質問主意書

第141回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第二号

内閣参質一四一第二号

  平成九年十二月十二日

内閣総理大臣 橋本 龍太郎   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員荒木清寛君提出PCBの処理対策等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員荒木清寛君提出PCBの処理対策等に関する質問に対する答弁書

一の1について

 御指摘のポリ塩化ビフェニル(以下「PCB」という。)について、事業者から通商産業省に提出された一部推定を含む報告によれば、昭和二十九年から昭和四十七年までの生産量は累計で約五万八千七百八十トン、昭和四十二年から昭和四十七年までの輸入量は累計で約五百九十トン、昭和二十九年から昭和四十七年までの国内消費量は累計で約五万四千トン及び昭和三十七年から昭和四十七年までの輸出量は累計で約五千三百二十トンと承知している。

一の2について

 お尋ねの現在使用中のPCBの量については、現在使用されているPCBを含む製品である電気機器の個別のPCB使用量が不明であるため、把握することは困難である。なお、PCBを含む電気機器のうち現在使用中のものの数については、関係省庁の調査によれば、高圧トランス及びコンデンサーが約二十五万台、低圧トランス及びコンデンサーが約十三万台、柱上トランスが約二百八十三万台等と承知している。

一の3について

 御指摘のPCBを含む主要製品のPCB含有割合については、関係省庁の調査により把握できた範囲においては、高圧トランスは平均総重量約三千百キログラムのものが約十一パーセント及び平均総重量三百から四百キログラム程度のものが二十から二十三パーセント程度、高圧コンデンサーは平均総重量(五十から九十五キログラム程度)の二十一から四十五パーセント程度、柱上トランスは平均総重量(百四十から百九十キログラム程度)の数から数十ppm、並びに感圧複写紙は総重量の約四パーセントである。

二の1及び2について

 廃PCB等の保管状況については、厚生省において、平成四年度に、各都道府県及び保健所を設置する市(以下「都道府県等」という。)を通じて、廃棄物とされた高圧トランスのうちPCBを使用したもの(以下「廃高圧トランス」という。)、廃棄物とされた高圧コンデンサーのうちPCBを使用したもの(以下「廃高圧コンデンサー」という。)、廃棄物とされた感圧複写紙のうちPCBを使用したもの(以下「廃感圧複写紙」という。)、廃PCB及びPCBを含む廃油等のPCBが含まれた各種廃棄物(以下「PCB廃棄物」という。)の保管状況に関する調査(以下「都道府県調査」という。)を行うとともに、財団法人電気絶縁物処理協会が管理する「PCB使用電器台帳」の登録の対象でないため都道府県調査の対象とならなかった旅客鉄道株式会社各社及び日本貨物鉄道株式会社(以下「JR各社」という。)、日本電信電話株式会社、電力会社各社並びに防衛庁(以下「大量保管者」という。)の保管する廃高圧トランス及び廃高圧コンデンサーの保管状況に関する調査(以下「厚生省調査」という。)を直接行った。
 これらの調査の結果、廃高圧トランス及び廃高圧コンデンサーについては、都道府県調査分として、一万六千三百二十九事業所において八万五千二十九台が、厚生省調査分として、四百二十二事業所において二万千九百六十九台が、廃棄物とされた低圧トランスのうちPCBを使用したもの(以下「廃低圧トランス」という。)及び廃棄物とされた低圧コンデンサーのうちPCBを使用したもの(以下「廃低圧コンデンサー」という。)については、九十九事業所において約二十三万台が、廃感圧複写紙については、五百三十四事業所において七百六十八トンが、廃PCB及びPCBを含む廃油については、百五十二事業所において五千三百三十四トンが、PCBを含む汚泥等については、六十六事業所において千百十二トンが、それぞれ全国で保管されていた。
 また、いずれの調査においても、受電電圧が六百ボルト以下の自家用電気工作物設置者は、廃高圧トランス及び廃高圧コンデンサーの保管状況に関する調査の対象には含まれていない。

