質問主意書

第146回国会(臨時会)

答弁書


第百四十六回国会答弁書第一七号

内閣参質一四六第一七号

  平成十二年一月二十一日

内閣総理大臣 小渕 恵三   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員海野義孝君提出石油公団の業務改善等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員海野義孝君提出石油公団の業務改善等に関する質問に対する答弁書

一について

 石油公団(以下「公団」という。)は、平成十事業年度に係る決算報告の際、新たに、公団の石油開発事業に係る長期損益見込み及び保有株式の評価益試算、公団の出資先会社に対して持分法(公団が、出資先会社の純資産及び損益のうち、公団に帰属する部分の変動に応じて、その投資勘定を各事業年度ごとに修正する方法をいう。)を適用した場合の試算等を附属明細書に記載し、これを公表したと承知している。
 なお、公団は、平成十二事業年度に係る決算において、公団の出資先会社を連結子会社とする連結財務諸表を作成することとしており、そのための準備を進めていると承知している。また、公団の出融資先会社のうち、平成十一年三月に決算期を迎えた会社から、順次、企業内容等の開示に関する省令(昭和四十八年大蔵省令第五号)第十五条第一号イの規定する有価証券報告書に準ずる事業報告書を作成し、その公開を行っているものと承知している。

二について

 石油公団法(昭和四十二年法律第九十九号。以下「公団法」という。)第二十三条の規定によれば、公団の財務諸表は、財産目録、貸借対照表及び損益計算書とされており、附属明細書は公団の監事が意見を付けなければならない財務諸表には含まれないが、公団の監事は、平成十事業年度の財務諸表及び決算報告書に記載された内容について監査を行うに当たり、附属明細書に記載された内容についても監査を行った上で、財務諸表及び決算報告書について、適正であることを認める旨の意見を付けたものと承知している。
 また、この際、公団の監事は、平成十事業年度が終了した直後から財務諸表及び決算報告書に関する意見を付けるまでの約三か月間にわたり、十三名の公団の職員の協力を得ながら、総勘定元帳及び支出負担行為簿等の帳簿、書類その他の物件の検査等を行ったと承知している。なお、検査等を行った物件は膨大な量に及んでおり、かつその形態も様々であることから、その量を明確にお答えすることは困難である。

三について

 公団は、平成十事業年度に係る決算報告の際、大蔵大臣の諮問機関である企業会計審議会が職業的監査人が遵守すべきものとして定めた「監査基準」(昭和三十一年十二月二十五日大蔵省企業会計審議会中間報告)等に基づき、実査、閲覧、帳簿突合等の手続により、公認会計士による任意監査を実施したと承知している。
 当該監査の結果、監査法人から、公団に対し、公団の財務諸表等は、公団法、石油公団の財務及び会計に関する省令(昭和四十二年通商産業省令第百三十八号)、公団の内部規則である会計規程(以下「会計規程」という。)等に準拠して作成されているものと認める旨の監査報告書が提出されており、問題点は指摘されなかったと承知している。

四について

 御指摘の公団が個別に算定した損失見込額については、原油・ガスの販売価格及び為替レートの過去十年間の平均値を前提とし、現在確認されている埋蔵量に基づき合理的と判断される出融資先会社の生産計画を基礎として、公団が、資金収支見通しに基づく分析を行い、合理的かつ客観的に見積もることが可能な長期の一定期間において、損失の発生が見込まれる額として算出した結果であると承知している。
 投融資損失引当金の繰入額に係る規定については、公団は、以前は、昭和六十三年に策定された「投融資損失引当金の繰入及び戻入について」と題する公団の内部規則により、投融資損失引当金の繰入額の上限のみを定めていたが、平成十一年六月にこれを改正し、繰入額の上限の定めを廃止して、個別の出融資先会社ごとに、資金収支見通しに基づく分析を行い、合理的かつ客観的に見積もることが可能な長期の一定期間において、損失の発生が見込まれる額が、前年度引当金残高から引当金の取崩額を差し引いた額を上回る場合にはその上回る額を繰入額として計上し、下回る場合にはその下回る額を特別利益として計上するとの規則を新たに定めたと承知している。また、債務保証損失引当金に係る規定については、公団は、平成十一年六月に、個別の債務保証先会社ごとに、資金収支見通しに基づく分析を行い、合理的かつ客観的に見積もることが可能な長期の一定期間において、公団の保証債務のうち履行が見込まれる額が、前年度引当金残高から引当金の取崩額を差し引いた額を上回る場合にはその上回る額を繰入額として計上し、下回る場合にはその下回る額を特別利益として計上するとの規則を新たに定めたと承知している。
 債券発行費については、公団は、会計規程別表第四に定められているとおり、従来からこれを十年で均等償却しており、御指摘のような会計方針の変更は行っていないと承知している。
 欠損金の処理については、公団は、現在行われている石油審議会における公団の保有株式の売却の在り方等に関する審議の結果を踏まえ、強靱な石油開発産業体制を構築するための中核的企業の育成等も視野に入れつつ、保有株式の売却収入等による欠損金の処理に係る計画を策定するための準備を行っているものと承知しているが、当該計画の策定が終了する時期については、現在、石油審議会における議論が継続して行われているところであることから、明確にお答えすることは困難である。

