質問主意書

第144回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一二号

東京・武蔵府中税務署における修正申告書偽造事件に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十年十二月十四日

緒方 靖夫   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   東京・武蔵府中税務署における修正申告書偽造事件に関する質問主意書

 本年七月、八月に、相次いで二人の事業者の納税申告書の修正申告書が東京国税局管内の武蔵府中税務署員によって偽造され、提出されるという事件が発覚した。被害者は、シャッター工事業を営むO氏と建設業を営むM氏である。税務署長は修正申告書を偽造した事実を認め、東京国税局は当該税務署員を懲戒処分にした。
 私はこの問題を重視し、十一月五日当該税務署長と会い、申入れを行うとともに、国税庁に対しても、数度にわたる聞き取り調査を行ってきた。
 これは、税務署員が他人の印章と署名を偽造して追徴課税を行おうとしたもので、国民全体の奉仕者たる国家公務員の立場を根本から踏み外した非行であり、「調査内容を納税者が納得するように説明」するという「調査と指導の一体化」を定めた国税庁の「税務運営方針」にも反する行為である。法的には、刑法百六十七条の「私印偽造及び不正使用等の罪」(三年以下の懲役)に該当する可能性がある。さらに、過少申告加算税賦課決定通知書の交付も行っており、これには署長印も必要であり、刑法百五十八条の「偽造公文書行使等の罪」(一年以上十年以下の懲役)にも該当する可能性がある。
 税務行政をあずかる国家公務員がこのような行為を行うことは、極めて重大な問題である。しかも、修正申告書の偽造事件は今回が初めてではなく看過できない。
 よって、以下質問する。

一、この事件の発覚後、税務当局は、真相究明のためにどのような調査を行ったのか。その結果、把握した事件の具体的な経過を明らかにされたい。さらに、この事件の重大性についてどのような認識をしているのか。被害者への対応、内部処分をどのように行ったのか、明らかにされたい。

二、前記の行為は、いずれも明確に刑法をもって処せられる重大な犯罪行為である。それにもかかわらず、告発による厳正な措置をとらなかったのは何故か。

三、こうした修正申告書偽造は、これまでも全国各地で発覚してきた。この種の事件で、過去に把握している事件は何件にのぼり、どの税務署で起き、それぞれどのような事件であったのか、その事案ごとの概要を明らかにされたい。

四、なぜ、このような税務署員にあるまじき事件が起きたと考えているのか。また、その背景には納税者に修正申告書を強要するような税務行政が日常的に行われているという事実があるとの疑いを抱かざるを得ないが、日常の税務行政にそのようなことがないのかどうか、明確に説明されたい。

五、このような事態は、申告納税制度の基盤を自ら崩すものと言わざるを得ない。再発防止のためにどのような対策をとり、具体化しているのか、明確に説明されたい。

  右質問する。