質問主意書

第145回国会(常会)

答弁書


答弁書第三三号

内閣参質一四五第三三号

  平成十一年十月十二日

内閣総理大臣 小渕 恵三   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員加藤修一君提出「油汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画について」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員加藤修一君提出「油汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画について」に関する質問に対する答弁書

一の1について

 御指摘の二つの海域に係る排出油防除計画を含め、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律(昭和四十五年法律第百三十六号。以下「海防法」という。)に基づき海上保安庁長官が作成する各海域に係る排出油防除計画においては、「海域ごとの排出油防除計画が相互に、かつ、有機的に連携が図られるように運用されるよう措置を講ずるものとする」こととされている。これを受けて、現在、各海域間の具体的な協力体制を盛り込んだ防除活動マニュアルの作成を、すべての海域において進めているところである。
 また、油流出事故対策を含め、各般の災害に対し国、指定公共機関及び地方公共団体は、相互の密接な連携体制が確保されるよう各防災計画の作成を行っている。

一の2について

 現在、海岸を持つ三十九都道府県すべての都道府県地域防災計画において、海上災害対策計画又は突発的災害に係る応急対策計画の一部として油流出事故対策を規定しており、必要に応じて修正を行っているところである。都道府県地域防災計画の作成及び修正に当たっては、政府は、当該都道府県地域防災計画が防災基本計画に基づくとともに、防災業務計画に抵触しないよう、また、都道府県地域防災計画相互の整合性が図られるよう十分指導しているところである。
 御指摘の数値目標については、その意味するところが明らかではないが、具体的な油流出事故対策は地域の特性に応じて策定すべきものであることから、全国レベルでの計画である防災基本計画において一律に規定することは適切でないと考えている。
 また、海上保安庁長官は、海防法第四十三条の二第一項の排出油防除計画を作成し、及び修正しようとするときは、関係地方公共団体の長の意見を聴かなければならないとされているとともに、管区海上保安本部の長等は、関係する都道府県地域防災計画を作成し、及び修正するための都道府県防災会議に委員として参画していること等から、海上保安庁と関係地方公共団体との間では十分な調整及び連携が図られている。したがって、海防法上、都道府県地域防災計画の油流出事故対策の位置付けを特段明らかにする必要はないと考えている。

一の3について

 関係行政機関等の相互の協力体制の整備については、「油汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画」(平成九年十二月十九日閣議決定)に明示しているところであり、また、災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)に規定するすべての指定行政機関の防災業務計画においても相互の協力体制について規定している。
 なお、御指摘の省庁の防災業務計画のうち、建設省、運輸省及び環境庁の防災業務計画には、油流出事故対策が規定されているが、農林水産省の防災業務計画には油流出事故対策が明確には規定されていないため、同省の防災業務計画に油流出事故対策を明確に規定する所存である。

一の4について

 油流出事故対策の実施においては、関係者の協力を得ることが重要であると考えており、このため、防災基本計画第十五編「防災業務計画及び地域防災計画において重点をおくべき事項」において、石油等危険物の大量流出による防除に関する事項として、防除活動の協力体制等に関する計画を規定しているところである。

二の1について

 油汚染事件に対する準備及び対応に関する関係省庁連絡会議(以下「連絡会議」という。)は、常設の会議である。
 また、連絡会議の日程、場所、参加者、会議の内容及び議事については、求めに応じ、公開することとしている。なお、これまで開催された連絡会議の日程等については、別表一のとおりである。

二の2について

 各省庁が収集及び整理をしている情報の内容は、別表二のとおりである。これらの情報については、関係行政機関及び関係地方公共団体の意見を聴いた上で、排出油防除計画において取りまとめて記載され、当該計画が関係行政機関及び関係地方公共団体に通知されているとともに、その要旨は公表されているため、関係行政機関及び関係地方公共団体を含む関係者の間で共有化及び有効利用が図られている。

二の3について

 情報の共有化及び有効利用については、海上保安庁が中心となって関係省庁、海上災害防止センター(以下「センター」という。)、さらには、水産資源、環境工学等の専門家と連携をとりつつ、一層の充実に努めているところである。

