質問主意書

第146回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一三号

内閣参質一四六第一三号

  平成十二年一月七日

内閣総理大臣 小渕 恵三   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員中村敦夫君提出愛知万博計画と新住宅市街地開発計画に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員中村敦夫君提出愛知万博計画と新住宅市街地開発計画に関する質問に対する答弁書

一について

 「新しい地球創造-自然の叡智」というテーマにふさわしい会場計画、催事、展示等、二千五年日本国際博覧会(以下「本博覧会」という。)の具体的な在り方については、現在、財団法人二千五年日本国際博覧会協会(以下「博覧会協会」という。)において、学識経験者等で構成する企画運営委員会を中心に検討されていると承知しており、同委員会の下には、企画調整会議、会場計画プロジェクトチーム等の委員会が設置され、これまでに延べ九十回を超える会議が開催され、様々な課題につき、専門的な立場から熱心な検討が行われていると聞いている。
 御指摘のような趣旨の批判を一部の委員が行っていることも承知しているが、政府としては、博覧会協会において、引き続き、前記テーマにふさわしい意義のある博覧会の具体化に向けて十分な検討が行われることが重要であると考えている。

二について

 御指摘の「新住宅市街地開発計画」は、瀬戸市南東部地区新住宅市街地開発事業(以下「本件新住事業」という。)を指すものと解され、御指摘の「名古屋・瀬戸道路ほか三本の道路事業」のうち、名古屋瀬戸道路事業以外の道路事業が具体的に何を指すのか明確ではないが、本博覧会については、会場建設事業と本件新住事業、名古屋瀬戸道路事業等の長期的地域整備との整合性を十分図ることとしており、現在、博覧会協会は、愛知県知事が行っている本件新住事業、名古屋瀬戸道路事業の環境影響評価と連携して本博覧会の環境影響評価を実施していると承知している。
 このように、本博覧会の会場建設事業を本件新住事業、名古屋瀬戸道路事業等との整合性を図りつつ進めている理由は、本博覧会については、例えば、通商産業省に設置された国際博覧会予備調査検討会が平成七年十二月に明らかにした「新しい二十一世紀型国際博覧会の開催について」と題する報告書において、「博覧会としての事業展開を一過性のイベントではなく、人と自然との共生を目指した長期的地域整備、まちづくり(二十一世紀型のモデル都市)の計画と整合性を持たせる」とされているなど、構想の当初の段階から、長期的地域整備及びまちづくりの計画との整合性を図ることを本博覧会のコンセプトの一つとしているからである。
 このような観点から、「愛知県における国際博覧会の開催申請について」(平成七年十二月十九日閣議了解。以下「本件閣議了解」という。)においては、「会場建設事業については、長期的地域整備との整合性を十分図ること」としており、また、平成十七年に開催される国際博覧会の準備及び運営のために必要な特別措置に関する法律(平成九年法律第百十八号)の国会審議に際し、平成九年十一月に行われた参議院商工委員会の附帯決議においては、「長期地域整備との整合性を図りつつ博覧会会場計画を策定すること」とされ、同年十二月に行われた衆議院商工委員会の附帯決議においては、「博覧会施設等の建設に当たっては、長期的地域整備との整合性を図りつつ、その理念を十分に生かすこと」とされているところである。

三について

 都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第六十条の規定により、都市計画事業についての建設大臣の認可を受けようとする者は、そのための申請書に新住宅市街地開発事業の資金計画書を添付しなければならないが、いまだ本件新住事業に係る申請書が提出されていないため、資金計画及び採算の見通しについては、いずれも承知していない。
 また、現在愛知県において都市計画決定に向けた手続が進められている名古屋瀬戸道路事業の瀬戸市及び豊田市に係る区間の事業の資金計画その他の具体的内容については、愛知県において検討中であり、いまだ定まっていないと聞いている。

四について

 現時点においては、本件新住事業及び名古屋瀬戸道路事業に係る保安林の指定の解除の申請がなされていないため、御質問に対する回答は困難である。なお、今後保安林の指定の解除の申請が行われた場合には、森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)の規定に基づき適切に対処してまいりたい。

