第145回国会(常会)
答弁書第一一号
内閣参質一四五第一一号 平成十一年四月六日 内閣総理大臣 小渕 恵三
参議院議員日笠勝之君提出コンピュータ西暦二〇〇〇年問題への政府の対応に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員日笠勝之君提出コンピュータ西暦二〇〇〇年問題への政府の対応に関する質問に対する答弁書 一について 航空分野については、我が国の航空管制システムについて、システム更新の機会を利用するなど、従来から着実にコンピュータ西暦二千年問題(以下「二千年問題」という。)への対応を進めてきており、本年六月末までに二千年問題への対応を危機管理計画の策定も含めて完了することとしている。なお、本年三月末までに模擬テストの実施を含めたプログラムの修正を完了しており、計画的に取組が進展している。また、主要な航空会社に対し昨年十月中旬に行った調査によると、重要と考えられるシステムにおける模擬テストの進ちょく率は平均で四十パーセントの水準となっているが、昨年十二月下旬に行った調査によると、進ちょく率は六十八パーセントにまで上昇している。これらの航空会社においては、二千年問題への対応作業は本年六月末までにすべて完了する見込みであり、計画的に取組が進展していると承知している。
二について 二千年問題への対応については、定期的にその推進状況を「コンピュータ西暦二千年問題に関する顧問会議」(以下「顧問会議」という。)等の場に報告、公表することとしており、中央省庁、特殊法人等の保有するコンピュータ・システムについても、現在、第二回目の調査を行っているところである。現段階では、「コンピュータ西暦二千年問題に関する行動計画」(平成十年九月十一日高度情報通信社会推進本部決定。以下「行動計画」という。)に基づき、機器の更新時期や新システムへの移行時期との関係等やむを得ない事情があるものを除く優先システムについて、原則として、本年六月末までに模擬テストを完了するよう取り組んでいるところである。なお、仮に、御指摘のように、模擬テストの実施時期が明らかでないもの、あるいは本年六月末までに実施できないとするものがあった場合においては、できる限り早急に適切な対応が講じられるよう取組を徹底してまいりたい。 三について 金融機関における二千年問題については、金融監督当局が昨年八月に策定した「コンピュータ二千年問題に関する金融検査におけるチェックリスト(改訂版)」に基づき、システムの修正、修正後の模擬テストの実施、危機管理計画の作成に重点を置いた検査を実施している。小人数の体制で徹底した検査を実施することは、はたして可能であるのかとの御指摘については、平成十年三月期及び九月期の自己査定の実施状況等を実態把握するために昨年八月末から実施している地方銀行、第二地方銀行に対する集中検査において、大蔵省財務局(以下「財務局」という。)とも連携し、二千年問題への対応についても実態把握している。また、二千年問題に関する検査のために専門的知識及び実務経験を有する者四名を非常勤職員として採用し、昨年十月から、これら非常勤職員を含めた検査官により主要銀行を中心に二千年問題への対応に重点を置いた検査を実施しているとともに、二千年問題に関する検査のために、これら非常勤職員をも活用して、検査官に対する二千年問題に関する研修等を実施し、財務局を含め検査官全体の二千年問題に関する知識、能力の充実、強化を図って対応しているところである。
四について 我が国においても、外務省が、二千年問題により生じ得る様々な状況を想定し、海外在留邦人や邦人渡航者の安全対策のため、情報提供を含めた適切な対応策について検討を行っているところである。
五について お尋ねのいわゆる「九九問題」については、昨年十二月に、内閣官房内閣内政審議室から各省庁に対し、自らのシステムについて万全の対応を期するとともに、所管する特殊法人等や地方公共団体に対し、あるいは所管団体を通じる等により業界等に対し、最終的な対応を促すよう要請を行ったところである。現在のところ、ごく一部の企業において軽微なトラブルがあったものの、直ちに修正等の手当が行われたため、大きな問題が生ずるには至っていないと認識している。
六について お尋ねのいわゆる「うるう年問題」については、従来から二千年問題の一環としてできる限り注意喚起を行ってきたところであり、二千年問題への対応の中で必要な手当がなされるものと期待している。
七について 航空機については、二千年問題への対応状況等について把握すべく、航空機製造業者等に対し、昨年九月に調査を行ったところであるが、マイクロ・コンピュータを含めた航空機に係るコンピュータ・システムについては、現在、航空機製造業者により製造した機体ごとの部品の確認、部品を納入したマイクロ・コンピュータ製造業者等に対する照会等の更に詳細な調査及び確認が行われているところである。今後、調査等の結果、問題が発生するおそれがある航空機が確認された場合には、当該航空機の運航を差し止める等、航空機製造業者及び航空会社の対応状況に応じて必要な措置を適時かつ適切に行ってまいりたい。
八について 各分野における個々の主体が危機管理計画を策定するに当たり、他の分野の状況をも踏まえた総合的な観点から策定することが可能となるよう、各分野における二千年問題への対応状況について、できる限りの情報の公開を促しているところである。政府としては、こうした危機管理計画の策定のための手引きを顧問会議の下の作業部会で策定し、顧問会議等での議論を経て、本年四月に公表する予定である。 九のイについて 食糧や資源の面で我が国との関係の深い諸外国に対する二千年問題への対応についての国際的な支援に関しては、船舶の問題も含め、これまで国際的な場における議論に積極的に参加してきたところである。
九のロについて 政府としては、軍事的側面において、例えば、ミサイル、戦車、航空機そのものよりもこれらの修理等に用いる器材等が履歴管理の観点から二千年問題の影響を受けることが多いと考えている。また、御指摘のような戦略核ミサイルの発射に関するシステムには、従来から偶発的な発射が生じないよう万全の措置が講じられていると承知しており、さらに、二千年問題に関し、アメリカ合衆国とロシア連邦の間では、両国の協力に関する協議が進められていると承知している。したがって、二千年問題による戦略核ミサイルの発射という重大な事態が引き起こされる可能性は少ないと考えられる。
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