二の4について

 北海道網走支庁及び宗谷支庁並びに北海道全体の年間漁獲高(生産数量)及び売上高(生産金額)並びに水産加工業の売上高(出荷額)については、別表三のとおりである。

三について

 海洋の汚染の防止を任務とする機関として、海上保安庁が置かれているが、同庁は、排出油の防除を行うために必要な資材、組織及び要員を保有し、排出油の防除措置を実施する機関としての十分な機能を有している。
 一方、センターは、海上保安庁長官の指示又は船舶所有者等の委託により、船舶所有者等に代わり排出油の防除のための措置を実施することを主な業務としており、民間による排出油の防除において中核的な役割を果たしている。また、センターは、ナホトカ号海難・排出油災害等の教訓を踏まえ、防除措置の実施に関する対応能力を強化するため、基金の増額及び大型油回収装置の配備を行ってきたところである。
 政府としては、センターの業務が適確に遂行されるよう、その対応能力の強化を図っていく所存であり、海防法の改正は考えていない。

四の1について

 現在、油流出事故を発見する可能性のある我が国及び我が国の法人の保有する人工衛星は存在していないが、平成十四年に宇宙開発事業団が災害対応を主目的の一つとした人工衛星を打ち上げる予定であることから、当該衛星からの情報の活用等について検討してまいりたい。

四の2について

 北海道、東北及び北陸地方における関係行政機関、地方公共団体等の夜間、休日の場合等を含めた連絡体制は、それぞれ、北海道沿岸海域、東北沿岸海域及び北陸沿岸海域の排出油防除計画において確立されている。

五の1について

 外務省においては、関係省庁と連携しつつ、平成六年に開催された、我が国、大韓民国、中華人民共和国及びロシアが出席する政府間会合で採択された北西太平洋地域海行動計画の下、これらの国々と協調して、日本海と黄海における海洋汚染に対する準備と対応のための地域協力の枠組み作りの検討を進めており、こうした取組を通じ、日本海と黄海における油の流出等による海洋汚染に対応するための連絡体制、資機材の提供等の協力体制の強化に努めているところである。こうして蓄積されたノウハウは、御指摘のサハリンIIプロジェクトに係る海域で油流出事故が発生した場合にも応用できるものと考えている。
 サハリンIIプロジェクトにおける油流出事故を含む油流出事故が起きた際の夜間、休日の場合等を含めた連絡窓口については、国レベルでは、平成八年七月に新潟市で開催された日露海洋汚染防除専門家会議において、海上保安庁とロシア運輸省海運局海洋汚染防除・救助部との間で、本庁間及び出先機関間(小樽・コルサコフ間、新潟・ウラジオストク間)に設定している。

五の2について

 油汚染事件の発生に備えた近隣諸国等との協力体制については、これまで、我が国及びロシアの関係当局の間で油流出事故発生時に備えて連絡窓口を設定し、我が国、ロシア及びアメリカ合衆国の三か国で油防除合同訓練を実施し、並びに我が国、ロシア、大韓民国及び中華人民共和国の四か国で実務者会合を開催してきているところであるが、引き続きこうした機会を通じて近隣諸国等との連携及び連絡を密にしていく必要があると考えている。

六について

 警戒本部又は非常災害対策本部の事務局の設置場所は、それぞれ、海上保安庁内又は運輸省内とすることとしているが、警戒本部の本部員及び非常災害対策本部の本部員は、共に、関係を有する同一の省庁の職員から構成されること等から、警戒本部から非常災害対策本部へと移行する場合の油汚染事故への対応の継続性は十分確保されるものである。

七について

 流氷海における油防除手法について、海上保安庁は、平成十一年度から「寒冷海域等における油防除手法の調査研究」をセンターに委託しているところであり、この結果等を踏まえて、排出油防除計画の見直し等必要な検討を行ってまいりたい。
 また、御指摘の油除去チームについては、流氷海における油防除手法の確立を図った上で、海洋の汚染の防除を専門的に実施する組織として設置している海上保安庁第三管区海上保安本部横浜機動防除基地の隊員を中心として編成することを検討してまいりたい。

別表一~別表三 1/5

別表一~別表三 2/5

別表一~別表三 3/5

別表一~別表三 4/5

別表一~別表三 5/5