二の3について

 平成八年度末における大量保管者のPCB廃棄物の保管量は、次のとおりである。

(一) JR各社のPCB廃棄物の保管量について、運輸省においてJR各社に照会したところ、廃高圧トランスが五千九百六十五台、廃低圧トランスが四百九十七台、廃棄物とされた計器用トランスのうちPCBを使用したものが千二百八十四台、廃高圧コンデンサーが三千百八十二台、廃低圧コンデンサーが八千二十九台、廃棄物とされた整流器のうちPCBを使用したものが五十二台、廃棄物とされた蛍光灯安定器のうちPCBを使用したもの(以下「廃蛍光灯安定器」という。)が二十四万八千三十二台、その他の廃棄物とされた機器のうちPCBを使用したものが三千四百八十六台及びPCBを含む廃油が八万四千三百四十四リットルであるとの回答があったところである。
(二) 日本電信電話株式会社のPCB廃棄物の保管量について、郵政省において同社に照会したところ、廃高圧トランス及び廃低圧トランスが百八十一台、廃高圧コンデンサー及び廃低圧コンデンサーが一万七千八百四十六台、廃蛍光灯安定器が三十二万五百六十七台、廃感圧複写紙が一万四千八百四十キログラム並びにPCBを含む廃油が約千二百リットルであるとの回答があったところである。
(三) 電力会社各社のPCB廃棄物の保管量について、通商産業省において電力会社各社に照会したところ、発電所、変電所及び受電設備用の廃高圧トランス及び廃高圧コンデンサーが一万六千三百七十八台並びに廃棄物とされた柱上トランスのうちPCBを使用したものが約百十九万六千台であるとの回答があったところである。
(四) 防衛庁のPCB廃棄物の保管量は、廃高圧トランス及び廃高圧コンデンサーが七百五十一台、廃低圧トランス及び廃低圧コンデンサー等が一万三千二百六十一台、廃感圧複写紙が一万千七百七十四キログラム、PCBを含む廃油が二千三百六十リットル及び二十五キログラム並びにPCBを含む汚泥が約百四トンである。

二の4について

 厚生省において、平成五年度に、都道府県等を通じて、都道府県調査においてPCB廃棄物について不明又は紛失と報告のあった事業所等を対象として、不明又は紛失の理由についての調査を行ったところ、不明又は紛失の理由は、それぞれの品目につき、回答した事業所等の数に対して、事務所の改築又は移転等によるものが、廃高圧トランス及び廃高圧コンデンサーで三十五パーセント、廃感圧複写紙で十一パーセント、売却又は業者の引取り等の際にPCBを使用した製品ではないと誤認されたことによるものが、廃高圧トランス及び廃高圧コンデンサーで十七パーセント、廃感圧複写紙で四十八パーセント、機器交換時に紛失したことによるものが廃高圧トランス及び廃高圧コンデンサーで九パーセント並びに理由が不明なものが、廃高圧トランス及び廃高圧コンデンサーで三十七パーセント、廃感圧複写紙で三十五パーセントであった。

二の5について

 厚生省において、二の1及び2についてで述べた都道府県調査及び厚生省調査の結果を踏まえ、PCB廃棄物の適正な保管について、大量保管者を含めた事業者等に対する指導を徹底するよう、平成五年度以降、都道府県等に対して指示を行っているところである。

三の1について

 鐘淵化学工業株式会社が昭和六十二年十一月から平成元年十二月までの間に、同社高砂工業所において液状廃PCBの高温熱分解処理を行った際の同工業所の排出ガス及び排水中のダイオキシン類及びPCBの濃度は、兵庫県が原則月一回の頻度で行った測定の結果によれば、いずれの物質についても定量限界未満であったと承知している。なお、同社が自主的に行った監視測定の結果においても、ダイオキシン類及びPCBのいずれの物質の濃度も定量限界未満であったと承知している。

三の2について

 お尋ねの点については、鐘淵化学工業株式会社高砂工業所の廃PCBの焼却施設が、地元住民との事前の調整の結果、同社が自ら保管する廃PCBのみを処分するものとして設置されたものであるためと承知している。

三の3について

 財団法人電気絶縁物処理協会は、PCB使用廃電気機器の処理施設の建設を行うため、昭和五十年頃を中心に全国三十九か所の建設候補地において、地元の住民及び地方自治体と処理施設建設についての同意を得るための交渉を積極的に行ったが、地元の住民又は地方自治体の同意が得られず、処理施設の建設を行うに至らなかった。その主な要因としては、昭和四十三年に発生したいわゆるカネミ油症事件等によりPCBの有害性が広く知られていたことから、地元の住民にPCB及び廃PCB処理施設に対する忌避感が強かったためと考えられる。

四の1及び2について

 財団法人電気絶縁物処理協会は、昭和五十一年二月以来、電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第三十八条第四項に規定する自家用電気工作物を設置する者のうち、大量保管者以外のものが使用し、又は保管しているPCBを含む電気機器について登録及び集計を行い、「PCB使用電器台帳」を作成しているところである。
 一方、大量保管者であるJR各社、日本電信電話株式会社、電力会社各社及び防衛庁が使用し、又は保管するPCBを含む電気機器については、これらの大量保管者が他の保管者と比較して管理能力が高く、かつ、それぞれの関係省庁の指導等により適切に管理を行うことから「PCB使用電器台帳」による登録及び集計を行う必要はないものと考えている。

