質問主意書

第140回国会(常会)

答弁書


答弁書第一六号

内閣参質一四〇第一六号

  平成九年九月九日

内閣総理大臣 橋本 龍太郎   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員加藤修一君提出ゴミ焼却処分に伴うダイオキシン類の発生防止対策等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員加藤修一君提出ゴミ焼却処分に伴うダイオキシン類の発生防止対策等に関する質問に対する答弁書

一の1の(1)について

 御指摘の厚生省が都道府県に対して求めた報告のうち、平成七年十二月に行ったもの(以下「第一回調査」という。)は、市町村(一部事務組合を含む。以下同じ。)の設置する千八百五十四か所(平成六年三月末現在。当時稼働中でないものを含む。)の一般廃棄物の焼却施設(以下「ごみ焼却施設」という。)を対象とし、平成二年十二月に厚生省が策定した「ダイオキシン類発生防止等ガイドライン」(以下「旧ガイドライン」という。)の実施状況及び排ガス中のダイオキシン類(ポリ塩化ジベンゾフラン及びポリ塩化ジベンゾーパラージオキシンの混合物をいう。以下同じ。)の濃度の測定の実施状況を把握するため、焼却炉の型式、処理能力等ごみ焼却施設の概要、処理実績、集じん器等の設備の状況、旧ガイドラインに示された方法による維持管理の実施状況並びに排ガス中のダイオキシン類の濃度の測定の実績の有無及び実績がある場合におけるその結果について報告を求めたものである。
 平成八年に厚生省が都道府県に対して求めた報告(以下「第二回調査」という。)においては、第一回調査の対象とした市町村の設置するごみ焼却施設を対象に、旧ガイドラインの実施状況及びごみ焼却施設ごとのダイオキシン類の排出実態を把握するとともに、ダイオキシン類の削減対策を検討し、これを実施する上での基礎資料を収集するため、第一回調査の調査項目に加え、すべての施設について排ガス中のダイオキシン類の濃度を測定した上で報告を求めたものである。

一の1の(2)について

 本年四月十一日に厚生省が公表した「ごみ焼却施設排ガス中のダイオキシン類濃度について」においては、二回の調査により得られた市町村の設置するごみ焼却施設におけるダイオキシン類の排出実態に関する情報をできる限り速やかに国民に提供するという観点から、同年三月末までに同省に報告されたごみ焼却施設について、排出ガス中のダイオキシン類濃度の測定結果並びにごみ焼却施設の焼却炉の型式、処理能力、集じん器の種類及び使用開始年月を取りまとめて公表したところであるが、その他の調査項目については、報告の内容について精査に時間を要しており、現時点においては公表する予定はない。

一の1の(3)について

 御指摘の飛灰中のダイオキシン類濃度についての調査は、飛灰にダイオキシン類がどの程度の濃度で含まれるかについての科学的知見を得るために行ったものであり、本年一月二十日現在で当該濃度について報告のあった四百八十七施設における測定結果については、本年一月に策定した「ごみ処理に係るダイオキシン類発生防止等ガイドライン」(以下「新ガイドライン」という。)において、濃度度数分布の形で全体的な状況を既に公表していることから、現時点においては個別のごみ焼却施設ごとの測定結果を公表する予定はない。
 廃棄物焼却の過程において発生する飛灰については、ごみ焼却施設の集じん設備により回収され、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号。以下「廃棄物処理法」という。)第六条の二第三項等の関係法令の規定に基づいて、管理型処分場において埋立処分することとされており、大気中に直接排出されるものではない。このため、第二回調査においては、排出ガス中のダイオキシン類濃度の測定については必須としたが、飛灰中のダイオキシン類濃度の測定については科学的知見を得るためのものとして任意としたものである。

一の2の(1)について

 第二回調査における市町村の厚生省に対する報告の状況については、お尋ねの本年六月十七日現在の状況は集計していないが、本年五月末現在で、全国の稼働中のごみ焼却施設千六百四十一施設のうち、本年四月十一日の公表分千百五十施設も含め、千四百九十六施設から報告があったところである。また、本年六月以降も測定結果の出た市町村から順次報告を受けているところである。

