第147回国会(常会)
第百四十七回国会答弁書第四〇号
内閣参質一四七第四〇号 平成十二年七月十四日 内閣総理大臣 森 喜朗
参議院議員竹村泰子君提出人種差別撤廃条約の実施をめぐる諸問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員竹村泰子君提出人種差別撤廃条約の実施をめぐる諸問題に関する質問に対する答弁書 一の1について 御指摘のあらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(平成七年条約第二十六号)第九条1に基づく第一回・第二回報告の第五十七段落(a)に掲げた事件については、平成六年五月、東京簡易裁判所において、罰金十万円に処するとの判決の宣告が、同段落(b)に掲げた事件については、同年十二月、千葉家庭裁判所松戸支部において、保護処分に付する必要がない旨の決定が、それぞれなされた。
一の2の(一)について 法務省の人権擁護機関においては、平成十年八月に北朝鮮によるミサイル発射を契機として在日朝鮮人の児童及び生徒に対する嫌がらせや暴行等が発生したことから、翌九月、法務省人権擁護局から、全国の法務局及び地方法務局(以下「法務局等」という。)に対し、在日韓国・朝鮮人の児童及び生徒が多数利用する通学路、利用交通機関等における差別の防止を呼び掛ける街頭啓発を始めとした啓発活動の取組を強化するよう指示したところである。
一の2の(二)について 法務省の人権擁護機関においては、あらゆる差別や偏見をなくすとの観点から、広く国民の間に人権尊重思想の普及高揚を図り、国民一人一人に人権を尊重することの重要性を認識していただくとともに、その認識が日常生活の中に根付くことを目的として様々な啓発活動を行っているところであり、啓発ポスターや啓発冊子についても、このような観点から、主に人権問題全般を扱った内容のものとしているところである。
一の2の(三)について 法務省の人権擁護機関が作成した啓発冊子は、あらゆる差別や偏見をなくすとの観点から、主に人権問題全般を扱った内容のものとなっているが、我が国における人権を取り巻く状況に応じ、これまでにも、在日韓国・朝鮮人の人権問題に関する事項をも啓発冊子の内容の一部として取り入れているほか、アイヌの人々の人権問題を個別に取り上げた啓発冊子も作成しているところである。また、在日韓国・朝鮮人に対する差別や嫌がらせ等の人権問題に関する啓発冊子を個別に作成することについては、人権に関する各種の情報や調査結果等も踏まえて検討してまいりたい。 二の1について かつて、我が国の帰化行政において、帰化後の氏名として日本人らしい氏名を使用するよう指導していた時期もあったが、これは、日本人らしくない氏名を使用することにより、我が国社会に日本人として定着する上で支障が生ずるおそれがあるとの考えから、在日韓国・朝鮮人に限らず、帰化の許可の申請をする外国人一般に対して行われていたものであり、御指摘のような在日韓国・朝鮮人に対する人類平等の精神に反する誤った偏見、差別意識によるものではない。 二の2について 昭和五十九年に国籍法及び戸籍法の一部改正が行われたが、その改正作業の過程において、帰化事務における氏名の取扱いの在り方についても幅広く検討を行った結果、国際的な人的交流の活発化及びこれに伴う日本国民の氏名についての一般的な意識の変化等にかんがみると、日本人らしい氏名を使用しなくとも、必ずしも我が国社会に日本人として定着することが妨げられるものではないとの考えから、検討結果がまとまった昭和五十八年から、日本人らしい氏名を使用するよう指導することを行わないこととした。
二の3の(一)について 現在、御指摘のような「帰化をしようとする者」の欄と「帰化後の氏名」の欄の氏名が同じである帰化許可申請の手引は存在しない。 二の3の(二)について 帰化許可申請書の様式中に「通称名」を書く欄を設けて申請者にその申告を求めているのは、申請者の身分及び生活関係の調査を進める上で必要なためであり、一方、帰化許可申請の手引において、同様式中の「帰化後の氏名」の欄に日本人らしい氏名を例示しているのは、帰化許可申請者の大半が、帰化後の氏名として日本人らしい氏名を使用することを希望している実情を踏まえたことによるものである。
二の3の(三)について 御指摘の出版物は私人の著作に係るものであり、政府としては、その内容について見解を述べることは適当でないと考えるが、今後とも、法務局等における帰化事務において、帰化許可申請者が帰化後の氏名を自由に定めることができることについて誤解を生じることがないよう努めてまいりたい。 三について 現在把握できる限りにおいては、政府は、昭和六十一年度から平成十一年度までの間に五十七本の人権啓発フィルム及び人権啓発ビデオを作成している。これらの中には、一つの作品の中で複数の人権課題を扱っているものもあり、御指摘の人権課題ごとに集計すると、同和問題に関するものが二十一本、女性に関するものが四本、障害者に関するものが三十一本、在日外国人に関するものが二本あるが、在日韓国・朝鮮人に関するもの及びアイヌの人々に関するものは存在しない。
四について 平成七年国勢調査によれば、国籍別の労働力人口に占める完全失業者の割合及び職業大分類別就業者数は、それぞれ別表2及び別表3のとおりである。
別表二 国籍別の労働力人口に占める完全失業者の割合-全国,都道府県(平成7年) 別表三 国籍別の職業大分類別就業者数-全国,都道府県(平成7年) 1/3 |