質問主意書

第142回国会(常会)

質問主意書


質問第三号

無年金障害者の所得保障の確立等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十年三月九日

荒木 清寛   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   無年金障害者の所得保障の確立等に関する質問主意書

 重度の障害者にとって、障害年金は所得保障として不可欠のものである。しかし、制度上の条件、行政窓口の不徹底のため、全国に多数の無年金障害者が未だに存在している。
 無年金障害者となったケースは、

(1) サラリーマンの妻は、昭和六十一年四月以前は国民年金に任意加入とされていたことから、加入していなかった期間中に障害者となった場合
(2) 学生は、平成三年四月以前は国民年金に任意加入とされていたことから、加入していなかった期間中に障害者となった場合
(3) 海外在住の日本人は、昭和六十一年四月以前は適用除外とされていたことから、それ以前に海外で障害者となった場合
(4) 日本在住の外国人は、昭和五十七年一月以前は国籍要件が設けられていたことから適用除外とされていた。このため、昭和五十七年以前に障害の初診日がある場合
(5) 保険料を一定期間以上滞納していたことにより支給要件を満たさない場合

等があり、年金は支給されない。
 このうち、(1)から(4)は明らかに制度上の不備であり、特に(3)及び(4)については、加入したくても加入できないまま、制度の谷間に取り残されたケースである。
 この無年金障害者の救済問題は、昭和四十年代から提起されているが、厚生省は社会保険方式の根幹を揺るがすので障害年金は支給できないと繰り返すのみで、何ら救済策を示していない。
 皆年金制を採るわが国において、無年金障害者に対する所得保障の体制が確立されていないことは座視できない問題である。よって、以下質問する。

一 無年金障害者の実態について

1 救済措置を講ずるためには実態の把握が不可欠であるが、把握しているか。現在、無年金障害者はどの程度いるのか。前記のケース別に沿って明らかにされたい。
2 把握していない場合には、早急に調査を行うべきではないか。行わないとすれば、なぜ調査を行わないかの理由を示されたい。

二 地方公共団体の救済措置の実施状況について

1 地方公共団体で独自に救済措置を講じているところが数多くあるようであるが、その実施状況を把握しているか。把握していれば、その地方公共団体数、救済内容・給付人数を明らかにされたい。
2 この地方公共団体の独自の救済措置について、政府はどのように評価しているか。

三 所得保障策の検討状況について

1 すでに指摘したとおり、この問題については昭和四十年代から提起されている。政府は昭和四十年代以降、どのような検討を行ってきたのか。これまでの検討経過を明らかにされたい。
2 平成六年に「国民年金法等の一部を改正する法律案」が審議された際に、衆参両院の厚生委員会において、それぞれ、「無年金障害者の所得保障については、福祉的措置による対応を含め速やかに検討すること。」との附帯決議が付されている。また、平成七年十二月に障害者対策推進本部が策定した『障害者プラン』(ノーマライゼーション七か年戦略)においても、「障害無年金の問題について、年金制度の在り方全体をにらみながら、年金制度の中で対応するか福祉的措置で対応するかを含めて、幅広い観点から検討する。」と所得保障を検討課題として挙げている。附帯決議及び障害者プランに基づき、これまで具体的にどのような検討を行ってきたのか。また、今後どのような機関で、どのような検討を進める考えか。
3 また、平成九年十二月に厚生省が年金審議会に提出した「次期年金制度改正についての論点整理」においても、この問題は検討項目として挙げられている。さらに、同年同月の身体障害者福祉審議会・中央児童福祉審議会障害福祉部会・公衆衛生審議会精神保健福祉部会の合同企画分科会による「今後の障害保健福祉施策の在り方について(中間報告)」においても「障害年金の問題については、幅広い観点から検討すべきである。」としている。年金審議会及び三審議会合同企画分科会において、この問題について今後どのようなスケジュールで、どのような検討を行う考えか。また、同審議会・分科会間の連絡調整をどのように進める考えか。
4 無年金障害者の所得保障措置についての検討をいつまでに終了させる予定か。

四 無年金障害者の救済策について

1 障害基礎年金は国民年金に加入していない二十歳未満で障害者となった場合にも支給されている。これは、国民年金が社会保険であると同時に福祉的側面を持っていることの証左ではないか。これを更に拡大・発展させ、無年金障害者、なかんずく制度の谷間に置かれた前記の(3)及び(4)の者にも障害基礎年金を支給すべきではないか。
2 無年金障害者に対する救済措置が大きな問題となっている今日、無年金障害者に対する何らかの福祉的措置を可及的速やかに行うべきではないか。特に昭和六十一年四月以前に支給されていた福祉手当と同様・同等の手当を創設すべきではないか。

  右質問する。