質問主意書

第146回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二二号

BNFLデータ捏造事件に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十一年十二月十五日

福島 瑞穂   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   BNFLデータ捏造事件に関する質問主意書

 関西電力(以下「関電」という。)高浜原発三、四号機のプルサーマル用MOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料は、イギリスのBNFL社で加工が行われたが、今年九月、三号機用MOX燃料に検査データの捏造のあったことが、内部告発で発覚し、通産省はこの燃料の作り直しを指示した。四号機用は問題なしとされ、そのまま装荷されようとしているが、関西の市民グループから、四号機用のMOX燃料についても、抜取検査におけるデータ捏造の可能性が高いという指摘が行われた。
 この指摘は、MOX燃料ペレットの外径に関する全数自動計測データと抜取検査のデータを比較したところ、四号機用にも明らかに捏造が行われたと見られるデータがあるというものである。通産省は、このような指摘があることを知りながら、市民団体が行ったようなデータ比較も行わず、関電の調査報告書を妥当とする判断を下した。これでは政府が原子力の安全性を確保できるとはとても言えない。
 今回のデータ捏造問題は、原電工事株式会社の輸送容器(レジン)データ捏造・改ざん問題と全く同じである。書類さえ揃っていれば、データが捏造・改ざんされていても「許可」されるという安全審査体制の問題点がまたしても浮き彫りにされた。
 原電工事株式会社の時も内部告発がなければ、何ら問題にはならなかった。今回もBNFLからの報告がなければ、高浜三号機の燃料は何の問題もなく日本での安全審査と安全確認はパスしていたはずである。今また、高浜四号機の燃料が、そのまま装荷されようとしている。現在の所管官庁の安全審査と安全確認体制に疑義があるので以下、質問する。

一、品質管理と品質保証について

 MOX燃料製造においては、材質・寸法などの保証はもちろんのことプルトニウムの混合比率、混合方法など、製造工程における品質管理と品質保証は安全上不可欠である。これらは設置変更申請書の添付書類、MOX燃料の設計・仕様に明記されていなければならない。仕様通りの製造は、品質管理プログラム(工程管理・手順書など)によって保証される。

1、事業者の加工契約においては、ペレットの自動測定と抜取検査のダブルチェックをクリアしたロットのみを合格とし「品質管理認定書」を作成する。つまり自動測定と抜取検査が適正になされない限り、BNFLの「品質保証」はなされないのではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。
2、ペレットの抜取検査データの捏造があったという事実は、ペレット製造工程すべてに対する疑義となる。ペレット製造工程における混合比などのデータ捏造・改ざん疑義がないことを、データのチェックのみによって立証するには無理がある。少なくとも安全上からは、ペレットの製造をやり直すべきであると考えるが政府の見解を示されたい。
3、抜取検査体制そのものでマニュアル違反と捏造事件が起きたのであるから、抜取検査を再度やり直すべきである。捏造を認めた検査員A氏は、「測定は単純作業であり、全数測定を行っているものを再度測定するのは非生産的と思った。測定を省略し、時間を短縮したかった。」と証言している。自動測定をしているのであるから抜取検査は非生産的であり、不必要であるとの認識が動機となっている。抜取検査は不必要だとの認識は、A氏だけでなく、A氏と同様に捏造を認めた検査員B・C氏とそれぞれと一緒に作業をしていた記録員にもあったのではないのか。この原因は、抜取検査を軽視するBNFLの品質管理教育にあるのではないか。所管官庁は、抜取検査のやり直しを指導するべきであると考えるが政府の見解を明らかにされたい。
4、今回のMOX燃料は、通産省の安全審査(設計仕様)の認可を受けることなく製造開始されたものである。本来、製造前に工程管理、品質保証などについての確認や指導を行い、設計仕様の安全審査を受け認可後に製造すべきであると考える。製造してしまってから、設計仕様、製造工程の指導はできない。海外における製造だとしても、安全審査と認可を受けた後に製造開始するように指導できたはずである。なぜ、製造前の申請を指導しなかったのか、その理由を示されたい。

