質問主意書

第146回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一号

内閣参質一四六第一号

  平成十一年十二月三日

内閣総理大臣 小渕 恵三   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員海野義孝君提出商工ローン等の諸問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員海野義孝君提出商工ローン等の諸問題に関する質問に対する答弁書

一について

 金融監督庁においては、貸金業者と債務者、保証人等とのトラブルが発生している現状等にかんがみ、財務局及び都道府県を通じるなどして、平成十一年九月に、文書により、全貸金業者等に対して、根保証を含めた契約内容を十分説明すること等、適正な業務運営の確保を要請するとともに、全国貸金業協会連合会に対して、根保証において保証人が債務残高を適宜把握できるための取組を行うこと等、貸金業務の適正化に向けての自主的な改善への取組の検討を要請したところである。
 同連合会は、これらを踏まえ、同年十月に「事業者金融(商工ローン)における貸付けの正常化に関する自主規制基準」を策定したところであり、同連合会において、これを各都道府県の貸金業協会に例示し、貸金業者の指導の徹底を要請したものと承知している。
 いずれにせよ、政府としては、各貸金業者において、先に文書で要請した貸金業務の適正化の徹底が図られることが肝要と考えており、今後、業界の動向を注視し、法令に基づき適切な監督に努めてまいりたい。

二について

1 金利については、民事上の規制に関する上限金利が利息制限法(昭和二十九年法律第百号)に、刑事上の規制に関する上限金利が出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(昭和二十九年法律第百九十五号。以下「出資法」という。)に、それぞれ定められており、利息制限法については、元本が十万円未満の場合は年二割、元本が十万円以上百万円未満の場合は年一割八分、元本が百万円以上の場合は年一割五分とされ(第一条第一項。ただし、損害賠償額の予定については、第四条第一項により、その二倍。)、出資法については、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合は年四十・〇〇四パーセント、その他の場合は年百九・五パーセントとされている(第五条)。
 利息の契約が利息制限法の右上限を超えるときには、当該契約は、その超過部分につき無効であり、他方、出資法の右上限を超える割合の利息の契約をし、又はこれを超える割合による利息を受領する行為は犯罪を構成する。
 なお、利息制限法の右上限を超えた利息を受領した場合においては、最高裁判所の判例(最高裁大法廷昭和三十九年十一月十八日判決、同大法廷昭和四十三年十一月十三日判決及び同第三小法廷昭和四十四年十一月二十五日判決)により、右上限を超える部分は残存元本への充当の対象又は不当利得として返還の対象となると解されているが、貸金業者の場合においては、貸金業の規制等に関する法律(昭和五十八年法律第三十二号。以下「貸金業規制法」という。)第四十三条に特例が定められており、同条に定める条件を満たした場合には有効な利息の債務の弁済とみなすものとされている。
2 このような現行法制が定められた経緯については、昭和五十八年五月十三日に議員提案による出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の一部を改正する法律(昭和五十八年法律第三十三号。以下「改正法」という。)及び貸金業規制法が成立する前においては、出資法上は、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合か否かにかかわらず、上限金利は一律に年百九・五パーセントとされ、民事上の効果は前記最高裁判所の判例のとおりに解されていたが、両法の成立により、金銭の貸付けを業として行う者に係る特例が設けられ、出資法の罰則の対象となる上限金利が年四十・〇〇四パーセントとされるとともに(第五条第二項。ただし、経過措置等により、改正法施行後三年間は年七十三パーセント、平成三年十月三十一日までは年五十四・七五パーセントとされた。)、利息制限法の上限金利を超える利息の支払であっても、一定の条件を満たした場合には有効な利息の債務の弁済とみなされることとなったものである(貸金業規制法第四十三条)。
 このように、金利の上限が利息制限法と出資法とで別個に定められているのは、民事上の規制と刑事上の規制という相違があることによるものであり、貸金業者に係る特例が認められているのは、貸金業者に対する規制の在り方に係る立法政策の問題として国会において審議された結果であると考えている。
 このような現行法制をめぐる御指摘の点については、政府としては、貸金業者への適切な監督と金融全体における貸金業の位置付け等に関する幅広い議論を踏まえ、適切に対処すべきものと考えているところであり、このような観点から、国会における御論議を注視してまいりたいと考えている。

三について

 出資法における金銭の貸付けを業として行う者に係る上限金利の規制や貸金業規制法第四十三条のいわゆるみなし弁済規定をめぐっては、借り手保護の観点から上限金利を更に引き下げるべきであるとの指摘、更なる引下げはかえって闇金融の横行につながるおそれがあるとの指摘、出資法と利息制限法の上限金利を一致させるとともに、みなし弁済規定を廃止すべきであるとの指摘等があり、種々の議論があることは承知している。なお、みなし弁済規定については、貸金業規制法制定時の国会審議において、同法に規定する各種の行為規制の実効性を確保し、もって資金需要者の保護を図ろうとするものである旨、提案者から説明されたと承知している。
 いずれにせよ、このような問題については、政府としては、貸金業者への適切な監督と金融全体における貸金業の位置付け等に関する幅広い議論を踏まえ、適切に対処すべきものと考えているところであり、このような観点から、国会における御論議を注視してまいりたいと考えている。

四について

 出資法における金銭の貸付けを業として行う者に係る上限金利の引下げについては、先般成立した金融業者の貸付業務のための社債の発行等に関する法律(平成十一年法律第三十二号)に関する御指摘の附帯決議等を踏まえて、政府としては、関係省庁間で情報交換を行ってきたところであり、この問題については、引き続き、関係省庁間で十分連携の上、検討していく必要があると考えており、国会における御論議も注視してまいりたい。

五について

 出資法における金銭の貸付けを業として行う者に係る上限金利の規制や貸金業規制法第四十三条のみなし弁済規定をめぐっては、三についてで述べたとおり、種々の議論があることは承知している。
 また、貸金業規制法においては、貸金業を営もうとする者は、登録を拒否すべき場合に当たらない限り登録を受けることができ、自由な参入が認められているが、業者間の競争原理を一層働かせるべきであるとの指摘があることは承知している。
 いずれにせよ、このような問題については、政府としては、貸金業者への適切な監督と金融全体における貸金業の位置付け等に関する幅広い議論を踏まえ、適切に対処すべきものと考えているところであり、このような観点から、国会における御論議を注視してまいりたいと考えている。

六について

 貸金業規制法第十七条第二項においては、貸金業者は、保証契約を締結したときは、遅滞なく、貸付金額、貸付利率等の貸付けに係る契約事項を記載した書面及び当該保証契約の内容を明らかにする事項で総理府令・大蔵省令で定めるものを記載した書面を当該保証人に交付しなければならない旨規定されており、これらの書面の保証人への交付が義務付けられている。したがって、貸金業者がこれらの法令に従って適切に取引を行うならば、根保証契約の締結の際、当該保証人は、書面により保証の範囲等を知り得ることとなるものである。また、保証人は、一般に、債務者との間における固有の関係に基づき保証契約を締結したものであるから、根保証契約においても、当該保証人は、債務者の追加的な借入れ等についても債務者から知り得るものと考えられる。しかしながら、貸金業者の貸付けに係る根保証契約に関する問題として、御指摘のような法改正を検討すべきであるとの意見があることは承知している。
 いずれにせよ、このような問題については、政府としては、貸金業者への適切な監督と金融全体における貸金業の位置付け等に関する幅広い議論を踏まえ、適切に対処すべきものと考えているところであり、このような観点から、国会における御論議を注視してまいりたいと考えている。