質問主意書

第141回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一五号

プルトニウム燃料加工の海外委託に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成九年十二月十二日

清水 澄子   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   プルトニウム燃料加工の海外委託に関する質問主意書

 平成九年六月十六日付け「プルトニウム利用に関する質問主意書」に対して、平成九年七月十八日付け「答弁書」(以下「答弁書」という。)が提出されたが、プルトニウム燃料(以下「MOX燃料」という。)加工の海外委託に関して、以下質問する。

一 「平和的利用等の保証」について

 「答弁書」によれば、核物質等が我が国から国外へ移転される場合には、政府は移転先国等における「平和的利用等の保証」を二国間の原子力協定(長期、包括的)及び個々の移転ごとの取極等により得るとし、今回のMOX燃料加工委託に関連するベルギーへの核物質の移転については、EC及びベルギーとの交換書簡の取極により「平和的利用等の保証」を得ているので、ベルギーとの原子力協定を締結する必要はないとしている。

1 「平和的利用等の保証」の具体的内容は何か。
2 東京電力株式会社(以下「東電」という。)のMOX燃料使用は、原子力利用長期計画に基づく継続的なものか。個別的、一時的なものか。
3 今回の東電のMOX燃料加工における「平和的利用等の保証」を、日本とベルギーとの二国間の原子力協定ではなく、欧州共同体委員会(以下「EC」という。)及びベルギーとの交換書簡の取極とした理由は何か。ベルギーと原子力協定を締結しない理由は何か。
4 国家間の約束である原子力協定と今回の交換書簡の取極では、「平和的利用等の保証」の効力の違いは何か。
5 原子力協定と今回の交換書簡の取極で、手続き及び効力・義務等で異なることは何か。
6 原子力協定にするのか、交換書簡の取極にするのかの基準は何か。また、それを決定する権限は誰にあるのか。
7 現在、政府が「平和的利用等の保証」を交換書簡により取極している国を挙げられたい。

二 ECとベルギーの保証について

1 「保障措置」の保証をEC、「核物質防護」の保証をベルギーとの交換書簡の取極に分けた理由は何か。
2 ECは「核物質防護」の保証をできないのか。また、ベルギーは「保障措置」の保証をできないのか。
3 ベルギーと原子力協定を締結したとしても、ECとの原子力協定の締結は必要なのか。
4 ECと原子力協定を締結した場合、ベルギーとの原子力協定の締結は必要ないか。
5 米国は欧州原子力共同体と原子力協定を締結している。我が国がECと原子力協定を締結する場合はEC、欧州原子力共同体のいずれと締結するのか。

三 交換書簡の取極内容について

 「答弁書」によれば、交換書簡の取極内容の根拠は、平成七年四月二十八日付けの東電と株式会社東芝(以下「東芝」という。)との間のプルトニウム及びウランの輸送を含む加工契約であるとのことである。また、当該加工契約の締結に関しては、承認、許可等の法的手続は必要とされていない。なお、通商産業省及び科学技術庁は、東電から当該加工契約の締結についてその前後に随時話を聞いている旨、今回のEC・ベルギーとの交換書簡に関しては、平成九年二月七日の閣議において閣議決定されている旨、更にベルギー交換書簡は、核物質防護措置をベルギー政府が約束するもので、日本政府はベルギーに対して何の義務を負うものではないから、国会の承認事項は含まれていない。国会承認の必要はない旨の答弁があった。

1 ベルギー交換書簡の取極で、プルトニウム二二一キログラムを一九九七年九月以前に、プルトニウム二六二キログラムを一九九八年七月以前に移転し、ウラン一五四四キログラムを一九九七年九月以前に、ウラン一五四四キログラムを一九九八年七月以前に移転するとされている。

(1)移転期限を超えた場合には、どうなるのか。
(2)この約束は、ベルギーに対してプルトニウム、ウランを一九九七年九月、九八年七月以前に移転する義務を負うものなのか。

2 ベルギー交換書簡の取極には「MOX加工された燃料は、一度仏国を経由して日本に返還される。」とある。このことは、日・ベルギー原子力協定がないことによるものと思われるがどうか。他に理由があるのか。
3 EC交換書簡の取極には「ベルギーから仏国へのMOX燃料移転に際しては、一ケ月前に文書により日本政府に通告する。」ことになっている。

(1)これはECから日本政府に通告されるのか。
(2)仏国からベルギー及びベルギー国内の移転については何も触れていない。仏国からベルギー及びベルギー国内の核物質移転については、日本政府に何の連絡もないのか。あるとすれば、それぞれどこから、何に基づいて連絡されるのか。

4 以上の国家間の約束を公式の書類及び届出等なしに閣議決定し、また、書簡の交換を行うことに問題はないのか。

四 プルトニウムの輸送について

1 今回のMOX燃料加工に伴うプルトニウムの移転について、日仏原子力協定に基づき仏国から一九九六年六月に移転の同意を求めてきたとのことであるが、同意した年月日はいつか。
2 プルトニウム約二二〇キログラムの移転は一九九七年五月に完了しているとのことであるが、輸送年月日はいつか。また、何に基づいて、いつ、どのようにして承知したのか。
3 プルトニウムの輸送にあたり米国の承認が必要なのか。必要ないとすればその理由を示されたい。必要ならば米国の承認を得たのか。得たとすればいつ得たのか。
4 プルトニウムの輸送手段は、空輸、列車、トラック等何か。
5 プルトニウム輸送における防護体制を確認しているのか。
6 プルトニウムの輸送手段、防護体制等は、誰からの連絡により、いつ、どのようにして承知したのか。
7 プルトニウムの輸送を認めたということは、MOX燃料の製造も認めたということか。

五 MOX燃料加工委託に関する契約について

 日本、仏国、ベルギーの事業者間の委託契約内容を承知しているか。承知しているとすれば、いつ、どのようにして承知したのか。また、その内容は何か。

六 MOX燃料製造について

1 MOX燃料の設計は東芝が行っている。関係省庁は、MOX燃料設計書及び仕様を入手しているのか。入手しているとすれば、何に基づいていつ入手したのか。
2 MOX燃料の安全基準はあるのか。
3 東電は、MOX燃料加工のために仏国より劣化ウランを購入している。

(1)この事実を承知しているか。
(2)承知しているとすれば、何に基づいて承知したのか。購入量は何キログラムか。

4 製造されるMOX燃料の富化度については、何に基づいていつ承知したのか。
5 製造されるMOX燃料が装荷される原子炉と装荷される年月日について承知しているのか。承知しているとすれば、何に基づいていつ承知したのか。

  右質問する。