五について

 御指摘の一般勘定に係る政府出資金の増額は、平成十事業年度における探鉱投融資の実施及び債務保証基金への繰入れに充てており、損失金の処理に充てたものではなく、また、平成十事業年度に係る決算報告においては損失金が計上されているが、その理由は、四についてで述べたとおり、投融資損失引当金について新たな計上基準に基づく引当金の積増しを行うとともに、新設した債務保証損失引当金の計上を行った結果であると承知している。
 いずれにせよ、政府としては、公団における損失金については、今後とも、国民への徹底した情報の開示を行うとともに、業務の改善の着実な実施及び効率的な事業の運営に努めることによりこれを削減していくことが公団の責務であると考えている。また、公団は、平成十事業年度に係る決算について、財務諸表の公開に加え、損失金の発生理由等の情報を報道機関に提供することにより、国民への情報の開示に努めているものと承知している。
 前総裁に対する退職金の支払については、公団において、その在任中に置かれていた状況等を総合的に考慮した結果、前総裁本人に職務上の問題があったものとは認められないと判断し、公団の内部規則に基づきこれを行ったものと承知している。

六について

 退職給与引当金に係る規定については、公団は、以前は、事業年度末日において、職員が自己の都合により退職した場合の退職手当要支給額の百分の五十相当額から、当該事業年度末引当金残高を控除した額を退職給与引当金に繰り入れるものと定めていたが、平成十一年六月に、公団の財務内容を更に健全化させるとの観点からこれを改正し、職員が自己の都合により退職した場合の退職手当要支給額の全額から、当該事業年度末引当金残高を控除した額を退職給与引当金に繰り入れるとの新たな規則を定めたものと承知している。なお、役員については、従来から、退職手当要支給額の全額から、当該事業年度末引当金残高を控除した額を退職給与引当金に繰り入れるものと定めており、御指摘のような変更は行っていないものと承知している。

七について

 欠損金の処理については、公団は、現在行われている石油審議会における公団の保有株式の売却の在り方等に関する審議の結果を踏まえ、強靱な石油開発産業体制を構築するための中核的企業の育成等も視野に入れつつ、保有株式の売却収入等によって行うものと承知している。
 公団が保有する株式等の資産価値は、原油価格及び為替レート等によって変動するものであることから、公団は、その売却時期等を慎重に見極めつつ、保有株式を売却するための中期計画を策定するための準備を行っているものと承知している。
 御指摘の財務諸表に計上されていない棚上利息については、公団において、その回収可能性を評価した結果、回収可能性が低いと判断したため、収益や資産に計上しなかったものであり、仮に将来回収不能となっても、新たに損失として計上されることとはならず、損益見通しに影響を及ぼすものではない。
 公団においては、従来から、「特殊法人等の整理合理化について」(平成九年十二月二十六日閣議決定)等を踏まえ、業務の合理化及び効率化を推進するとともに、人員の計画的な削減及び必要に応じた組織の再編を行っているものと承知している。

