質問主意書

第142回国会(常会)

質問主意書


質問第二九号

政府の非核政策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十年六月十八日

矢田部 理   
山口 哲夫   
栗原 君子   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   政府の非核政策に関する質問主意書

 インドとパキスタンの相次ぐ核実験によって、新たな核拡散と核戦争の危険性が増大している。政府はこれまで、各国の核実験に反対又は遺憾の意を表明してきたが、その立場や対応に一貫性が見られず、「二重基準」を用いているとも考えられる。これでは核廃絶への日本の立場と意思が国際社会からも国民からも信用を得られないと思われるので、政府に対し、以下質問する。

一、政府は、一九九五年には冷戦が終わっていたにもかかわらず、村山内閣における「新防衛計画大綱」において、「核兵器の脅威に対しては、…米国の核抑止力に依存する」と定めている。自らは核兵器に自国の安全を託しなら、「安全保障策としての核保有」という他国の主張には反対するというのは、矛盾であり、説得力がない。いかなる論理でこの立場が正当であると考えているのか。

二、冷戦が終わり、ソ連は消滅し、米・ロ間、日・ロ間にも友好・協力の時代が開かれている。日・中間にも、武力紛争の可能性や中国が日本に対して核攻撃をする可能性は考えられない。日本に対する「核の脅威」はどこに、どのようなものがあると考えているのか。「核の脅威」がないのであれば、「米国の核抑止力に依存する」必要性も根拠もないことになる。政府は「大綱」を見直し、米国の「核の傘」から離脱すべきだと考えるがどうか。

三、日本のほかに米国の核抑止力に依存している国はどこか。それらはどこの核の脅威に対する抑止力か。また依存していない国はどこか。具体的に示されたい。

四、日本は「非核三原則」を持ち、南北朝鮮は「朝鮮半島の非核化」で合意している。北半球、特に東北アジアにも非核地帯が創設されれば画期的な前進であると考える。政府は、さしあたり日本と南北朝鮮の三カ国による非核地帯をつくり、それを米国・ロシア・中国の核保有国に尊重させるという方針で取り組むべきだと考えるが、その意思があるか。あるとすればどのような考えや計画を持っているか。その意思がないとすれば、その理由、根拠は何か。

五、NPTは、核保有国が軍縮義務を果たす具体的な方法や期限などは明定していない。CTBTも、臨界前核実験やコンピュータ実験などの禁止規定がない。これでは核保有国の軍事的優位性だけが保たれ、核保有国はそれらの核実験を継続して、核兵器としての「信頼性」確保や新型核兵器の開発に利用している。政府は、米国やロシアをはじめ、すべての核保有国に対し、核廃絶を求め、当面大幅な核軍縮の実施とあらゆる種類の核実験停止を要求すべきではないか。政府の考えを示されたい。

  右質問する。