一の2の(2)について

 ダイオキシン類を測定する手順については、都道府県に第二回調査を依頼した「ごみ焼却施設からのダイオキシン類排出実態等総点検調査の実施について」(平成八年七月十二日衛環第二百十四号厚生省生活衛生局水道環境部環境整備課長通知)において、原則として同通知別添の「廃棄物処理におけるダイオキシン類測定分析マニュアル」に示す方法に基づき、年間の平均的な運転状況に近い条件の日を選定して試料を採取し、測定を行うこととしたところであるが、ダイオキシン類濃度測定の手順、試料採取の場所、試料の数等の測定方法については、焼却施設の規模、処理能力等の違いによる差異は設けていない。また、一回の測定に当たっては、一つの試料で測定が可能である。

一の2の(3)について

 ダイオキシン類の測定に関し、各地方公共団体の負担する費用については、把握していない。また、測定費用については、焼却施設の処理能力による相違はないと承知している。
 なお、厚生省において、ダイオキシン類の測定を行う機関(以下「測定機関」という。)に照会したところ、試料を採取するための旅費を除き、一試料当たり平均で七十万円程度との回答があったところである。

一の2の(4)について

 厚生省において、第二回調査における測定に要した日数を、測定機関に照会したところ、試料を採取してから測定結果が判明するまで、平均で三十五日程度を必要とするとの回答があったところである。

一の2の(5)について

 市町村が行うごみ焼却施設から排出されるダイオキシン類の測定については、現在のところ国の助成金制度はない。また、現在のところ、資金面で援助を行う予定はない。

一の2の(6)について

 ダイオキシン類の測定には精密な機材及び高度な専門技術を必要とするため、短期間に測定機関の数が増加したとは承知しておらず、第二回調査に対する報告が遅れているのは、依然として、調査の対象施設の数に比べて測定機関の数が限られている状況に変わりはないことによるものと考える。

一の3の(1)について

 厚生省においては、第二回調査の実施に当たり、都道府県を通じて市町村に対し、適正な測定を実施するよう指導してきたところであるが、御指摘のような事実が判明した場合には、都道府県を通じて事実関係を確認するとともに、当該市町村に対して再度測定を求める等適切な措置を講じてきたところである。

一の3の(2)について

 ごみ焼却施設の排出ガス中のダイオキシン類濃度の測定結果の住民への情報提供については、当該ごみ焼却施設の設置主体である市町村が行うべきものであり、厚生省においては、都道府県を通じて市町村に対し、測定結果を公表するよう指導するとともに、同省に報告された測定結果について公表に努めてきたところであり、今後とも、情報公開に努めてまいりたい。

一の4の(1)について

 本年八月二十九日に公布された廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令の一部を改正する政令(平成九年政令第二百六十九号。以下「廃掃法施行令改正政令」という。)及び廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則の一部を改正する省令(平成九年厚生省令第六十五号。以下「廃掃法施行規則改正省令」という。)により、現在稼働中のごみ焼却施設については、廃掃法施行令改正政令の施行後一年以内に排出ガス中のダイオキシン類濃度を一立方メートル当たり八十ナノグラム以下に適合させ、廃掃法施行令改正政令の施行後五年以内に、排出ガス中のダイオキシン類濃度をごみ焼却施設の規模に応じて一立方メートル当たり一ナノグラム、五ナノグラム又は十ナノグラム以下に適合させなければならないこととしたところである。これらの基準に適合しない施設については、廃棄物処理法第九条の二、第九条の三及び第十五条の三の規定に基づき、改善命令、使用の停止等の措置が行われることとなる。

一の4の(2)について

 ダイオキシン類については、大気汚染防止法施行令の一部を改正する政令(平成九年政令第二百七十号)により大気汚染防止法(昭和四十三年法律第九十七号)附則第九項に規定する指定物質に追加し、指定物質排出施設として廃棄物焼却炉等を指定するとともに、これらの施設に係る指定物質の排出又は飛散の抑制に関する基準(以下「指定物質抑制基準」という。)を平成九年環境庁告示第二十六号及び平成九年環境庁告示第二十七号により定めたところである。
 大気汚染防止法附則第九項に規定する指定物質については、同項に基づき環境庁長官が指定物質抑制基準を定め、同法附則第十項及び第十一項の規定により、都道府県知事(大気汚染防止法施行令(昭和四十三年政令第三百二十九号)第十三条に定める市の長を含む。)が、指定物質排出施設を設置している者に対し、指定物質抑制基準を勘案して必要な勧告及び報告を求めることができることとされており、これらの規定の適切な運用により、当該指定物質の排出抑制の実効性を確保することとしている。
 また、これに併せ、廃棄物焼却施設からのダイオキシン類の排出抑制については、廃掃法施行規則改正省令においてダイオキシン類に係る指定物質抑制基準に適合するように廃棄物焼却施設の維持管理の技術上の基準を定めたところであり、当該基準に適合しない施設については、一の4の(1)についてで述べた措置が行われることにより、実効性が確保されるところである。