八について

 これまでに政府が示してきた我が国の石油開発コストは、昭和四十二年度から平成七年度までの間に支出した探鉱費及び開発費の累計額を、当該期間中に公団の出融資先会社が我が国へ輸入した原油の量の累計と、平成七年末時点において世界で賦存が確認されていた原油の埋蔵量(当該出融資先会社が採掘権を有するものに限る。)とを合計した量で除することにより算出したものである。他方、欧米の石油開発会社の石油開発コストは、当該年に支出した探鉱費及び開発費の合計額を、前年末時点において高い信頼性をもって採取が可能であると想定された世界の原油の埋蔵量(当該石油開発会社が採掘権を有するものに限る。)に対する当該年末時点での当該埋蔵量の増加分で除することにより算出されているが、その数値は石油開発会社や事業年度によって異なるところ、前記方法により算出した我が国の石油開発コストの数値がその範囲内であったことから、御指摘のような認識を示してきたものである。
 なお、御指摘の総務庁行政監察局による指摘を踏まえ、現在、公団において、石油開発コストの比較について、欧米の石油開発会社が採用しているものと同様の手法による試算に向けた準備を行っているところであると承知している。

九について

 公団は、昭和六十一年九月に実施した第一次特別措置では、貸付金債権(以下「貸付金」という。)の一部の出資金への振替、貸付金から発生する利息の支払猶予及び貸付金の元本の返済猶予を、平成元年九月に実施した第二次特別措置では、貸付金から発生する利息の支払猶予及び貸付金の元本の返済猶予を、平成七年九月に実施した第三次特別措置では、貸付金から発生する利息の支払猶予、貸付金の元本の返済猶予及び特別負担金(公団の貸付けに係る探鉱事業が恒常的生産段階に達した場合に、公団の出融資先会社から生産量に応じて徴収するもの。)の支払猶予を、平成十一年九月に実施した第四次特別措置では、貸付金の一部の出資金への振替、貸付金等の無利子化、貸付金の元本の返済猶予、これまで支払を猶予してきた利息及び特別負担金の再度の支払猶予並びにその後の特別負担金の支払義務の免除を、それぞれ行ったと承知している。
 各特別措置の手続については、貸付金の一部の出資金への振替は通商産業大臣の認可(公団法第十九条第二項)を、貸付金の元本の返済猶予は同大臣の承認(公団の業務方法書第十五条)を、貸付金の無利子化は同大臣の承認(公団の石油開発事業に対する資金貸付細則第十一条)を、それぞれ得た上で行われており、その他の措置については、所管省庁等との協議を踏まえて実施されている。
 各特別措置の会計処理については、貸付金の一部の出資金への振替は、公団が、ジャパン石油開発株式会社から当該振替相当額の返済を受けることにより行われているため、公団の貸借対照表の勘定科目である「貸付金」を当該額減少させるとともに「現金・預金」を同額増加させ、その後、同日付けで同社に当該額を出資しているため、当該勘定科目である「現金・預金」を同額減少させるとともに「出資金」を同額増加させるとの会計処理を行い、また、貸付金から発生する利息の支払猶予は、将来回収が見込まれるものに限り、当該勘定科目である「長期未収金」を当該額増加させるとの会計処理を行ったが、その他の措置については、特段の会計処理を要しないものであるため、これを行わなかったと承知している。
 公団は、平成十事業年度に係る決算報告の際、附属明細書において、第一次、第二次及び第三次特別措置について、その内容を公表したと承知している。また、第四次特別措置については、公団は、その実施内容について、報道機関への情報提供を行ったほか、平成十一事業年度に係る決算報告の際、附属明細書にも記載する予定であると承知している。

十について

 公団法第二十三条の規定によれば、公団は、毎事業年度、財務諸表を作成し、当該事業年度の終了後三月以内に決算報告書を添えて通商産業大臣に提出し、その承認を受けた後に財務諸表及び決算報告書等を公開することとされていることから、公団においては、平成十一事業年度上半期(中間期)に係る財務諸表及び決算報告書は作成していないと承知している。

十一について

 公団の出融資事業については、高いリスクを伴う石油開発事業に対して資金を供給するものであり、当該事業が不成功に終わり、出融資に係る資金の回収が不可能となる場合がある一方、その損失を成功した石油開発事業からの配当、株式売却収入等で埋め合わせるよう制度設計されており、全体として、税金による損失の穴埋めを行うことなく公団が業務を実施することとなっているが、政府としては、現在石油審議会において行われている今後の石油開発産業の在り方についての審議の結果を踏まえ、公団の出融資事業がより一層効率的かつ効果的に実施されることが重要と考えている。
 いずれにせよ、エネルギーの安定的かつ効率的な供給を図るための望ましい組織の在り方をも念頭に置きつつ、今後とも環境と調和のとれたエネルギー施策を実施してまいりたい。