五について

 御指摘の「通産省アセス手法検討委員会」は、現在通商産業省に設置されている「二千五年日本国際博覧会に係る環境影響評価会」を指すものと解されるが、平成十一年十一月から同年十二月までの間に愛知県が行ったボーリング調査(以下「本件調査」という。)は本件新住事業に係る工事のための事前調査の一環として行われたものと承知しているところ、本件調査は、環境影響評価に係る調査ではなく、また、本件新住事業及び名古屋瀬戸道路事業の環境影響評価の対象にも当たらないため、同評価会が意見を述べるべき事項には当たらない。
 また、御指摘の「オオタカ検討委員会」は、現在愛知県に設置されている「国際博会場関連オオタカ調査検討会」を指すものと解されるが、政府としては、各委員の意見の詳細までは承知していないが、愛知県から、平成十一年九月二十六日に開催された第三回国際博会場関連オオタカ調査検討会において、本件調査について議論が行われ、同年十二月に本件調査を終了するよう最大限努力すること等の指摘がなされたことから、これらの指摘を踏まえて調査を行ったと聞いている。
 いずれにせよ、政府としては、本件調査は環境影響評価法(平成九年法律第八十一号)第三十一条に規定する対象事業の実施には当たらないため、これを行うことに法律上の問題はないものの、こうした調査は極力環境に影響を及ぼさないよう慎重に行うことが望ましいと考えている。

六について

 先般、世界自然保護基金事務局長から博覧会国際事務局議長あてに、本博覧会に関し、海上の森に対する環境影響の可能性について懸念を表明する旨の書簡が送られたことは承知している。
 博覧会協会においては、これまでも、世界的な環境保護団体のみならず地元住民等の関係者との対話の実施、シンポジウム及び説明会の開催、インターネットを通じての意見募集等により広く意見を求め、これらを踏まえ、自然環境の保全に十分に配慮しつつ、事業計画の企画立案を進めてきているものと承知している。
 政府としては、博覧会協会において、引き続き広く意見を求めるとともに、これらを踏まえ、自然環境の保全に万全を期しつつ、本博覧会の具体化に向けての準備を進めていくものと考えている。

七について

 博覧会協会が実施する本博覧会事業(以下「本博覧会事業」という。)については、環境影響評価法の対象事業には該当しないが、本件閣議了解において、「本博覧会の開催に当たっては、環境影響評価を適切に行うこと」としていることから、博覧会協会が、「二千五年日本国際博覧会環境影響評価要領について」(平成十年三月二十七日付け通商産業大臣官房商務流通審議官通達。以下「評価要領」という。)に基づき、本博覧会の環境影響評価を実施していると承知している。
 評価要領においては、事業の目的及び内容の修正であって、当該変更により当該事業に係る環境影響の程度が低減する旨が、評価書において明らかにされることとなるものである場合は、「軽微な修正等」に該当し、実施計画書の作成以降の環境影響評価その他の手続の再実施は必要ないとされている。
 博覧会協会は、会場計画の変更に伴い、当該修正に係る部分についての環境影響評価の再実施を行った上で評価書を作成して通商産業大臣に送付しており、通商産業省においては、環境庁長官の意見も踏まえ、現在、当該評価書についての意見を検討中である。

八について

 本博覧会事業は環境影響評価法の対象事業には該当しないが、評価要領に基づく環境影響評価の過程で、環境保全措置の一環として会場計画が変更されたものと承知している。
 評価要領によれば、事業の目的及び内容の修正であって、当該変更により当該事業に係る環境影響の程度が低減する旨が、評価書において明らかにされることとなるものである場合は、「軽微な修正等」に該当し、実施計画書の作成以降の環境影響評価その他の手続の再実施は必要ないとされている。
 環境庁においては、会場計画の変更により本博覧会事業に係る環境影響の程度が低減する旨が、評価書において明らかにされることとなるものであるか否かについて検討した結果、新たな会場候補地として位置付けられた関係地域の住民に対しても環境影響に係る説明及び十分な意見聴取を行うとともに、より明らかに本博覧会事業に係る環境影響の程度の低減を示す必要があり、以上について事業計画に適切に反映され、また、これらが環境影響評価書に記載されることが必要と考えており、平成十一年十二月八日付けで、通商産業大臣に対し、その旨の意見を述べたところである。