一の4の(3)について

 御指摘のごみ処理に係るダイオキシン類の生成及び排出抑制対策については、「ごみ処理に係るダイオキシン類発生防止対策等の推進について」(平成二年十二月二十六日衛環第二百六十号厚生省生活衛生局水道環境部長通知)により、旧ガイドラインを示し、都道府県を通じて市町村を指導したところである。
 また、「ごみ処理に係るダイオキシン類の緊急削減対策について」(平成八年十月三日衛環第二百六十一号厚生省生活衛生局水道環境部長通知)により、排出ガス中のダイオキシン類の濃度が一立方メートル当たり八十ナノグラムを超えるごみ焼却施設について、当該施設の休廃止を含めた緊急対策を示し、都道府県を通じて市町村を指導したところである。さらに、「ごみ処理に係るダイオキシン類の削減対策について」(平成九年一月二十八日衛環第二十一号厚生省生活衛生局水道環境部長通知)により、新ガイドラインを示し、現在のごみ焼却に係る技術水準にかんがみ達成可能とされる排出ガス中のダイオキシン類の濃度の最低値を、ごみ焼却施設の種類に応じて設定するとともに、その値を達成するための具体的な対策を示して、都道府県を通じて市町村の当該対策の実施を指導しているところである。

一の1の(1)について

 排水及び環境水中のダイオキシン類の測定手法については、環境庁が設置したダイオキシン排出抑制対策検討会の平成九年度の「ダイオキシン排出抑制対策検討会報告」に標準的な手法が示されている。また、土壌中のダイオキシン類の測定手法についてもこの報告の中に測定手法の例が示されている。焼却灰中のダイオキシン類の測定手法については、平成八年度に厚生省が作成した「廃棄物処理におけるダイオキシン類標準測定分析マニュアル」に標準的な手法が示されている。
 農薬中のダイオキシン類の測定手法については、平成四年度に環境庁が作成した手法が一般的に用いられていると考えている。
 発生源からの距離及び統計的手法については、統一したものはない。

二の1の(2)について

 土壌中のダイオキシン類の測定手法については、現在、環境庁が設置した土壌汚染調査法等検討会において、採取及び分析の方法に関し検討が行われており、本年内を目途に検討結果が取りまとめられる予定である。
 また、発生源からの距離及び統計的手法については、個別の調査の目的に応じてそれぞれ的確な手法が用いられるべきであり、現在のところ統一的な手法の検討は予定していない。

二の1の(3)について

 環境庁が実施している「環境大気中のダイオキシン類モニタリング調査」では、標準となる試料を各測定機関に配布し、各測定機関において当該試料を並行して測定し、比較することにより、分析精度の管理を図っているところである。
 環境庁で行っているこの他の環境モニタリング調査並びに厚生省の第一回調査及び第二回調査においては、これまでのところ、このような方法によるクロスチェックは行っていないが、今後、ダイオキシン類に関する環境モニタリング調査等においては、クロスチェックを行う等精度管理を充実させていきたいと考えている。

二の2について

 ダイオキシン類の測定に係る技術者の育成のためのプログラム及び研修制度については、これまでのところ実施していないが、正確な測定を行うためには、測定技術者の育成は重要な課題であると認識している。ダイオキシン類の分析には、ダイオキシン類の毒性にかんがみ他の分析施設と分離した施設の確保が必要であることから、研修を行うことができる施設の確保等実施上困難な点があるが、今後、測定技術者の育成のための具体的方策について検討してまいりたい。

