質問主意書

第147回国会(常会)

質問主意書


質問第二〇号

アルツハイマー病に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十二年三月三十日

櫻井 充   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   アルツハイマー病に関する質問主意書

 アルツハイマー型痴ほうは、本邦で約七十万人の患者が存在し、人口の高齢化を反映してその患者数は年々増加し、対応が急がれている。アルツハイマー病患者の脳病理所見では、タウと呼ばれる蛋白が異常化し、神経細胞死をもたらすと考えられている。このタウ蛋白は、アルツハイマー病のごく早期から脳脊髄液で上昇することが知られ、米国国立衛生研究所(NIH)やヨーロッパでは、現時点で最も信頼性の高い診断指標とされ、例えばスウェーデンでは、ルーチン検査として使用されている。この脳脊髄液タウ蛋白検査では、正常者や血管性痴ほう患者では変化せず、抗痴ほう薬の適正使用への一助になるものと考えられ、医療費削減にも寄与するものと思われる。アルツハイマー病の研究者グループは、脳脊髄液タウ蛋白検査をアルツハイマー病の早期診断のためのルーチン検査として使用することを提案しているが、厚生省は、研究段階にすぎないとの見解のようである。
 そこで、以下質問する。

一 脳脊髄液タウ研究に関しては、米国、日本、英国、スウェーデン、フランス、オランダ、フィンランドのすべての国における臨床研究においてアルツハイマー病の早期診断の一助として有用であるという結論に達している。一般臨床検査として使用可能な段階と考えるが、政府の見解を具体的に提示されたい。また、時期尚早であるとすれば、どのようなデータが示されれば臨床検査として認められるのか、具体的に示されたい。

二 昨年末より塩酸ドネペジルがアルツハイマー病の軽症から中等症に有効な治療薬として開発され、一般の臨床の現場で使用され始めた。一方、アルツハイマー病は人口の高齢化に伴い急速に増加し、かつ、早期の臨床診断が非常に難しい疾患の一つである。正しくアルツハイマー病の診断が下せない現在の状況で、塩酸ドネペジルを使用した場合、塩酸ドネペジルの治療効果が充分に期待できないばかりでなく、他の痴ほう症患者に拡大使用された場合には脳代謝改善薬と同様、医療費の高騰を招く危険性もある。そこで、脳脊髄液タウ蛋白検査に基づいて治療薬の選択を行えば、かつて脳代謝改善薬が本来の適応疾患を逸脱し一人歩きしたような事態を未然に防止でき、薬剤の適正使用に寄与し、その結果医療費の削減を可能にするものと確信する。この点から考えても脳脊髄液タウ蛋白検査をルーチン検査とすべきであると考えるが政府の見解はどうか。

  右質問する。