質問主意書

第143回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第五号

内閣参質一四三第五号

  平成十年十月六日

内閣総理大臣 小渕 恵三   


       参議院議長 斎藤 十朗殿

参議院議員福本潤一君提出環境汚染物質排出・移動登録制度(PRTR)に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員福本潤一君提出環境汚染物質排出・移動登録制度(PRTR)に関する質問に対する答弁書

1の(1)について

 御指摘の「環境汚染物質排出・移動登録制度」(以下「PRTR」という。)に係る法制度の検討に当たっては、広く関係者の合意形成を行う必要があるとの認識の下、これまでも、事業者、学者、消費者団体の役員等、様々な立場の委員から構成されている審議会での審議、国民からの意見の聴取等により合意形成を図ってきたところであるが、今後とも、広く関係者の合意形成を図ってまいりたい。

1の(2)について

 いずれの省庁の所管にするのかを含め、PRTRに係る法制度の在り方については、現在、関係省庁間で検討しているところである。

1の(3)について

 PRTRはできるだけ広範な事業所を対象とすることが重要であると考えているが、一方で、小規模事業所については、その負担能力、制度の費用対効果を考慮する必要があるため、どの程度の規模の事業所までを対象とするかについては、諸外国においても一定規模以上の事業所を対象としていることをも勘案しつつ、検討を進めているところである。なお、対象事業所以外からのPRTRの対象となる化学物質の排出量等については、行政が推計することにより把握することを考えている。また、化学物質を製造する事業所もPRTRの対象とすることを考えている。

1の(4)について

 いかなる化学物質をPRTRの対象とすべきかについては、現在、検討しているところである。

1の(5)及び(6)について

 PRTRの法制度化のためには、対象とすべき化学物質の選定に係る有害性の評価の基準、方法等の仕組みを定める必要があると考えているが、その仕組みについては、今後、関係省庁間で密接に連絡を取り合うなどして検討してまいりたい。
 また、PRTRの対象とすべき化学物質の選定に際して、いかなる者からいかなる方法によって意見を聴取するかについても、今後、関係省庁間で検討してまいりたい。

2の(1)について

 環境庁の行ったPRTRパイロット事業への参加事業者に対するアンケート調査の結果によれば、環境庁に報告した情報の中に企業秘密が含まれているとした事業者の回答は、五百六十六件中、五十九件であった。
 また、諸外国の千九百九十五年(平成七年)の実績について、現時点では米国及びカナダの実績について承知しているところ、米国においては、約七万三千件中、政府によって企業秘密が含まれていると認められたのは十三件、カナダにおいては、約千八百件中、政府によって企業秘密が含まれていると認められたのは八件であったと報告されている。

2の(2)について

 国民が個別事業所のPRTRに係る情報を入手できる方法及び専門家以外の者もPRTRに係る情報を容易に利用できる方法の検討が必要と考えている。

3について

 化学物質に係る事業者、国民等の関係者の共通の理解と協力を促進するため、関係者間の情報の交流と意見の交換を図るための手法の開発、化学物質に関する情報を提供するためのデータベースの整備等の支援が必要と考えている。

4について

 PRTRの対象となる化学物質の見直しを科学的知見の充実等に応じて適切に行うことができるような制度を検討してまいりたい。

5について

 大気汚染防止法、水質汚濁防止法等に基づく施策等環境の保全に関する効果的な施策の推進にPRTRの成果を活用することを検討することは重要と考えている。