二の3の(1)について

 現在行われているダイオキシン類の測定及び分析には精密な機材及び高度な専門技術が必要であり、また、採取された試料からダイオキシン類を抽出するには長時間を要することから、国民一般が簡便にダイオキシン類を測定することは困難であるが、環境モニタリングを効率的かつ効果的に行っていくため、より簡便な測定及び分析方法の検討も必要であると考えている。

二の3の(2)及び(3)について

 ダイオキシン類にはそれぞれ毒性が異なる多くの異性体があるため、ダイオキシン類の測定及び分析には精密な機材及び高度な専門技術が必要であり、また、採取された試料からダイオキシン類を抽出するには長時間を要することから、ダイオキシン類の測定及び分析方法を簡便化することについては現時点では技術的に困難な点があり、その具体的方策については今後の研究課題であると考えている。

二の4の(1)について

 家庭用焼却炉及び小型焼却炉の使用に伴うダイオキシン類の生成及び排出について、環境庁、厚生省又は文部省が調査を行った実績はない。

二の4の(2)について

 文部省においては、学校におけるごみの分別収集、資源ごみのリサイクルによるごみの減量化等の取組を推進することを目的として「「学校におけるごみ処理等の状況調査」の実施について」(平成九年五月十三日文部省大臣官房文教施設部指導課長通知)により、全国の公立の小学校、中学校、高等学校及び特殊教育諸学校を対象にごみの処理方法の実態について調査を行ったところである。当該調査においては、ダイオキシン類の排出濃度の測定は行っていない。

二の4の(3)及び(5)について

 御指摘の研究者の報告については、環境庁が設置したダイオキシン排出抑制対策検討会においても議論の対象となったところであるが、現状では、小型焼却炉によるダイオキシン類の発生及び排出の実態について十分な科学的知見が得られていない。今後、小型焼却炉についてダイオキシン類の発生及び排出の実態に関する調査を行った上で、必要な対策を検討してまいりたい。

二の4の(4)について

 公立学校の小型焼却炉によるダイオキシン類の排出の実態及び児童への影響については、現在明確にされていない。
 文部省においては、「学校におけるごみ処理等について」(平成九年七月二十三日文部省大臣官房文教施設部指導課長及び体育局学校健康教育課長通知)により、学校におけるごみの処理に関し、ごみの減量化を一層促進することや可能な限り校内における焼却処理の抑制又は廃止に努めること等の適切な処理を図るよう地方公共団体等に対して指導したところであるが、今後とも関係省庁と連携して、適切に対応してまいりたい。

二の4の(6)について

 生活環境審議会廃棄物処理部会廃棄物処理基準等専門委員会においては、廃棄物の焼却施設から排出されるダイオキシン類の削減対策に関し、廃棄物の焼却施設の構造及び維持管理の基準の強化、当該基準が適用される廃棄物の焼却施設の範囲の見直し、焼却に係る廃棄物の処分の基準の強化並びにばいじん等の適正な処理方策について検討が行われ、本年七月に報告が行われたところである。

二の5の(1)について

 阪神・淡路大震災による倒壊家屋から生じた廃材等が、屋外で焼却設備を用いないで焼却(以下「野焼き」という。)されたことによるダイオキシン類の生成及び排出の実態については把握していないが、環境庁が平成七年二月から三月にかけて調査を実施し、その結果を取りまとめた「阪神・淡路大震災に伴う第二次大気環境モニタリング調査等の結果について」において、ダイオキシン類を始めとする有害物質の大気中の濃度について、「直ちに健康影響が問題になるレベルではない」が、「環境への影響が認められないとは言えない」とされたことから、厚生省においては、関係府県に対し、廃材等については焼却施設を用いて焼却する旨を指導するよう指示したところである。
 また、所沢市の産業廃棄物の焼却施設におけるダイオキシン類の生成及び排出の実態については、厚生省においてはこれを把握していないが、埼玉県が平成八年十一月に実施した産業廃棄物の焼却施設が集中している同県川越市、所沢市、狭山市及び三芳町の境界周辺地域のダイオキシン類の環境調査の結果によると、「現時点で、人の健康に影響を及ぼしている可能性は小さいと考えられる」とされているところで
ある。

