質問主意書

第141回国会(臨時会)

質問主意書


質問第四号

日本学術会議における学術研究団体の登録制度の在り方に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成九年十月二十四日

山口 哲夫   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   日本学術会議における学術研究団体の登録制度の在り方に関する質問主意書

 平成九年七月二十二日に、日本学術会議の第十七期がスタートした。しかし、日本学術会議会員の選出手続において重要な位置を占める学術研究団体の登録申請に対する審査の在り方について、疑念を抱かせる事例が見受けられるので、以下、学術研究団体の登録制度の在り方等について、質問する。

一、日本学術会議への学術研究団体の登録要件及び登録申請に対する審査基準はどのようになっているか。

二、日本学術会議法第十八条第二項は「登録を申請する場合には、…その目的とする学術研究の領域と関連する研究の領域の研究連絡委員会(規則で定めるものに限る。以下同じ。)を届け出なければならない。」と定めているが、これは、いかなる趣旨で設けられた規定であるのか。

三、日本学術会議が定める学術研究団体の登録審査基準は、日本学術会議法第十八条及び同法の規定に基づき定められた日本学術会議規則に適合すべきはもちろんのこと、日本国憲法第二十三条で保障された「学問研究活動の自由」などの基本的人権保障の諸条項に反するものであってはならず、また、学術研究団体の登録審査基準の適用に当たっても同様な考え方が堅持されなければならないと思うが、これらの点について、政府の所見を伺いたい。

四、「学術研究団体の登録審査基準」(平成八年一月十一日、日本学術会議会員推薦管理会第十七期第二回総会決定)の13「届出のあった関連研究連絡委員会が、申請団体の目的とする学術研究の領域と関連する研究の研究連絡委員会であること。関連が希薄なものは関連研究連絡委員会としては認めない。」は、どういう趣旨で定められたものと政府は理解しているか。また、結果的に、学術研究団体としての登録が拒否される事由となる「関連希薄なもの」とは、どの程度の希薄性を要件としているのか(換言すれば、どの程度の関連性を有しておれば関連希薄とされないで済むか)について、政府はどのような認識を持っているか。「関連希薄なもの」の程度・内容を、数値、形容詞あるいは具体例などで、国民に分かりやすく説明をいただきたい。

五、前記「学術研究団体の登録審査基準」の13に示された関連希薄要件の判断や適用が恣意的に行われると、学術研究団体として登録されるべき内容を備えた団体が登録を拒否される事態が発生するおそれがある。このような事態の発生は、日本学術会議の設立趣旨に反するばかりか、日本国憲法第二十三条が定める「学問研究活動の自由」の実質的保障に抵触することとなる。したがって、申請団体の目的とする学術研究の領域と申請団体から届出のあった研究連絡委員会との「関連希薄性」の判断に当たって恣意的要素が入らないようにする必要があり、そのためには、「学術研究団体の登録審査基準」に関連希薄要件を入れた趣旨を明らかにし、かつ、関連希薄要件の表現を具体的かつ明瞭なものにする必要がある。また、申請団体及びその構成員の「学問研究活動の自由」を制限することとなる「関連希薄性」の判断に当たっては、慎重かつ実質的な審査を行うべきであり、その上で「一見明白に関連性がない」場合にのみ「関連希薄要件」の適用を行うべきであると考えるが、以上の考え方に対して、政府はいかなる所見をお持ちか伺いたい。

