八日

内閣総理大臣 森 喜朗   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員中村敦夫君提出国営諫早湾干拓事業に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員中村敦夫君提出国営諫早湾干拓事業に関する質問に対する答弁書

一について

 「国営土地改良事業等再評価実施要領」(平成十年三月二十七日付け農林水産省構造改善局長、畜産局長通知。以下「再評価実施要領」という。)に基づき、農林水産省九州農政局国営事業管理委員会に設置される第三者委員会の平成十二年度における委員の氏名及び所属は、別表一のとおりである。
 なお、平成十三年度についても、これらの者に委員を委嘱することを予定している。

二について

 お尋ねの「農地造成」は、地区内整備を指すものと考えられるが、変更後の国営諫早湾土地改良事業(以下「本事業」という。)の事業計画における事業費の総額二千四百九十億円の内訳は、潮受堤防分が約千百八十億円、内部堤防分が約三百十億円、地区内整備分が約三百億円であり、その他測量費、補償費等の費用が約七百億円である。

三について

 災害防止効果は、本事業による潮受堤防及び調整池の設置により、昭和三十四年の伊勢湾台風級の台風による高潮と昭和三十二年の諫早大水害級の洪水が本事業の実施地区周辺で同時に発生した場合に想定される被害額がどの程度軽減されるかを算定している。御指摘の昭和六十一年着工時(以下「着工時」という。)及び平成十一年事業計画変更時(以下「変更時」という。)における想定被害内容ごとの現況被害額、計画被害額及び年効果額(年被害軽減額)並びに基礎データは別表二のとおりであり、積算プロセスは別記一のとおりである。
 また、効果算定に当たっての被害想定地域は、別表三のとおりである。

四について

 作物生産効果は、新たに造成される干拓地において作物等の生産が行われることにより得られる純益額を算定している。着工時及び変更時における基礎データは別表四のとおりであり、積算プロセスは別記二のとおりである。
 維持管理費節減効果は、既存施設の維持管理費の節減額から新たに造成される施設において発生する維持管理費を減じて維持管理費節減額を算定している。着工時及び変更時における基礎データは別表五のとおりであり、積算プロセスは別記三のとおりである。
 一般交通等経費節減効果は、本事業による干拓地への道路の設置に伴い、当該道路を利用することによる一般交通に係る走行経費の節減額を算定している。着工時及び変更時における基礎データは別表六のとおりであり、積算プロセスは別記四のとおりである。
 国土造成効果は、本事業により干拓地が造成されることに伴い、他の地域の農地において農業以外の利用を行った場合に得られる間接的な効果額を算定している。着工時及び変更時における基礎データは別表七のとおりであり、積算プロセスは別記五のとおりである。

五について

 妥当投資額は、前述の各種効果の合計額を上限としているが、着工時及び変更時におけるその算出の基礎となる割引率、還元率及び総合耐用年数は、別表八のとおりである。還元率及び総合耐用年数の数値の変更は、変更時において各施設の事業費を変更したことによる。
 また、変更時における妥当投資額算定に当たって採用した一般的計算式とその具体的展開は、別記六のとおりである。

六について

 本事業に係る変更計画書は、農林水産省文書管理規則(昭和三十三年農林省訓令第二十七号)に基づき、公開している。
 また、変更後には、新たな全体実施設計は行っていないが、変更後の事業計画に係る基礎資料については、具体的な要求項目が示されれば、可能な限り開示してきたところである。

七について

 潮受堤防排水門から海水を流入させるような排水門の操作をした事実はない。

八について

 お尋ねの「八項目にわたるモニタリング調査」は、長崎県環境影響評価事務指導要綱(昭和五十五年七月一日付け長崎県副知事通知)に基づき、事業実施主体である九州農政局が作成した「諫早湾干拓事業計画に係る環境影響評価書」(以下「環境影響評価書」という。)における環境モニタリング計画に示された八項目の監視項目を指すものと考えられるが、その内容は、九州農政局、長崎県、関係市町等から構成される「諫早湾干拓地域環境監視機構」によって、九州農政局諫早湾干拓事務所、長崎県及び関係市町において一般の閲覧に供されている。
 既に取りまとめられている平成十年度までの調査結果は、千ページを優に超える極めて膨大な資料であり、平成十年度の水質の項目を例として示せば、別紙のとおりである。

九について

 環境影響評価書における調整池の水質の環境保全目標は、供用時の水質について設定されている。
 調整池は、現在工事中であるが、工事完了後には、水質の汚濁源の一部については、内部堤防の完成による干陸部や底泥からの溶出等の減少、調整池の水際での水生植物の繁茂等による巻き上げの減少のほか、調整池流域における生活排水処理施設の整備等水質保全対策の一層の進ちょくによる流入の減少が見込まれる。

十及び十一について

 現在、潮受堤防は河川管理施設ではなく、河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)第三条第二項ただし書に基づく長崎県知事の同意は得ていない。