二の5の(2)について

 産業廃棄物の野焼きに伴うダイオキシン類の生成及び排出の実態については、把握していない。また、これらについて調査を行った事例についても承知していない。
 廃棄物の燃焼条件に応じたダイオキシン類の生成及び排出の実態については、現在、調査研究を行う等により知見の集積に努めているところである。また、廃棄物の野焼きについては、廃棄物処理法第六条の二第二項、第十二条第一項及び第十四条第八項並びに廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(昭和四十六年政令第三百号。以下「廃掃法施行令」という。)第三条第二号イ及び第六条第一項第二号イの規定により、廃棄物を焼却する場合には焼却設備を用いて焼却することとされているが、焼却設備の要件が明確でなかったため、廃掃法施行規則改正省令において、廃棄物を焼却する場合に用いる焼却設備の構造を明確化する等所要の措置を講じたところである。今後、その施行に併せて、都道府県等に対し、野焼きに対する監視及び指導の一層の徹底を図るよう指導してまいりたい。
 また、御指摘の産業廃棄物の不法投棄の実態調査については、都道府県等を通じ、平成五年度から平成七年度までの三年間の産業廃棄物の不法投棄の状況について調査を実施したものであるが、この調査によると、平成七年度における不法投棄の件数及び量は、それぞれ六百七十九件及び四十四・四万トンとなっている。厚生省としては、この調査結果を踏まえ、都道府県等に対し、不法投棄の防止のための監視及び指導の体制を強化するよう指導したところである。

二の5の(3)について

 廃棄物処理法第十四条第一項若しくは第四項又は第十四条の四第一項若しくは第四項の許可を受けた者(以下「産業廃棄物処理業者」という。)による野焼きの実態については、個別の事案に応じて都道府県等において調査を行っており、都道府県等の報告によれば、平成六年一月一日から本年六月三十日までの間に野焼きを行ったとして産業廃棄物処理業の許可の取消し又は営業停止の行政処分が行われた件数は、七件であった。当該産業廃棄物処理業者が処理していた廃棄物の種類は、木くず等であり、処理能力及び種類ごとの処理量については承知していない。
 また、廃棄物処理法第十四条第一項若しくは第四項又は第十四条の四第一項若しくは第四項の許可を受けないで産業廃棄物を処理している業者の実態は十分には把握していないが、平成七年にこれらの規定の違反により百三十四事業者が検挙されたと承知している。なお、このうち野焼きを行った者の数は不明である。
 産業廃棄物の野焼きの規制については、二の5の(2)についてで述べたとおり、廃掃法施行令改正政令等を制定し、焼却に係る産業廃棄物の処分の基準を強化したところである。今後は、都道府県等においてこの基準に従って個別の事案に応じて実地に調査を行うこと等により必要な指導を行うこととし、都道府県等に対して野焼きの状況について報告を求めることを検討している。

二の5の(4)について

 廃棄物処理法第十二条第一項及び第十四条第八項において、事業者及び産業廃棄物処理業者は、産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分を行う場合には産業廃棄物の収集、運搬及び処分の基準に従わなければならないとされている。焼却に係る産業廃棄物の処分の基準については、廃掃法施行令第六条第一項第二号において、産業廃棄物を焼却する場合には焼却設備を用いて焼却することとされている。本基準については、廃掃法施行令改正政令において、産業廃棄物を焼却する場合には厚生省令で定める構造を有する焼却設備を用いて、厚生大臣が定める方法により焼却することとされ、この新たな基準は本年十二月一日より施行することとされている。また、これに併せて廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(昭和四十六年厚生省令第三十五号)に第一条の五を設け、焼却設備の構造について、空気取入口及び煙突の先端以外に焼却設備内と外気とが接することなくごみを焼却できるものであること並びに燃焼に必要な量の空気の通風が行われるものであることを規定したところである。
 野焼きは、焼却に係る産業廃棄物の処分の基準に適合しない処分であり、都道府県知事等は、廃棄物処理法第十九条の三の規定に基づき、当該処分を行った者に対し、期限を定めて、処分の方法の変更その他必要な措置を講ずべきことを命ずることができることとされ、同条の規定による命令に違反した者については同法第二十六条の規定に基づき、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処することとされている。また、この規定については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法律(平成九年法律第八十五号)において、罰金の額を三百万円以下に引き上げる改正が行われ、この改正は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内で政令で定める日から施行することとされたところである。
 都道府県等においては、個別の事案に応じて、これらの規定に基づき対処するとともに、必要な指導を行っているところであり、厚生省としては、一連の制度改正を踏まえ、今後とも都道府県等に対し適切に指導を行ってまいりたい。

