質問主意書

第145回国会(常会)

答弁書


答弁書第一〇号

内閣参質一四五第一〇号

  平成十一年五月十一日

内閣総理大臣 小渕 恵三   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員中村敦夫君提出廃棄物最終処分場の安全性に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員中村敦夫君提出廃棄物最終処分場の安全性に関する質問に対する答弁書

一の1について

 御指摘の内陸式管理型最終処分場の数については、一般廃棄物の最終処分場は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号。以下「廃棄物処理法」という。)第八条第一項の規定に基づく許可を受けたもの及び廃棄物処理法第九条の三第一項の規定に基づく届出がなされたもののうち、水面埋立地(廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(昭和四十六年政令第三百号。以下「廃棄物処理法施行令」という。)第五条第二項に規定する水面埋立地をいう。以下同じ。)以外のものが平成七年度末で二千三百六十七か所であり、産業廃棄物の最終処分場は、廃棄物処理法第十五条第一項の規定に基づく許可を受けた管理型最終処分場(廃棄物処理法施行令第七条第十四号ハに掲げる産業廃棄物の最終処分場をいう。以下同じ。)のうち、水面埋立地以外のものが平成八年度末で千七十四か所である。なお、廃棄物処理法に基づくこれらの許可及び届出は、最終処分場の設置に当たり行われるものであり、これらの許可又は届出が行われた最終処分場のうち使用が開始されていないものの数については把握していない。

一の2について

 厚生省においては、御指摘のような処分場について、一般廃棄物の最終処分場を含めた数については把握していないが、平成八年及び平成九年に都道府県及び保健所を設置する市から産業廃棄物の最終処分場について昭和六十二年から平成八年までの十年間に御指摘のような紛争が生じているものの件数の報告を求めたところ、合計で百四十か所であった。

一の3について

 お尋ねの廃棄物の最終処分場の浸出水を最終処分場から排出する際の放流水(以下「放流水」という。)に含まれる有害化学物質の規制については、排水基準を定める総理府令(昭和四十六年総理府令第三十五号)第一条に規定するPCB等の有害物質に関しては、一般廃棄物の最終処分場及び産業廃棄物の最終処分場に係る技術上の基準を定める命令(昭和五十二年総理府令・厚生省令第一号。以下「基準命令」という。)第一条第一項第五号へ及び第二条第一項第四号において、一般廃棄物の最終処分場及び管理型最終処分場(以下「管理型最終処分場等」という。)には放流水の水質を当該有害物質の排水基準に適合させることができる浸出液処理設備を設置しなければならないこととするとともに、基準命令第一条第二項第十四号イ及び第二条第二項第三号において、放流水の水質が当該有害物質の排水基準に適合することとなるように当該設備を維持管理しなければならないこととしている。
 また、放流水中のダイオキシン類(ポリ塩化ジベンゾフラン及びポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシンの混合物をいう。以下同じ。)に関しては、現在のところ、基準命令においてダイオキシン類そのものを放流水の規制対象物質とはしていないが、平成十年六月の基準命令の改正において、管理型最終処分場等の放流水に含まれる浮遊物質量の基準を強化したところであり、ダイオキシン類は水への溶解度が小さいことから、当該基準の強化により浮遊物質の除去が進むことでダイオキシン類の削減に効果があるものと考える。他方、厚生省においては、平成九年度から厚生科学研究として「最終処分場における環境微量汚染物質対策に関する研究」を開始し、最終処分場におけるダイオキシン対策の在り方について調査研究を進めているところであり、今後、調査研究の成果等を踏まえ、規制の在り方について更に検討してまいりたい。
 次に、御指摘の内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)に関しては、人の健康への影響について科学的に未解明な点が多いことから、現在のところ、基準命令において放流水の規制対象物質とはしていないが、厚生省においては、平成八年度から各種の調査研究を進めているほか、平成十年四月に設置した「内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会」で国際的な動向も踏まえつつ総合的な検討を行い、同年十一月に中間報告を取りまとめたところであり、今後、これらの検討結果や調査研究の成果等を踏まえ、規制の必要性について検討してまいりたい。

