質問主意書

第143回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第二号

内閣参質一四三第二号

  平成十年九月八日

内閣総理大臣 小渕 恵三   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員照屋寛徳君提出戦時遭難船舶犠牲者の洋上慰霊祭・遺族補償等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員照屋寛徳君提出戦時遭難船舶犠牲者の洋上慰霊祭・遺族補償等に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの二回目の洋上慰霊については、本年中に実施することとし、台風を避け、できるだけ天候の安定した波の穏やかな時期を選び、その規模については本年三月に実施した対馬丸沈没海域における洋上慰霊と同程度とすることを検討しているところであり、具体的な時期及び規模については、今後速やかに決定してまいりたい。

二について

 沈没艦船内の遺骨収集については、遺骨が人目にさらされていて遺骨の尊厳が損なわれるような特別な状況にあり、かつ、その沈没艦船内の遺骨収集が技術的にも可能な場合に限ってこれを行うこととしている。対馬丸については、水深約八百七十メートルの深海にあるため遺骨が人目にさらされておらず、遺骨収集を行う場合には当たらないと考えている。したがって、現在まで対馬丸の船体引揚げ及び遺骨収集の技術的な可能性について個別に精査したことはない。
 しかしながら、対馬丸については、その遭難が沖縄戦が目前に迫った時期に政府の軍事政策に協力するという形で学童疎開が行われた途中に生じたという特別の事情があり、また、昨年、沖縄開発庁長官から沈没位置確認についての要請が関係省庁に対してなされ、その正確な沈没地点が特定されたこと等の経緯にかんがみ、船体引揚げの技術的な可能性については、今後、沖縄開発庁において、各分野の専門家による調査検討を行うこととしている。

三について

 お尋ねの戦時遭難船舶遺族会の資料「沖縄関係戦時遭難船舶一覧表」に掲げられた戦時遭難船舶二十六隻のうち、対馬丸の沈没地点は、北緯二十九度三十一・九三分、東経百二十九度三十二・九〇分であり、その他の二十五隻の正確な沈没地点については、把握していない。

四について

 沈没艦船に係る洋上慰霊については、海域ごとにその海域で亡くなられた方々を対象としてこれを行ってきたところであるが、対馬丸については、その遭難が沖縄戦が目前に迫った時期に政府の軍事政策に協力するという形で学童疎開が行われた途中に生じたという特別の事情があり、また、二についてで述べたようにその正確な沈没地点が昨年特定されたこと等の経緯にかんがみ、その沈没地点において洋上慰霊を行ったところである。他の戦時遭難船舶については、既に過去に洋上慰霊の対象となったものもあると考えられるが、今後関係遺族の要望等を踏まえながら、海域ごとに行う方式による洋上慰霊の実施を検討してまいりたい。

五について

 戦傷病者戦没者遺族等援護法(昭和二十七年法律第百二十七号)は、国家補償の精神に基づき、国と雇用関係又は雇用類似の関係にあった軍人等が戦争公務により死亡又は障害の状態になった場合に、当該戦傷病者や戦没者遺族等に対し年金等を支給することを規定している。 沖縄戦においては、我が国で唯一民間人を巻き込んだ地上戦が行われ、その際、民間人が軍の要請により戦闘に参加したことから、これらの者は同法第二条第三項第二号の戦闘参加者として同法に基づく年金給付等(以下「年金給付等」という。)の対象とされているところであるが、御指摘の戦時遭難船舶犠牲者については、このような事情がないことから、年金給付等の支給対象とはされていないものである。
 また、対馬丸遭難学童遺族特別支出金の支給は、沖縄戦が目前に迫った時期に政府の軍事政策に協力するという形で対馬丸による学童疎開が行われ、その途中で遭難したという特別の事情を考慮して、このような特別な状況下で死亡した対馬丸遭難学童の遺族に対し、国として弔意を表す措置として支給しているものであるが、御指摘の戦時遭難船舶犠牲者については、対馬丸遭難学童を除き、特別支出金を支給すべき特別の事情はないものと考えている。