二、関電最終報告について

 通産省は、関電の最終報告を妥当としており、高浜四号機分の検査データには不正がないとする最終報告を追認している。

1、九月一四日の関電のプレス発表では、データ捏造のロット数は一一ロットであった。しかし、九月二一日の関電のプレス発表では、新たに一一ロットの捏造が発覚して捏造ロット数は合計二二ロットとなった。データを捏造した二二ロットの内訳は、A氏の関与が一八ロット、B・C氏の関与が四ロットである。最初にA氏の捏造が発覚しているのであるから、当初発表一八ロット、新たに四ロットの捏造発覚で四ロットの追加発表が自然である。新たに一一ロットの捏造発覚は不自然である。なぜ、新たに一一ロットもの捏造が発覚したのか明らかにされたい。

2、捏造の方法について

 最終報告では、捏造の方法を単純な大量データのコピー流用に「限定」している。しかし、捏造の動機である時間の短縮と抜取検査の軽視からは、捏造の方法の可能性は単純な大量データのコピー流用以外にもあり得る。
 時間短縮が動機だとすれば、データの単純な大量コピーだけでなく、データのランダム流用、データの部分コピー、データの捏造などの可能性も否定できない。
 また、抜取検査でスペックアウトの検査データの捏造と改ざんも、時間が短縮され、生産性があがる。なぜなら、ロット自体の不合格を防ぐことになるからである。特に、抜取検査を軽視していれば、スペックアウトデータの捏造・改ざんの可能性を否定することはできない。
 以上のような方法が考え得るにもかかわらず、捏造の方法は単純な大量データのコピー流用以外にないとするのはなぜか。

3、捏造ロットの調査方法について

 BNFLは、抜取検査におけるデータの捏造を二二ロットのみとし、他のロットではデータの捏造はないと結論した。関電もこれを追認している。その調査方法は、抜取検査におけるペレット番号一から二〇〇までのデータ値を、直前に検査をしたデータと平行比較し、一致個数が約一四〇以上をデータ捏造ロットと「限定」したものである。
 しかし、この調査方法では、一から二〇〇番までのデータ値を「単純に」平行利用した場合にのみ判明する。一から二〇〇番までのデータ値を二〇〇から一番へ流用したり、ランダムに流用した場合には、検査データを捏造したロットの発見は不可能である。
 このような不完全な調査方法によって、二二ロット以外のロットではデータ捏造はないとする結論は到底認められない。このような「単純な」調査方法で充分だと考えるのか。もし充分だとするなら、その理由を示されたい。

4、ペレット外径検査以外の検査データの調査方法も、検査データ値の平行比較であり不完全な調査方法である。このような調査方法で、データの捏造あるいは改ざんが行われていなかったと言えるのか、政府の見解を示されたい。

三、今回の捏造事件の根底には、抜取検査の軽視という問題がある。自動測定によりペレット仕様値内であるから安全であるとするならば、抜取検査の意味を否定することになり、ひいてはダブルチェックによる安全確認を否定することにもなると考える。実際に、抜取検査によってスペックアウトするペレットのあることは関電も認めるところである。抜取検査において六個のスペックアウトがあれば、ロット不合格とする安全基準を設けている。そうであるならば、自動測定のみで安全は確認されているとは言えない。政府は、ダブルチェックではなく自動測定のみの確認で、高浜四号機のペレットの安全性は確認されたと言いきるのか。

四、ペレットの抜取検査データが捏造されたという「事実」はあってはならないことで、BNFLの「品質保証」が保証にはならないということである。このことはペレットの寸法のみの問題ではなく、品質管理プログラムの信憑性とBNFLの品質保証体制の信頼性が崩壊したことを意味する。事業者に対して、BNFLとの取引停止を指導するべきだと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。