一の4について

 御指摘の廃棄物の処理によって発生するダイオキシン類の問題について政府がいつから認識していたかを特定することは困難であるが、厚生省においては、廃棄物処理に係るダイオキシン問題への取り組み方を検討するため、昭和五十八年十二月「廃棄物処理に係るダイオキシン等専門家会議」を設置したところである。
 一方、お尋ねの廃棄物最終処分場指針については、厚生省において、昭和五十二年に、廃棄物最終処分場の技術上の基準として基本的な部分を基準命令において定めるとともに、廃棄物最終処分場の建設に係る国庫補助事業を採択する際の技術上の基準として当該指針を定め、「廃棄物処理施設整備国庫補助事業に係る施設の構造に関する基準について」(昭和五十二年六月十日付け環整第四十六号厚生省環境衛生局水道環境部長通知)により都道府県に通知したものである。
 また、内分泌かく乱化学物質については、一の3についてで述べたとおり、厚生省において、平成八年度から各種の調査研究を進めているほか、平成十年四月に検討会を設置し健康影響の検討等を行っているところである。

一の5について

 廃棄物の最終処分場の立地については、最終処分場の設置が基準命令に適合するとともに、その設置に関する計画及び維持管理に関する計画が当該最終処分場の周辺地域の生活環境の保全について適正な配慮がなされている場合には、御指摘の水源地であっても、特段の問題はないものと考える。
 新たに許可申請又は届出がなされた廃棄物の最終処分場がこれらの条件に適合するか否かを明らかにするための手続としては、平成九年十二月の廃棄物処理法の改正において、施設設置者による生活環境影響調査の実施、都道府県知事による申請書の告示及び縦覧、関係市町村長及び専門的知見を有する者からの生活環境保全上の意見の聴取等の手続が新たに規定され、平成十年六月から当該規定が施行されたところである。さらに、平成十年六月の基準命令の改正において、管理型最終処分場等の管理者は当該施設の周縁から採取した地下水等の水質を定期的に測定し、その結果水質の悪化が認められる場合には、その原因の調査その他の生活環境保全上必要な措置を講ずることとすることを新たに規定したところであり、当該規定は、新設の施設については平成十年六月から、既設の施設については本年六月から適用されるものである。なお、廃棄物最終処分場周縁の地下水等の水質の測定結果は、廃棄物処理法第八条の四、第九条の三第六項及び第十五条の二の三の規定に基づき、閲覧に供されることとされている。
 次に、御指摘の既設処分場における実態調査については、厚生省において、平成九年度に市町村の設置する一般廃棄物最終処分場の実態を調査し、その結果を平成十年三月に公表したところである。同調査の結果によれば、調査対象とした千九百一施設のうち五百三十八施設において、浸出液処理設備等を有していないことが判明したところである。同調査の結果を踏まえた対策として、「一般廃棄物最終処分場の適正化について」(平成十年三月五日付け生衛発第三百五十五号厚生省生活衛生局水道環境部長通知)及び「一般廃棄物最終処分場の適正化に関する留意事項について」(平成十年三月五日付け衛環第八号厚生省生活衛生局水道環境部環境整備課長通知)により、これらの最終処分場について、市町村において廃棄物の搬入を停止すること又は搬入する廃棄物の種類を限定すること、周辺の地下水等の水質調査を実施すること等の措置を講ずること並びに水質調査の結果、地下水等の汚染が見られた場合には、鋼矢板の打ち込み等による汚染の拡散防止、不透水性の材料による埋立地の被覆、廃棄物の掘削及び撤去等の措置を検討し、実施する等の適切な対策を講ずることについて指導するよう都道府県に対し指示したところである。また、平成十年度第一次補正予算において、市町村が実施する水質調査や埋め立てた廃棄物から生じる汚水等の流出を防止するための事業に対する国庫補助に必要な経費として五百五十六億円を計上し、これらの最終処分場の適正化対策の推進を図ったところである。

