質問主意書

第142回国会(常会)

質問主意書


質問第一〇号

市民的及び政治的権利に関する国際規約第一選択議定書批准等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十年五月七日

本岡 昭次   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   市民的及び政治的権利に関する国際規約第一選択議定書批准等に関する質問主意書

 政府は右市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)第四〇条一(b)に基づく第四回報告の中で右選択議定書批准に関し、「…しかし締結に関し、特に司法権の独立を侵すおそれがないかとの点も含め我が国司法制度との関係等慎重に検討すべき問題がある」と述べ、又私が平成九年三月一四日参議院予算委員会総括質疑において行った右に関する質問に対して朝海和夫外務省国際社会協力部長は、「…この制度につきましては、B規約人権委員会での個人通報の実際の事例の分析などをして検討しました結果、 若干どうかと思う例もございまして、特に憲法の保障する司法権の独立など、司法制度などとの関連で問題点があるという指摘もある」と答弁しており、また当時の池田行彦外務大臣も「司法権の独立の関係でどうであろうかとか。例えば国内救済を尽くしていないのにB規約に基づく個人通報として受理されたというケースもあった」という内容の答弁を行っている。
 そこでこの様な政府の報告・答弁を踏まえて以下の点を質問する。

一 右答弁にある「若干どうかと思う例」とは具体的にどのようなケースを指すのか。事件番号、当事者名、相手国を明らかにされたい。又各ケース毎に問題点を端的に指摘されたい。

二 「国内救済を尽くしていないのにB規約に基づく個人通報として受理されたというケース」についても一と同様特定されたい。

三 我が国は既に国際司法裁判所の強制管轄権を認めており、同裁判所の判決は我が国に対して法的拘束力を有しているが、このことは「憲法の保障する司法権の独立」を侵すおそれがあるのかないのか。ないとすれば、国際人権規約(自由権)委員会の見解が勧告的効力しかないのに「司法権の独立を侵すおそれ」を問題とすることといかなる関係に立つのか。

四 「司法制度などとの関連で問題がある」との指摘もあるということだが、

1 「司法権の独立を侵すおそれ」以外にも問題があるという趣旨か。そうであるとすればどのような問題があるのか、具体的に指摘されたい。
2 そのような指摘は最高裁判所の見解でもあるのか。

五 国連の有する手続きには、直接個人からの申立を審査する手続きであって条約によらずに国連各機関の決議によるもの(例えば国連人権委員会の恣意的拘禁ワーキンググループによるもの、ユネスコによるもの等)が知られているが、これらの手続きによる個人通報とその結果出される国連諸機関の見解や勧告についても「司法権の独立を侵すおそれ」があると考えているのか、「司法制度等との関連で問題がある」と考えているのか。考えていないとすれば、国際人権規約(自由権)委員会の場合と異なるとする具体的理由を示されたい。

  右質問する。