質問主意書

第144回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一号

高齢者対応住宅問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十年十二月四日

但馬 久美   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   高齢者対応住宅問題に関する質問主意書

一、超長期耐用住宅(百年耐用)SI住宅について

 六五歳以上の高齢者人口は総務庁の「人口推計」によると、平成十年十一月一日現在二〇五八万人で総人口の十六・三%を占めているが、厚生省の「将来人口推計」では、平成二十七年には二五%を超え、四人に一人が間違いなく高齢者ということになると予想している。
 六五歳以上の者を含む世帯は、平成九年の国民生活基礎調査によると総世帯の三一・五%を占める。平成三十二年にはその割合が四割から五割になるだろうと予想されている。いわば高齢者がいる世帯は特殊な世帯でなく、特に住宅問題は高齢者対策を抜きにして成立しなくなってきている。
 東京都の調査によると、高齢期(五五歳以上)の定住志向は高く七六・二%もあり、さらに要介護時の対応でも四一・六%の方が自宅介護を要望されている(平成七年、八年調査)。これは、住み続ける事を第一義的に考慮して対策を講ずることが必要であることを示している。
 しかし高齢者は年金生活者が多く生活資金で精一杯で、建て替えやリフォームにまで対応できないのが現状である。そこで考えられることは、住み慣れている住まいの耐用年数を延ばすことであり、それができれば、高齢化が進行しても住み続けられることになる。
 最近鉄筋構造の超耐用型住宅で百年持つ技術が開発されたと言われており、これは「スケルトン・インフェル(SI)」と呼ばれている。

1 このスケルトン方式とは一体どういう技術なのか、具体的に示されたい。
2 このスケルトン方式と普通の鉄筋構造とを比較して、費用面でどれだけの違いがあるのか。
3 もし木造で百年持たせるとしたら、素材・費用・工法等どんなものがあるか。
4 建設省はこのスケルトン技術をどう取り扱っているのか。
5 さらに一〇〇年住宅プロジェクトが各省にまたがり設置されているが、どういうプロジェクトか。

二、福祉風呂(シルバー・バス)の設置について

 住宅・都市整備公団では、最近、公団の住宅団地において福祉施設を合築、併設、隣設する例が徐々に増えてきている。例えば「リバーシティ新川」は三五階建て五〇五戸の団地であるが、特養老人ホームや老人介護支援センターを合築で設置しており、施設の床面積は六五〇〇m2で一階から五階まで使用している。
 また「ニシキ平和台」では八階建て三三〇戸であり、床面積五六二m2の老人デイサービスセンターを隣設している。
 それぞれ施設の所有者と運営管理者は別であるが、住宅の近くに福祉施設が存在することが周辺の住民にとって非常に便利であり好評を博している。
 また近年、巡回風呂と称して巡回車の中に風呂を設置して、介護を要する高齢者の便宜をはかっている自治体が増えている。
 ところで現在住都公団での空き家は、賃貸住宅で全国で三〇五九戸(全体の〇・四%)もあると言われている。この空き家を利用して、デイサービスセンターのような重装備を伴わない簡易な福祉風呂の設置を望む声が出ている。

1 各戸では、要介護者の入浴は設備、費用、人手の面からなかなか困難で、せめて風呂だけでも福祉施設として設置されておれば、要介護者を抱える周辺住民に非常に喜ばれる。特に年数が経った既設団地では要介護者が増えてきているので、福祉風呂が要望されているところである。
 当然、条件整備は必要であると思うが、是非この福祉風呂の設置を実現させたい。
 建設省あるいは厚生省はこの点どのように考えるか。
 その際、新設あるいは既設の団地においては、どういう点をクリアしなければならないかも合わせてご提示頂きたい。
2 また、平成七年七月四日社会保障制度審議会が、総理大臣に対して「安心して暮らせる二一世紀の社会を目指して」と題して勧告している。
 その中で、住宅やまちづくりの分野は、高齢者・身障者等の住みやすさという点で諸外国から極めて立ち遅れているとして、在宅福祉を押し進めていこうという方向から高齢者や障害者の利便を考えて、安全かつ快適で、福祉用具を利用できる住環境を追求していく上で、手厚い公的助成は欠かせないとしている。
 政府はこうした勧告にどう答えていくか示されたい。

三、リバースモーゲージと保険制度について

 最近、マイホームを「年金化」してしまう逆住宅ローン、いわゆるリバースモーゲージに関心が集まっている。普通の住宅ローンは契約期間中に元利合計を分割返済して、最終的には負債をゼロにするので、フォワードモーゲージと言われるが、リバースモーゲージとは、それとは全く逆に、高齢者などが自宅を担保に自治体などから月々生活費を融資してもらい、最終的には自宅を処分して借金を一括返済する方法であり、東京都武蔵野市はじめ全国十五自治体で実施されていると言われている。
 このリバースモーゲージは収入がなくなった高齢者などが年金等の補完に利用しているが、例えば時価五〇〇〇万円以上の一戸建て所有者で、六五歳以上の高齢者という枠の限定があり、現在のところ一般の持ち家者には高嶺の花で、利用しにくくなっている。武蔵野市でも昭和五十六年の制度創設以来わずか二四件しか利用されていない。

1 地価下落などで持ち家の評価額が下がっているため、担保切れのリスクや、融資金融機関自体が倒産するなどのリスクが存在するので、一般化には難しい面もあると伺っているが、将来的にはもっと一般化すべきだと考えるがいかがか。
2 神戸市においても、震災復興対策として、昨年十二月に開始しているが、利用は被災高齢者に限定していることもあり、わずか三件でしかない。金利面など条件緩和や国の助成策が要請されるところであるがどうか。
3 米国では、リスクをカバーするため試験的に「HECM」という保険制度を導入して実験しているようだが、その保険制度とはどの様なものか。また我が国においても導入を検討しているのかどうか、お答え頂きたい。

  右質問する。