六、システム監査学会(代表者・宮川公男)から、平成八年五月二十一日付けで日本学術会議会員推薦管理会(以下、会員推薦管理会という)に第十七期学術研究団体の登録についての申請書が提出されたが、同登録申請に対する審査の経過(審査の会議日・回数、審査機関の構成者名、当日の出席者名、審査の方法を含む)及びその内容並びに審査の結果はどうであったか、また、システム監査学会の異議の申出に対する再審査の経過(再審査の会議日・回数、再審査機関の構成者名、当日の出席者名、再審査の方法を含む)及びその内容並びに再審査の結果はどうであったかについて、日本学術会議に照会し調査した上で、回答をいただきたい。なお、システム監査学会から提出された登録申請の内容(添付書類を含む)は、前記「学術研究団体の登録審査基準」の1から12まで、すなわち「科学者により構成されている団体であること」「学術研究の向上発達を図ることを目的とする団体であること」「名称、目的、事務所、構成員の資格及び代表者について定めがあること」「学術研究の向上発達を図るための活動が引き続き三年を超えて行われていること」「規則で定める数以上の科学者が構成員であること」「構成員による学術研究の発表又は討論のための集会を年一回以上開催していること」「学術研究論文の発表のための刊行物とは学術定期刊行物、すなわちその団体の研究活動の成果を内容とする定期刊行物を指す。この定期刊行物を年一回以上刊行していること」「運営及び活動に係る方針を決定する総会又はこれに準するものを年一回以上開催していること」「構成員の資格を、特定の大学、学術研究機関その他の団体に所属し、又は所属していたことがある者に限っていないこと」などの要件を全て満たしていたと思われるが、この点についても確認をいただきたい。

七、日本学術会議の学術研究団体への登録が認められなかった申請団体は、異議の申出をすることができる手続になっている(学術研究団体の登録に関する規則第十三条)。そして、異議の申出に対する審査に当たって、会員推薦管理会は、日本学術会議の運営審議会又は当該学術研究団体の関連する部の意見を聴くものとされてはいるものの、不登録を決定した同じ会員推薦管理会の同じメンバーにより再審査の決定が行われる仕組みとなっており、また、異議の申出を行った学術研究団体に対する聴聞制度も十分確立されておらず、不登録に対する再審査制度(不服申立制度)としては極めて不完全であり不備であると言わざるを得ない。そこで、不登録に対する異議申出の審査に当たっては、弁護士などの法曹資格者を加え、また、異議の申出を行った団体に対する聴聞制度を確立するなど、学術研究団体の登録に関する異議申出制度の大幅な改善が必要と思うが、政府の認識はどうか。

八、今後、新しい分野についての学問研究や学際的研究がますます盛んになってくると思われる。また、そうでなければ我が国の学術研究の発展は望めない。ところが、新分野の学問研究や学際的研究を行う学術研究団体が目的とする「学術研究の領域」と、日本学術会議会員の推薦に係る研究連絡委員会の指定等に関する規則に定める「研究連絡委員会」との関連性が問われると、既存の学問体系や分類に立った研究領域とは「関連希薄」として、学術研究団体としての登録を一方的に拒否されるという事態が今後頻繁に発生することが予測される。そこで、既存の学術研究団体だけでなく新分野の学問研究や学際的研究を行う学術研究団体も加わった、名実ともに科学者の代表機関としての「日本学術会議」にするためには、日本学術会議の登録団体になるために届出が必要な研究連絡委員会との関連性及び研究連絡委員会制度について、その運用の在り方も含めて検討を加える時期にきているように思われるが、政府の認識はどうか。

九、現代社会においてコンピュータ及び通信を中核とする情報システムは不可欠の存在であり、企業にとって極めて重要な経営基盤となっている。このことは、政府及び地方公共団体等の行政運営においても同様である。しかも、情報システムの構築・運用には巨額の投資を要する一方、その脆弱性については、常に指摘されているところであり、いったん事故や災害に遭遇すると、社会的重大問題となり、企業経営、行政運営や国民生活に多大な損失を及ぼすこととなる。昭和五十九年の世田谷ケーブル火災事故、平成七年一月の阪神大震災や本年八月の東京証券取引所のシステムダウンによる社会的影響は、我々の記憶に新しいところである。「システム監査」は、そのような特性を持つ情報システムのセキュリティ(安全かつ適正な利用)と、それに対する投資の有効性等を確保することを目的に行われるものであるが、このような「システム監査」の重要性について、政府は、どのような認識を持っているか。

  右質問する。