四の3について

 通商産業省においては、PCBを含む電気機器を使用し又は保管している事業者に対し、その使用をやめて保管に切り替えた場合、又は保管場所を変更した場合には、通商産業局又は財団法人電気絶縁物処理協会に届出を行うよう指導をしており、これに基づいて事業者から届出が行われた場合には、その内容に基づいて「PCB使用電器台帳」に登録された事項の更新が行われているところである。

四の4について

 御指摘の廃PCBの保管の実態の公表については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号。以下「廃棄物処理法」という。)第十条第一項の規定に基づき自らの産業廃棄物の処理について責任を負っている個々の事業者が、その判断に基づき行うものと考えている。

五の1について

 生活環境審議会廃棄物処理部会廃棄物処理基準等専門委員会が平成九年十月に取りまとめた報告書においては、廃PCB及びPCBを含む廃油を分解することができる処理技術として、PCB中の塩素を水素や水酸基と置換してPCBを分解する脱塩素化処理及び高温かつ高圧時の水の特性を活かしてPCBを分解する超臨界水による酸化処理の二つの方法について、欧米において実用化されているとの評価が行われたところである。

五の2について

 五の1についてで述べた新しいPCB廃棄物の処理方法に要する費用については、現在のところ我が国において算定できる適切な資料が存在せず、把握していない。

五の3について

 御指摘のPCB廃棄物の新たな処理方法に係る特別管理産業廃棄物の処理の基準等を定めるため、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令等の一部を改正する政令(平成九年政令第三百五十三号)を制定し、当該処理の基準等に係る部分については、平成十年六月十七日から施行することとしたところである。

五の4について

 PCB廃棄物等の特別管理産業廃棄物については、廃棄物処理法の規定に基づき、排出した事業者が自ら処理するか、又は都道府県知事等の許可を受けた特別管理産業廃棄物処理業者にその処理を委託しなければならないこととされている。PCB廃棄物の処理施設については、それらの者が廃棄物処理法第十五条第一項の規定に基づき都道府県知事等から産業廃棄物処理施設の設置の許可を受けて設置するものであるが、その規模については特に基準を設けておらず、設置者が定めることができるものである。
 また、他者の排出したPCB廃棄物の処分を業として行うことは、廃棄物処理法第十四条の四第四項の規定に基づく特別管理産業廃棄物処分業の許可及び廃棄物処理法第十五条第一項の規定に基づく産業廃棄物処理施設の設置の許可を取得すれば可能である。

五の5について

 PCBを分解することにより処理を行う技術を用いた新たなPCB廃棄物処理施設については、従来の焼却により処理する施設に比べて、処理に伴って発生する排ガスが少ないこと等から、設置について住民の理解を得やすいものと考えており、五の3についてで述べた政令改正により処分の基準の見直し等を行うことで、設置が進むものと期待している。

五の6について

 お尋ねの可動式のPCB廃棄物の処理施設については、アメリカ合衆国、カナダ等の諸外国で実用化されている例を承知している。

六の1について

 PCBの輸出については、外国為替管理令及び輸出貿易管理令の一部を改正する政令(平成四年政令第二百九号)により、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(昭和四十八年法律第百十七号)第二条第二項に規定する第一種特定化学物質が外国為替及び外国貿易管理法(昭和二十四年法律第二百二十八号)第四十八条第三項の規定に基づく輸出の承認の対象とされたため、同項の規定に基づく輸出の承認が行われることとなったところである。当該改正が施行された平成四年七月一日以降において、当該輸出の承認により把握したPCBの輸出先は、試験研究用試薬として少量(数十グラム程度)が輸出されたモンゴル及びマレイシアの二国のみである。なお、PCBの輸出については、昭和四十七年に通商産業省において、事業者に対しその自粛を要請したところである。
 また、PCB含有物の輸出については、輸出された場合にその輸出先を把握することは困難であるが、昭和四十七年に通商産業省において、事業者に対しPCBを使用する機器の生産の自粛を要請したところである。

六の2について

 PCB廃棄物の処理等に係る技術移転等の援助については、現在のところ諸外国からの要請はないが、我が国としては、これまでもPCBを含む有害化学物質の分析に係る技術移転を実施してきたところであり、今後、PCB廃棄物の処理等に係る技術移転等の援助の要請があれば、対応について検討してまいりたい。