一の6及び7について

 廃棄物の最終処分場のうち、お尋ねのような状況のものの数については、把握していない。
 御指摘の遮水シートの耐久性については、年数でお示しすることは困難であるが、平成十年六月の基準命令の改正により、基準命令第一条第一項第五号(第二条第一項第四号においてその例によることとする場合を含む。以下同じ。)のイ(1)において、保有水等の浸出を防止するために必要な遮水の効力、強度及び耐久力を有する遮水シートを敷設すること及び遮水シートの一部が破損した場合であっても浸出液の漏出による地下水等の汚染を防止できるよう、原則として二重の遮水構造(粘土層及び遮水シート、アスファルト・コンクリート及び遮水シート、又は二重の遮水シート)を有するものとすることを規定するとともに、同号のイ(3)において、遮水シートの保護のための具体的な措置として、日射により遮水層が劣化するおそれがある場合には当該遮水層の表面を遮光の効力がある不織布等で覆うことを規定したこと等により、新設の管理型最終処分場等については、少なくとも廃棄物処理法第九条第五項及び第十五条の二の四第三項の規定に基づいて当該最終処分場が廃止されるまでは、遮水工の遮水能力を確保できるものと考えている。
 また、遮水シートが破損した場合の地下水汚染の防止については、新設又は既設いずれの最終処分場においても、一の5についてで述べたとおり、基準命令において、地下水等の水質を定期的に検査すること及び水質の悪化が認められる場合にはその原因の調査その他の生活環境保全上必要な措置を講ずることとしている。
 遮水シートを補修する方法としては、当該破損箇所の埋立物を掘削して補修する方法、管を使って破損部分周辺に補修材を注入する方法、あらかじめ遮水シート等に封入された補修材がシートの破損時に流出、固化し破損部分が補修される方法等がある。また、地下水等の汚染の拡大を防止する方法として、鋼矢板の打ち込みによる鉛直遮水や、不透水性の材料による埋立地の被覆等の方法がある。

二について

 御指摘の厚生大臣の要請については、東京都三多摩地域広域処分組合(以下「三多摩広域処分組合」という。)による二ツ塚一般廃棄物最終処分場の整備事業に対する平成七年度の廃棄物処理施設整備費国庫補助金の交付決定を行うに当たり、三多摩広域処分組合が設置し管理運営を行っている日の出町谷戸沢廃棄物広域処分場についてかねてから汚水漏れや周辺地下水への影響の問題が指摘されていることを踏まえ、同処分場の汚水漏れの原因や周辺地下水への影響について再度調査を実施することを東京都を通じて三多摩広域処分組合に要請したものであり、これは当該調査の実施を二ツ塚一般廃棄物最終処分場に係る国庫補助金の交付決定の条件としたものではない。
 また、日の出町谷戸沢廃棄物広域処分場周辺の地下水調査等については、厚生省において、平成十年四月に東京都から三多摩広域処分組合が住民が参加する調査委員会の設置、分析専門機関による調査、結果の公表等の厚生大臣の要請におおむね応えた方法及び内容の調査を実施する予定である旨の報告を受けたところであり、その後この報告の内容に基づいて三多摩広域処分組合において地下水調査等が実施されているものと承知している。
 したがって、御指摘のような国庫補助金の交付決定の見直しを行う考えはない。

三について

 御指摘の最終処分場における焼却灰の飛散対策としては、廃棄物処理法施行令第三条第三号及び第六条第一項第三号に規定する廃棄物の埋立処分の基準並びに基準命令第一条第二項第一号及び第二条第二項に規定する最終処分場の維持管理の技術上の基準として、最終処分場の埋立地の外に廃棄物が飛散し、及び流出しないように必要な措置を講ずることを規定している。また、厚生省において平成八年六月に設置した「ごみ処理に係るダイオキシン類削減対策検討会」が平成九年一月に取りまとめた報告書において「最終処分場からの粉塵の飛散を防止するため、十分加湿した状態で搬入し、迅速な覆土を行うこと」等が提言されており、これを受けて、「ごみ処理におけるダイオキシン類の削減対策について」(平成九年一月二十八日付け衛環第二十一号厚生省生活衛生局水道環境部長通知)により市町村において最終処分場における飛散防止等を含むダイオキシン類排出削減対策が強力に推進されるよう都道府県に対して指示する等の措置を講じているところである。
 これらの措置によって、最終処分場からの焼却灰の飛散又は流出の防止の徹底が図られると考えており、現時点において焼却灰の飛散対策に関し新たに法規制を強化することは検討していない。