質問主意書

第143回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一〇号

地球温暖化問題と電力自由化に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十年十月十五日

福島 瑞穂   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   地球温暖化問題と電力自由化に関する質問主意書

 日本政府は今、地球温暖化問題に対応するため、実行力ある対策を求められている。地球環境に深刻な影響をおよぼす恐れのある気候変動に対しては、国際的な対応、とりわけ我が国を含む先進国の積極的な取り組みが必要である。一方で日本政府は電力自由化についても積極的な取り組みをすすめ、第一ステップとして大口需要家に対する部分自由化を決めている。しかしながら、地球温暖化対策と電力自由化という二つの課題を、どのように両立させ実現するかはきわめて重要な問題である。そこで、地球温暖化問題と電力自由化について以下質問する。

一、昨年の気候変動枠組条約第三回締約国会議(以下「京都会議」と略す。)では、温室効果ガス六種類の排出量を二〇〇八年から二〇一二年までに、先進国は平均で一九九〇年レベルから五・二%削減することで合意され、日本政府は六%削減を約束した。日本政府の地球温暖化対策は、この六%のうちエネルギー起源のCO2は0%(一九九〇年安定化)とし、その前提として「原子力発電所の二〇基増設計画」を掲げている。しかし、このような増設計画は、電力会社からも「実現困難」という声が上がっている。たとえば、電気事業審議会に出された新増設計画「二一基リスト」の中には、住民投票で立地計画に反対が決まった巻原発を筆頭に、中部電力の芦浜1号・2号、北陸電力の珠洲1号・2号、中国電力の上関など、いずれも原子力発電所の立地をめぐって、地域に強力な反対運動が存在している地点が入っている。日本政府はこのような地域住民の声を無視して強引に原子力発電所の新増設立地計画を推し進められると考えているのか。

二、今後、原子力発電所の立地はますます困難になることが考えられるが、二〇一〇年までに原子力発電所増設計画が達成されなかった場合の代替策は考えているか。

三、この原子力発電所の立地を含め、現在考慮されている地球温暖化対策が有効な成果を達成することができなければ、日本政府は排出権取引によって膨大な排出権を購入せざるを得なくなることが考えられる。排出権取引による購入量は、二〇一〇年でCO2換算で最大何トンになると考えて政策立案や外交交渉を進めているのか。

四、この排出権取引のためにどのくらいの原資が必要になると考え、どのような予算措置を考えているのか。

五、電力自由化の一環として電気事業法が改正され、独立発電事業者(IPP)が発電市場に参入してきたが、そのほぼすべてが化石燃料による発電である。日本政府は現在のIPPの場合、その発電燃料について石炭が何%、石油が何%、天然ガス何%、その他何%と把握しているか。

六、同様に新設された特定電気事業の発電燃料は、石炭何%、石油何%、天然ガス何%、その他何%と把握しているか。

七、このままでは発電市場に参入する大半の発電が化石燃料で行われることになると思われる。その場合に増えてしまう温室効果ガス排出量に対して、どのような対策を考えているのか。たとえば炭素税などを考えているか。

八、六月に出された電気事業審議会の中間報告では、電力自由化においては「環境に配慮する」と書かれているが、これは具体的には何を意味しているのか。

九、京都会議の結果を踏まえると、これからは石炭・石油依存のエネルギー供給構造ではやっていけない。にもかかわらず、新たに十数年ぶりに石油火力発電所の建設が認可されたり、石炭火力の大幅な新増設が計画されているのはなぜか。

十、京都会議のメッセージは、これからは、石炭・石油から、天然ガス、再生可能エネルギー(太陽、風力、地熱、バイオマスなど)、そして燃料電池などへと、徐々に燃料転換をしていかなければならないということであった。日本政府はこうした燃料転換を実現していくことが重要であると認識しているか。

十一、再生可能エネルギーは、日本ではまだ充分に普及しておらず、そのために発電コストも高い。ある程度普及が進めば、規模の大きさと地域的な広さから、発電量や電圧の安定性も確保でき、コストも下がることが考えられるが、普及促進のためには政策的な取り組みが不可欠である。これには、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーからの電力買取り義務づけ、およびその買取り価格を高く設定するという方法や、再生可能エネルギーによる一定割合の発電を発電事業者へ義務づけるという方法がある。日本政府はこれらの方法が、再生可能エネルギーの普及による燃料転換にとって重要と認識しているか。

十二、風力発電はコスト的にも商業ベースに達し、いま産業として大きく成長しつつある。ところが今年、電力会社による電力買取り計画が一七年という長期契約となったかわりに、電力買取り価格を約七割に減額され、経営的にきわめて苦しい状態を強いられるようになった。このような電力買取り価格の減額は、燃料転換をすすめる考え方に逆行しているのではないか。

十三、アメリカのPURPA(パーパ)法や、ドイツのフィード・イン・タリフ・ロー(再生可能エネルギー買い取り法)は、風力発電を爆発的に増やした。欧州諸国では、ほとんどの国が再生可能エネルギー買い取り法を定めている。日本政府が、再生可能エネルギーからの電力買い取りを法律によって義務化できないのはなぜか。

十四、日本でも電力自由化の方策が、電気事業審議会で審議されすすめられているが、その中では、再生可能エネルギーの普及策は論じられていない。電力自由化の中で、再生可能エネルギーの普及策を一緒にすすめなければ、石炭や石油などの化石燃料の独立電気事業が大きなシェアを占め、温室効果ガス排出は増大し、地球温暖化対策に逆行することになるが、審議の中でこの問題が抜け落ちているのはなぜか。

十五、EUでは「再生可能エネルギー戦略と行動計画に関する白書」で、二〇一〇年までにEU全体で再生可能エネルギーの全エネルギーに占める割合を一二%にするという政策を掲げている。アメリカでは同様に「総合電力競争計画」で二〇一〇年までに再生可能エネルギーを全発電量の五・五%にするという政策目標を示している。日本政府は「新エネルギー導入大綱」程度のささやかな目標にとどまっているが、なぜもっと野心的な政策目標を示せないのか。

十六、さらに最近では、アメリカのカリフォルニアやイギリス、オランダなどで、電力会社(電力自由化の中では発電会社)に対して、再生可能エネルギーを一定割合含むよう「発電義務」を課そうとしている。日本で既存の電力会社や卸電力事業者にこのような発電義務を課すことは可能か。

  右質問する。