質問主意書

第142回国会(常会)

答弁書


答弁書第三号

内閣参質一四二第三号

  平成十年三月十七日

内閣総理大臣 橋本 龍太郎   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員荒木清寛君提出無年金障害者の所得保障の確立等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員荒木清寛君提出無年金障害者の所得保障の確立等に関する質問に対する答弁書

一について

 障害者であって、障害基礎年金等の障害を支給事由とする公的年金(以下「障害年金」という。)の支給要件である障害の程度にあるにもかかわらず、障害年金の受給権を有しないもの(以下「無年金障害者」という。)の実態については、障害年金を受給していない障害者のそれぞれの障害の程度が公的年金制度で定める障害年金の支給要件である障害の程度にあるか否かを把握することが困難であること等から、その人数及び個々の無年金障害者が御指摘の五つの類型のどの理由によるかを把握することは困難である。
 なお、厚生省においては、無年金障害者の人数について、一定の前提の下に、十万人強程度と推計している。

二について

 御指摘の地方公共団体の独自の救済措置に関しては、無年金障害者等を対象として手当金等の支給を行っている地方公共団体があると承知しているが、その地方公共団体数、支給内容及び給付人数は把握していない。また、これらの措置は、当該地方公共団体の独自の判断で実施されているものと考えている。

三の1について

 国民年金制度においては、厚生年金保険等の被用者年金の被保険者等の被扶養配偶者(以下「被扶養配偶者」という。)及び学生は、当初、国民年金に任意加入することとされていたため、これらの者が障害の原因となった傷病の初診日において国民年金に加入していなかった場合は、障害年金が支給されなかったところである。この点については、従来の制度改正においても検討を加え、逐次改善が図られてきたところであり、被扶養配偶者については昭和六十一年度から、学生については平成三年度から、国民年金に強制的に加入することとされたことにより、保険料を滞納した場合を除き、障害の状態となった場合には障害基礎年金が支給されることとなったところである。また、平成六年においては、保険料を納付したにもかかわらず、被用者年金と国民年金の障害年金の支給要件の違い等のためにいずれの制度からも障害年金が支給されなかった者について、新たに障害基礎年金を支給するよう改正が行われたところである。

三の2、3及び4について

 国民年金制度等の次期財政再計算は平成十一年に予定されており、年金審議会においては、昨年五月から年金制度全般にわたる抜本的な見直しに向けた検討を行っている。無年金障害者の問題については、御指摘の附帯決議及び障害者プランを踏まえ、現在、年金審議会並びに身体障害者福祉審議会、中央児童福祉審議会障害福祉部会及び公衆衛生審議会精神保健福祉部会の合同企画分科会(以下「合同企画分科会」という。)において審議を行っているところである。年金審議会では本年九月ごろに意見書の取りまとめを予定しており、合同企画分科会では本年秋ごろまでに検討結果を取りまとめることを予定しているが、それまでの間に両者の検討の連携を図ってまいりたい。

四について

 無年金障害者の問題については、年金制度の在り方全体をにらみながら、年金制度の中で対応するか福祉的措置で対応するかを含め、幅広い観点からの検討が必要であるが、現在、次のような問題があると認識している。

1 年金制度において対応することについては、

(一) 年金制度は、制度に加入し、かつ、保険料の納付について一定の要件を満たしている者に対して障害等の保険事故が発生した場合に給付を行ういわゆる社会保険方式を採っており、保険料を納付しなかったために無年金障害者となった者に対し、保険料を納付した者と同様に給付を行うこととした場合には、保険料を納付した者との間の公平を阻害するとともに、加入者の保険料納付意欲を損ない、年金制度の存立基盤を危うくするおそれがあること
(二) 保険料を納付しなかったために公的年金の受給権を有しない者は、高齢者や遺族についても存在することから、これらの者との均衡を考慮した解決策を実施する必要があること

2 御指摘の福祉手当と同様・同等の手当の創設を含め福祉的措置において対応することについては、

(一) すべての無年金障害者を救済するため新たな手当を創設する場合には、年金制度において保険料を納付する意欲を阻害することとなること
(二) 巨額の財源確保が必要となること
 なお、障害の原因となった傷病の初診日が二十歳前にある者については、初診日において、国民年金に加入すべき年齢に達していないことから保険料を納付していないがその者が二十歳になれば国民年金に当然加入することが予定されている者であることから、二十歳になった時点で保険事故が発生したものとみなして障害基礎年金を支給することとしているものである。四の1において御指摘の者については、傷病の初診日において、将来当然に国民年金に加入することが予定されている者であるとはいえないことから、事情が異なると考えている。