第146回国会(臨時会)
第百四十六回国会答弁書第一七号
内閣参質一四六第一七号 平成十二年一月二十一日 内閣総理大臣 小渕 恵三
参議院議員海野義孝君提出石油公団の業務改善等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員海野義孝君提出石油公団の業務改善等に関する質問に対する答弁書 一について 石油公団(以下「公団」という。)は、平成十事業年度に係る決算報告の際、新たに、公団の石油開発事業に係る長期損益見込み及び保有株式の評価益試算、公団の出資先会社に対して持分法(公団が、出資先会社の純資産及び損益のうち、公団に帰属する部分の変動に応じて、その投資勘定を各事業年度ごとに修正する方法をいう。)を適用した場合の試算等を附属明細書に記載し、これを公表したと承知している。
二について 石油公団法(昭和四十二年法律第九十九号。以下「公団法」という。)第二十三条の規定によれば、公団の財務諸表は、財産目録、貸借対照表及び損益計算書とされており、附属明細書は公団の監事が意見を付けなければならない財務諸表には含まれないが、公団の監事は、平成十事業年度の財務諸表及び決算報告書に記載された内容について監査を行うに当たり、附属明細書に記載された内容についても監査を行った上で、財務諸表及び決算報告書について、適正であることを認める旨の意見を付けたものと承知している。
三について 公団は、平成十事業年度に係る決算報告の際、大蔵大臣の諮問機関である企業会計審議会が職業的監査人が遵守すべきものとして定めた「監査基準」(昭和三十一年十二月二十五日大蔵省企業会計審議会中間報告)等に基づき、実査、閲覧、帳簿突合等の手続により、公認会計士による任意監査を実施したと承知している。
四について 御指摘の公団が個別に算定した損失見込額については、原油・ガスの販売価格及び為替レートの過去十年間の平均値を前提とし、現在確認されている埋蔵量に基づき合理的と判断される出融資先会社の生産計画を基礎として、公団が、資金収支見通しに基づく分析を行い、合理的かつ客観的に見積もることが可能な長期の一定期間において、損失の発生が見込まれる額として算出した結果であると承知している。
五について 御指摘の一般勘定に係る政府出資金の増額は、平成十事業年度における探鉱投融資の実施及び債務保証基金への繰入れに充てており、損失金の処理に充てたものではなく、また、平成十事業年度に係る決算報告においては損失金が計上されているが、その理由は、四についてで述べたとおり、投融資損失引当金について新たな計上基準に基づく引当金の積増しを行うとともに、新設した債務保証損失引当金の計上を行った結果であると承知している。
六について 退職給与引当金に係る規定については、公団は、以前は、事業年度末日において、職員が自己の都合により退職した場合の退職手当要支給額の百分の五十相当額から、当該事業年度末引当金残高を控除した額を退職給与引当金に繰り入れるものと定めていたが、平成十一年六月に、公団の財務内容を更に健全化させるとの観点からこれを改正し、職員が自己の都合により退職した場合の退職手当要支給額の全額から、当該事業年度末引当金残高を控除した額を退職給与引当金に繰り入れるとの新たな規則を定めたものと承知している。なお、役員については、従来から、退職手当要支給額の全額から、当該事業年度末引当金残高を控除した額を退職給与引当金に繰り入れるものと定めており、御指摘のような変更は行っていないものと承知している。 七について 欠損金の処理については、公団は、現在行われている石油審議会における公団の保有株式の売却の在り方等に関する審議の結果を踏まえ、強靱な石油開発産業体制を構築するための中核的企業の育成等も視野に入れつつ、保有株式の売却収入等によって行うものと承知している。
八について これまでに政府が示してきた我が国の石油開発コストは、昭和四十二年度から平成七年度までの間に支出した探鉱費及び開発費の累計額を、当該期間中に公団の出融資先会社が我が国へ輸入した原油の量の累計と、平成七年末時点において世界で賦存が確認されていた原油の埋蔵量(当該出融資先会社が採掘権を有するものに限る。)とを合計した量で除することにより算出したものである。他方、欧米の石油開発会社の石油開発コストは、当該年に支出した探鉱費及び開発費の合計額を、前年末時点において高い信頼性をもって採取が可能であると想定された世界の原油の埋蔵量(当該石油開発会社が採掘権を有するものに限る。)に対する当該年末時点での当該埋蔵量の増加分で除することにより算出されているが、その数値は石油開発会社や事業年度によって異なるところ、前記方法により算出した我が国の石油開発コストの数値がその範囲内であったことから、御指摘のような認識を示してきたものである。
九について 公団は、昭和六十一年九月に実施した第一次特別措置では、貸付金債権(以下「貸付金」という。)の一部の出資金への振替、貸付金から発生する利息の支払猶予及び貸付金の元本の返済猶予を、平成元年九月に実施した第二次特別措置では、貸付金から発生する利息の支払猶予及び貸付金の元本の返済猶予を、平成七年九月に実施した第三次特別措置では、貸付金から発生する利息の支払猶予、貸付金の元本の返済猶予及び特別負担金(公団の貸付けに係る探鉱事業が恒常的生産段階に達した場合に、公団の出融資先会社から生産量に応じて徴収するもの。)の支払猶予を、平成十一年九月に実施した第四次特別措置では、貸付金の一部の出資金への振替、貸付金等の無利子化、貸付金の元本の返済猶予、これまで支払を猶予してきた利息及び特別負担金の再度の支払猶予並びにその後の特別負担金の支払義務の免除を、それぞれ行ったと承知している。
十について 公団法第二十三条の規定によれば、公団は、毎事業年度、財務諸表を作成し、当該事業年度の終了後三月以内に決算報告書を添えて通商産業大臣に提出し、その承認を受けた後に財務諸表及び決算報告書等を公開することとされていることから、公団においては、平成十一事業年度上半期(中間期)に係る財務諸表及び決算報告書は作成していないと承知している。 十一について 公団の出融資事業については、高いリスクを伴う石油開発事業に対して資金を供給するものであり、当該事業が不成功に終わり、出融資に係る資金の回収が不可能となる場合がある一方、その損失を成功した石油開発事業からの配当、株式売却収入等で埋め合わせるよう制度設計されており、全体として、税金による損失の穴埋めを行うことなく公団が業務を実施することとなっているが、政府としては、現在石油審議会において行われている今後の石油開発産業の在り方についての審議の結果を踏まえ、公団の出融資事業がより一層効率的かつ効果的に実施されることが重要と考えている。
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