三の1の(1)について

 御指摘の廃棄物の再生利用及び減量化に関する取組として、厚生省においては、廃棄物再生利用施設の整備事業に対する国庫補助を実施しているところであり、平成八年度においては予算額は百七十六億四千九百万円、国庫補助により新規に着工した廃棄物再生利用施設の実績は四十七施設であり、本年度の予算額は二百二十億三千六百万円である。通商産業省においては、民間能力活用特定施設緊急整備費補助金(平成八年度予算十三億円)において、民間事業者が設置するリサイクル施設整備事業に対する国庫補助を実施しているところである。さらに、本年度からは、新規事業として地域におけるゼロ・エミッション構想推進のための環境調和型まちづくりのモデル事業を支援するエコタウン事業(平成九年度予算五億二千万円)を創設したところである。
 また、厚生省においては、都道府県及び市町村における廃棄物の再生利用及び減量化に関する普及啓発事業に対する国庫補助を実施しているところであり、平成八年度においては予算額は十七億千八百万円、国庫補助により四十五都道府県及び三百四十七市町村が当該事業を実施し、本年度の予算額は十五億二千四百万円である。通商産業省においては、民間団体が行う廃棄物等処理再資源化のための普及啓発及び情報提供事業に対する国庫補助等を実施しているところであり、平成八年度においては予算額は一億千九百万円、国庫補助により二団体が同事業を行い、本年度の予算額は一億二千三百万円である。
 さらに、厚生省においては、毎年ごみ減量化推進全国大会を開催することにより、廃棄物の再生利用及び減量化に関する知識の普及啓発、情報交換等を行っているところであり、平成八年度においては予算額は千五百万円、当該大会の参加者は千二百人であり、本年度の予算額は千六百万円である。

三の1の(2)及び(3)について

 塩化ビニル類も含め、焼却されるごみに含まれる物質の種類と当該ごみの焼却によるダイオキシン類の発生との因果関係が現在のところ明らかではない。このため、ダイオキシン類の発生を抑制する観点からは、分別収集により特定の種類のごみを焼却しないこととするよりも、ごみ焼却施設において完全燃焼させる等の対策を徹底することがより有効かつ適切と考えており、現時点ではこの観点からの分別収集の検討には至っていない。
 分別収集一般に関するこれまでの政府の取組としては、分別収集の手引の作成及び市町村に対する配布、廃棄物再生利用施設の整備事業に対する国庫補助等を実施してきたところである。また、本年四月より一部の容器包装について容器包装に係る分別収集及び再商品化促進等に関する法律(平成七年法律第百十二号)に基づく分別収集が開始されているところであり、今後、紙製及びプラスチック製の容器包装については、同法に基づく分別収集の対象となる範囲を拡大することを予定している。

三の2の(1)について

 厚生省は、御指摘のような企業の全国一覧は有していない。
 市町村が溶融固化処理を行う施設を整備するに当たっての支援方策として、厚生省においては、当該施設を整備しようとする市町村が必要な情報を得るための便宜となるよう、本年五月に全国の溶融固化処理を行う施設の設置状況について都道府県に情報を提供したところである。

三の2の(2)について

 溶融固化処理を行う施設の整備に当たっての課題については、市町村から溶融固化処理を行う施設の建設及び維持管理に多額の費用を要することが指摘されていると承知している。

三の2の(3)について

 厚生省においては、溶融固化処理を行う施設の整備に関する情報は、都道府県を通じて市町村に提供していることから、当該情報を市町村に提供する手段としてホームページに掲載することは可能ではあるが、その必要があるとは考えていない。

三の3の(1)について

 御指摘の市町村がごみ焼却施設の設備を改良する期間中のごみ処理に関する市町村間の協力については、厚生省生活衛生局水道環境部が本年六月二十四日に開催した全国都道府県廃棄物処理担当主管課長会議において、市町村がごみ焼却施設の休廃止を行う際の近隣市町村へのごみ処理の委託について都道府県が市町村間の調整を図るなど必要な技術的援助を与えるように指導したところである。