十二について

 潮受堤防及び調整池の設置に係る計画策定に当たっては、高潮については関係省庁で策定された「海岸保全施設築造基準解説」(昭和四十四年十二月改訂。以下「海岸保全基準」という。)、洪水については海面干拓の設計等に関する「土地改良事業計画設計基準」(昭和四十一年三月三十日付け農林省農地局長通知。以下「設計基準」という。)に基づいている。
 海岸保全基準では、堤防計画における設計高潮位は「原則として既往の最高潮位又は朔望平均満潮位に既往の最大潮位偏差を加えた高さ」とされ、また、設計基準では、設計洪水量は「実測資料の最大値と八十年確率洪水量を比較して、その大きい方の値を採用する」とされている。
 潮受堤防及び調整池の設置に当たっては、高潮については既往の最大の高潮をもたらした伊勢湾台風級の台風を想定し、また、洪水については諫早湾地域の既往の最大の洪水である諫早大水害時の降雨を基に計画しているものであり、生起確率を基に計画しているものではない。

十三について

 調整池の沿岸地域において、平成九年四月以降に完工した湛水被害の軽減を目的とした工事は、長崎県営排水対策特別事業により「小野島地区」及び「野井沖新田地区」で実施した排水路工事であり、その効果は、排水路の通水能力の向上により迅速な排水が可能となったことである。

十四について

 平成十一年七月二十三日の大雨は、最大時間雨量が百一ミリメートル(気象庁地域気象観測所諫早観測所)という記録的なものであり、この大雨により、市内の農地の一部では、一時的に湛水が生じたものの、潮受堤防の効果により潮汐の影響を受けなかったこと、また、調整池の水位を低く保ったことにより河川、排水路等から調整池への排水が速やかに行われたことから、同日中には湛水が解消し、湛水による農作物への被害は発生していない。
 また、調整池の背後地の一部においては、家屋の浸水被害が生じたが、背後地において浸水被害が生じるか否かは、降雨の強度及び分布、地域における排水能力、排水先の河川等の水位変化等により総合的に決まるものであり、同日の大雨に関しては、調整池の水位を低く保った結果、地域の河川が氾濫することなく調整池に流下していることにかんがみ、調整池の機能は適正に発揮されたと考えている。

十五について

 潮受堤防排水門の外側前面は、排水門からの排水による水流のために浮遊性の粘土が滞留しにくいこと、また、当該排水門を海水面に垂直に設置するとともに、最も潮位が低下する大潮の干潮時においても、その底面が千出することがないよう設計していることから、干潟が発生しにくいと考えている。

十六について

 お尋ねの内部堤防、用排水路及び農道の建設の工事内容等については、別表九のとおりである。

十七について

 潮受堤防において沈下が最も大きいと想定される区間にある観測点における潮受堤防の沈下量については、お尋ねの平成十二年三月三十一日までのデータは存在しないが、平成九年十月三十一日の潮受堤防の築堤完了から平成十一年八月十二日まででは、十センチメートルである。一般的に築堤完了後の時間当たりの沈下量は漸減していくところであり、同区間における築堤完了以後潮受堤防の耐用年数である百年間の沈下量は、五十九センチメートルと予測している。

十八について

 干拓地の沈下は主として排水の効果により進行するところであり、お尋ねの平成十二年三月三十一日までの中央干拓地の沈下実績については、暗きょ排水工が未施工であることから、測定していない。
 今後の沈下量は、暗きょ排水工の施工に伴う土の乾燥収縮により発生する沈下とその後長期にわたり土の自重により進行する沈下を考慮し、最終的に五十センチメートルとなると予測している。

十九について

 中央干拓地においては、東西二か所に排水機場を設置する計画であり、東排水機場のポンプ能力は毎秒二十四立方メートル、西排水機場のポンプ能力は毎秒二十立方メートルである。
 なお、排水機場の建設費については、工事契約のための発注事務を控えているため、明らかにできない。

二十について

 諫早湾が所在する有明海における主要魚介類の漁獲量の推移は、別表十のとおりであり、総じて本事業の本格着工の前後又は潮受堤防の締切りの前後でその漁獲量に著しい変化は見られない。
 なお、本事業においては、環境モニタリング等により、潮受堤防外の水質等の監視を行っているところであるが、これによると、潮受堤防を締め切った前後で、周辺海域の水質において、化学的酸素要求量等に明確な差異が認められないことから、潮受堤防の締切りが漁業に対して影響を及ぼしているとは判断できない。引き続き、環境モニタリング等を実施することにより、水質等の状況を注意深く監視するとともに、関係漁業者には、その結果を説明してまいりたい。

