質問主意書

第141回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一二号

新聞販売労働者・新聞奨学生の労働に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成九年十二月十日

吉 川 春 子   


       参議院議長 斎 藤 十 朗 殿


   新聞販売労働者・新聞奨学生の労働に関する質問主意書

一、新聞販売労働者の労働実態
 我が国の日刊新聞は発行社約一〇〇社、発行部数で七二〇五万部(平成七年一〇月現在)に達し、普及率は一〇〇〇人当たり五七八部にのぼり、発行部数、普及率ともに世界第一位を誇っている。日本の新聞発行部数がこのような莫大な数字まで伸びた要因は、我が国特有の制度である戸別配達制度と、拡材といわれる物品を使っての激しい部数拡張競争にあると言っていい。そしてこの戸別配達制度も、過酷な部数拡張も、すべてそれを担っているのが、全国で四八万人を超すといわれる新聞販売労働者である。
 この新聞販売労働者は、発行本社から部数拡張のノルマを課せられ、極めて劣悪な労働環境におかれている。すなわち午前二時半起床、広告の折り込みから始まり朝刊の配達が終わるのが六時半。シャワーを浴びて朝食をとって仮眠、午後一時半からは拡張・集金業務、夕方四時頃からの夕刊配達、夕食後から深夜に及ぶ集金業務と、一日の実労働時間は一〇時間を超え、拘束時間は一五、六時間にもなっている。「まとまった睡眠時間がほしい。」というのは彼らの切実な要求である。しかも現場から賃金の遅配・欠配、罰金の強制、休日労働の常態化、時間外割増賃金の不払い、有給休暇をとらせない、などの労働基準法違反、健康診断を実施しないなどの労働安全衛生法違反など、前近代的とも言える労働実態を訴えられている。交通労働災害による新聞販売労働者の年間死亡者数は全産業六五二人のうち六五人とその一割を占め、とくに二輪車乗車中の災害は四〇人中三五人を占めていることからも過酷な労働であることが明らかである。

二、新聞奨学生の労働実態

 新聞販売労働者四八万人のうち、五%を占めている新聞奨学生の労働・生活実態は専業販売労働者に比べても劣悪である。
 ほとんどの大手新聞社は各社ごとに奨学制度をもうけ、毎年奨学生の募集をしている。新聞奨学生は、発行新聞社の系列販売店で稼働することを条件に、奨学資金が貸与され、「働きながら学ぶ」ことを基本とし、奨学生の募集パンフレットには、学業と仕事の両立が可能なように、労働時間の表示から奨学生がする仕事内容、給与の表示までなされている。
 しかし、各社の奨学生募集パンフレットに表示された労働条件がそのまま守られていることはほとんどない。即ち新聞奨学生も専業の労働と同様、朝三時頃からの朝刊配達、夕方四時からの夕刊配達に加え、深夜に及ぶ集金業務、そのほか古紙回収、部数拡張等の業務を課せられている。その上奨学生は日中学校に通うことが前提である分、その労働と生活は専業の新聞販売労働者にくらべても過酷である。また、休日出勤の常態化、給与の遅配・欠配、健康診断を実施しないなどの労働基準法違反・労働安全衛生法違反の実態も専業労働者と同様である。新聞奨学生は、奨学生をやめると奨学資金を一括返済しなければならないため、奨学生をやめたくてもやめられない。このような状況で、学業放棄においやられる学生が発生している。
 一九八七年に、東京新聞販売労働組合が新聞奨学生を対象に行ったアンケート調査によると、回答を寄せた奨学生の一ヶ月の平均労働時間が二二八時間に及んでおり、「配達時間、集金時間を減らしてほしい。」との声が多く寄せられている。また一九九六年一一月に実施した「新聞配達員・奨学生一一〇番」では、三時間の間に合計二五件の相談が寄せられた。奨学生の相談にはまず、「セールスは任意という条件だったのに、毎日やらされている。」、「パンフレットでは朝四時出勤のはずが、実際には二時半に出勤させられている。」、「パンフでは四週六休のはずが実際にはひと月で四日も休めない。」など、募集パンフレットの労働条件違反、「新聞の不着で罰金五〇〇円、客からのクレーム一回で二万円の罰金を取られる」、「寝坊したといっては給与支払いを遅らせる。」、「有休を取らせてくれない。」など明白な労働基準法違反、「夕刊を配ると予備校に行けない。」、「学校に行けずに進級が難しくなった。」、「奨学生をやめたいが一括返済義務があるのでやめられない。」など、仕事のために学業を放棄せざるを得なかったり、一括返済義務に縛られて奨学生をやめるにやめられない、などの奨学生の苦悩の声が寄せられている。
 以上の実態をふまえて、以下質問する。

一、新聞販売労働者の労働条件について

1 労働省は一九九三年~九四年にかけて新聞販売店について監督を行ったと聞くが、その結果を明らかにせよ。
2 新聞販売労働者についても今年四月から週四〇時間制が適用されている。従来から新聞販売店ではその業務の特殊性から一ヶ月単位の変形労働時間制がとられてきた。しかしその内容は極めてずさんで、始業終業、休憩時間などは形式的に定められているにすぎず、慢性的な超過労働が行われているのが実態である。産業の重要性に鑑み全国的な調査をすべきであると思うがどうか。
3 新聞販売労働者の交通災害対策を特別に強化すべきであると思うがどうか。
4 販売労働者の過酷な労働条件の背景には発行本社の部数拡張販売政策があり、発行本社の政策改善なくしては販売労働者の労働条件の改善はあり得ない。政府は発行本社ならびに業界団体に対し強力な指導を行う必要があると思うがどうか。

二、新聞奨学生について

1 新聞奨学生に対し奨学資金を貸与する条件として、新聞各社は系列販売店で稼働することを条件としている。新聞販売店をやめることになれば、奨学資金の一括返済を迫られる。このような新聞奨学生制度は、労働基準法で禁止された前借金契約の疑いが強いので、一定期間返済を猶予する、あるいは長期の分割返済とするなどの是正指導をすべきと思うがどうか。
2 新聞奨学生は、新聞委託の育英会と奨学生契約を結び各販売店で労務を提供するが育英会で示される勤務条件と販売店での実際の労働条件が異なり、かつどちらが有効な内容かがあいまいになっているなど、労働契約の当事者及び内容が明確ではないところに問題がある。奨学生としての契約と労働契約について明確になるよう指導すべきと思うがどうか。
3 新聞奨学生は過酷な労働条件のもと、やめたくてもやめられず、健康を害していく場合もあり、中には読売育英奨学生が平成二年一二月に過労で死亡した事例のように、奨学生の本来の目的である学業の成就が阻害されている実態は、関係官庁で相協力して改善されるべきだと思うが、関係する官庁及び改善の取り組みについて明らかにされたい。新聞奨学生の労働条件は早急に改善されるべきである。この点についての政府の見解を問う。
4 新聞発行本社はそれぞれ奨学制度を設け、奨学生募集パンフレットで具体的に労働時間、仕事内容、給与等の労働条件を提示している。しかし、実態はほとんどこの労働条件が守られていない。この実態は新聞各社が自覚しているところである。奨学生は新聞社の社会的信用にもとづいて、奨学生に応募するのであり、このような奨学生の労働条件違反は新聞社の責任である。政府はこのような実態に照らし、発行新聞社各社に対し、新聞奨学生の制度改善を強く指導すべきであると思うが、政府の見解を問う。

  右質問する。