三の3の(2)について

 ごみ焼却に関し市町村間で協力を行われた事例については、山梨県小菅・丹波山衛生組合がごみ焼却施設を本年四月から休止した際、大月都留広域事務組合にごみ処理を委託した例、兵庫県宍粟郡広域行政事務組合がごみ焼却施設を本年四月から休止した際、揖龍保健衛生施設事務組合にごみ処理を委託した例、及び神奈川県清川村がごみ焼却施設を本年五月から休止した際、厚木市にごみ処理を委託した例がある。

三の3の(3)について

 地方公共団体から厚生省に対し、ごみ焼却に係る市町村間の協力体制に関する照会がなされた具体例は現在のところないが、厚生省としては、本年六月に、焼却施設の休止中又は廃止後のごみ処理の他市町村への委託の事例を公表することにより情報提供を行ったところである。

四の1の(1)及び(2)について

 子宮内膜症そのものの調査は行っていないが、子宮内膜症の患者数の推移については、厚生省が実施する患者調査において、調査日を指定し、調査対象医療施設を抽出して入院患者及び外来患者の疾病を調査しており、この調査の結果から推計した子宮内膜症の患者数は、次の表のとおりである。
 なお、昭和四十五年以前については、子宮内膜症を含む疾病分類の患者数から当該疾病の患者数を抽出することができる資料を保存していないため不明である。

図 表 1/3

図 表 2/3

図 表 3/3

四の1の(3)について

 お尋ねのダイオキシン類の生成量は把握が困難であることから、その生成量の推移については承知していない。

四の1の(4)について

 四の1の(3)についてで述べたとおり、過去のダイオキシン類の生成量の推移について把握していないことから、両方のデータを比較することにより相関関係及び因果関係を考察することはできない。

四の1の(5)及び(6)について

 一般的に疫学研究の手法には、御指摘の患者対照研究(ケース・コントロール・スタディ)のほか、コホート研究等様々な手法が用いられているが、どのような手法が妥当であるかは、当該研究の目的、対象疾患及び調査要因の特徴、対象集団の協力等の条件により異なるため、一概に判断できない。
 御指摘のダイオキシン類による健康被害については、国民の健康影響を未然に防止する上で極めて重要な課題であると認識しており、関係省庁が連携して、ダイオキシン類による環境、人等の汚染状況の把握、健康影響の評価に関する調査研究等を積極的に推進してまいりたい。
 調査研究に当たっては、因果関係を正しく評価するために、適切な手法を選定するとともに、さらに、調査地域及び対象者の選定、暴露情報の収集等適切かつ有効な調査方法を採ることが極めて重要と考えており、専門家の意見等を踏まえて検討してまいりたい。

四の2の(1)について

 ダイオキシン類による人体影響調査については、お尋ねの本年六月十七日現在、その調査方法について、環境庁、厚生省及び労働省の三省庁による検討が進められていたところである。
 その後、環境庁及び厚生省が共同で、労働省及び農林水産省の協力を得て、専門家から構成される「ダイオキシン類総合調査検討会」を設置し、ダイオキシン類による環境、人等の汚染状況の把握及び健康影響の評価に関する調査研究について総合的に検討を進めることとし、近日中にその第一回会合が開催される予定である。

四の2の(2)について

 御指摘の研究者による調査対象のごみ焼却施設の従事者の毛髪から一般住民より高い濃度のダイオキシン類が検出された旨の研究報告は承知している。ごみ焼却施設の従事者についてダイオキシン類を原因とする健康障害が発生したという事実は承知しておらず、また現時点までに御指摘の実地調査は実施していないが、今後関係機関からの情報収集を行い、作業環境等について調査等を実施してまいりたい。

四の2の(3)について

 お尋ねの職員数については、厚生省が実施する一般廃棄物処理実態調査によれば、平成六年度末において、ごみの収集運搬に従事する者の数は、十一万二千八百三十九人であり、廃棄物を処理する施設のうち市町村が設置するごみの破砕施設、ごみ焼却施設等のごみの中間処理施設の職員数は一万三千五百二十四人、市町村が設置する一般廃棄物の最終処分場の職員数は千八百七十人である。その他の民間のごみ焼却施設、産業廃棄物処理施設等の職員数については、承知していない。
 また、廃棄物を処理する施設の職員を対象としてダイオキシン類の暴露状況を調査した研究報告は、承知していない。