二十一について

 国営土地改良事業の再評価は、再評価実施要領に基づき、事業の効率的な執行及び透明性を確保する観点から、事業実施主体である国が実施しているものであり、再評価に当たっては、関係土地改良区、市町村、都道府県等から意見を聴取するとともに、専門的知見を有し公正中立の立場を堅持できる学識経験者で構成される第三者委員会に諮問することとしている。また、再評価の結果及びその理由のほか、第三者委員会への提示資料及びそこでの議事内容は、公表することとしている。
 本事業の再評価についても、再評価実施要領に定める手続に沿って、関連する情報の公開にも配慮しつつ、適切に実施する所存である。

別表一 九州農政局国営事業管理委員会に設置される第三者委員会の委員の氏名及び所属

別表二 1/4

別表二 2/4

別表二 3/4

別表二 4/4

別表三 1/3

別表三 2/3

別表三 3/3

別表四 1/3

別表四 2/3

別表四 3/3

別表五 1/3

別表五 2/3

別表五 3/3

別表六 1/3

別表六 2/3

別表六 3/3

別表七

別表八

別表九

別表十 有明海の漁獲量の推移

別記一

別記二

別記三

別記四

別記五

別記六

別紙 「平成11年度諫早湾干拓事業環境モニタリング連絡会議」説明資料(抜粋) 3.水質 1/30

別紙 「平成11年度諫早湾干拓事業環境モニタリング連絡会議」説明資料(抜粋) 3.水質 2/30

別紙 「平成11年度諫早湾干拓事業環境モニタリング連絡会議」説明資料(抜粋) 3.水質 3/30

別紙 「平成11年度諫早湾干拓事業環境モニタリング連絡会議」説明資料(抜粋) 3.水質 4/30

別紙 「平成11年度諫早湾干拓事業環境モニタリング連絡会議」説明資料(抜粋) 3.水質 5/30

別紙 「平成11年度諫早湾干拓事業環境モニタリング連絡会議」説明資料(抜粋) 3.水質 6/30

別紙 「平成11年度諫早湾干拓事業環境モニタリング連絡会議」説明資料(抜粋) 3.水質 7/30

別紙 「平成11年度諫早湾干拓事業環境モニタリング連絡会議」説明資料(抜粋) 3.水質 8/30

別紙 「平成11年度諫早湾干拓事業環境モニタリング連絡会議」説明資料(抜粋) 3.水質 9/30

別紙 「平成11年度諫早湾干拓事業環境モニタリング連絡会議」説明資料(抜粋) 3.水質 10/30

別紙 「平成11年度諫早湾干拓事業環境モニタリング連絡会議」説明資料(抜粋) 3.水質 11/30

別紙 「平成11年度諫早湾干拓事業環境モニタリング連絡会議」説明資料(抜粋) 3.水質 12/30

別紙 「平成11年度諫早湾干拓事業環境モニタリング連絡会議」説明資料(抜粋) 3.水質 13/30

別紙 「平成11年度諫早湾干拓事業環境モニタリング連絡会議」説明資料(抜粋) 3.水質 14/30

別紙 「平成11年度諫早湾干拓事業環境モニタリング連絡会議」説明資料(抜粋) 3.水質 15/30

別紙 「平成11年度諫早湾干拓事業環境モニタリング連絡会議」説明資料(抜粋) 3.水質 16/30

別紙 「平成11年度諫早湾干拓事業環境モニタリング連絡会議」説明資料(抜粋) 3.水質 17/30

別紙 「平成11年度諫早湾干拓事業環境モニタリング連絡会議」説明資料(抜粋) 3.水質 18/30

別紙 「平成11年度諫早湾干拓事業環境モニタリング連絡会議」説明資料(抜粋) 3.水質 19/30

別紙 「平成11年度諫早湾干拓事業環境モニタリング連絡会議」説明資料(抜粋) 3.水質 20/30

別紙 「平成11年度諫早湾干拓事業環境モニタリング連絡会議」説明資料(抜粋) 3.水質 21/30

別紙 「平成11年度諫早湾干拓事業環境モニタリング連絡会議」説明資料(抜粋) 3.水質 22/30

別紙 「平成11年度諫早湾干拓事業環境モニタリング連絡会議」説明資料(抜粋) 3.水質 23/30

別紙 「平成11年度諫早湾干拓事業環境モニタリング連絡会議」説明資料(抜粋) 3.水質 24/30

別紙 「平成11年度諫早湾干拓事業環境モニタリング連絡会議」説明資料(抜粋) 3.水質 25/30

別紙 「平成11年度諫早湾干拓事業環境モニタリング連絡会議」説明資料(抜粋) 3.水質 26/30

別紙 「平成11年度諫早湾干拓事業環境モニタリング連絡会議」説明資料(抜粋) 3.水質 27/30

別紙 「平成11年度諫早湾干拓事業環境モニタリング連絡会議」説明資料(抜粋) 3.水質 28/30

別紙 「平成11年度諫早湾干拓事業環境モニタリング連絡会議」説明資料(抜粋) 3.水質 29/30

別紙 「平成11年度諫早湾干拓事業環境モニタリング連絡会議」説明資料(抜粋) 3.水質 30/30