四の2の(4)について

 ごみ焼却施設及び産業廃棄物処理施設で作業に従事する労働者へのダイオキシン類の健康影響については、作業環境等の調査等を行い、その結果を踏まえて検討してまいりたい。
 また、これ以外のダイオキシン類による人の汚染状況等に関する調査についても、その対象地域や対象者について今後専門家の意見等も踏まえながら検討してまいりたい。

四の2の(5)について

 御指摘の資料は、新ガイドラインの検討過程における参考資料の一つとして、財団法人廃棄物研究財団の会員である複数の民間企業が平成八年七月から八月までの間に、環境庁の作成した「環境大気中のダイオキシン類測定分析技術指針」に従った測定方法により実施した測定事例の提供を受けて厚生省において取りまとめたものである。

四の3の(1)について

 御指摘の「内分泌かく乱化学物質問題」(以下「エンドクリン問題」という。)は、ダイオキシン類等の化学物質が、生物の体内に取り込まれて正常な内分泌を阻害し、生殖や発育等に影響を及ぼす可能性に関する問題であり、生物の基本的な機能に関わる重要な問題と認識している。

四の3の(2)について

 環境庁においては、従来から内分泌かく乱化学物質を含む化学物質の環境中の残留状況についての環境モニタリング調査を行ってきたが、平成八年度に専門家からなる研究班を設置し、約五百万円の予算措置を行い、環境保全の観点から我が国におけるエンドクリン問題の状況及び今後の課題等について調査検討を行い、本年七月、中間報告書を取りまとめたところである。また、平成九年度には、約四千万円の予算措置を行い、国立環境研究所において「環境中の「ホルモン様化学物質」の生殖・発生影響に関する研究」を実施している。
 厚生省においては、エンドクリン問題の検討を進めるため、平成八年度に約三百万円の予算措置を行い、専門家からなる研究班を設置し、化学物質による内分泌かく乱に関する基礎資料を得るための調査を行ったところであり、平成九年度はその成果を基に、約一千万円の予算措置を行い、人における内分泌かく乱に関する研究、内分泌かく乱化学物質を検出するための試験法の研究等を実施することとしている。
 通商産業省においては、平成八年度において、約九百万円の予算措置を行い、エンドクリン問題に関する諸外国の取組状況等の情報収集、因果関係の解析等の技術的課題の検討、今後の対応策についての調査を実施し、その中間報告書を本年五月に取りまとめたほか、約八千万円の予算措置を行い、化学物質の内分泌かく乱作用の有無を判断するためのスクリーニング手法の研究を開始した。
 以上の研究には、ダイオキシン類の内分泌影響に関する調査及び検討が含まれている。
 なお、農林水産省及び労働省においては、これまで、エンドクリン問題の研究について予算措置を行っていない。

四の3の(3)について

 エンドクリン問題に関しては、米国及び欧州において、実験動物による研究、野生動物への影響の実態調査、人の健康影響に関する疫学調査等幅広い研究が進められており、科学的知見が集積されつつあると認識している。我が国においても、化学物質による健康影響等を未然に防止するとの観点から、経済協力開発機構(OECD)等の国際機関や化学物質の安全性に関する政府間フォーラム(IFCS)等の政府間の会議においてエンドクリン問題に関する情報交換等を行っており、今後とも、各国との連携を図りつつ、調査研究を実施してまいりたい。

五の1の(1)について

 厚生省においては、これまで審議会の議事録等の公開、主要施策の記者発表等国民への行政情報の提供に積極的に取り組むとともに、国民からの個別の照会についても、各省庁文書課長等により構成される情報公開に関する連絡会議の平成三年十二月一日付け申し合わせ「行政情報の公開基準について」等に基づき、対応してきたところである。

五の1の(2)について

 厚生省のホームページにおけるダイオキシン類問題に関する掲載内容は、国民の関心が高いと考えられる情報を広く提供するという観点から、記者発表を行った資料、生活環境審議会廃棄物処理部会廃棄物処理基準等専門委員会の議事録等としているところである。

五の1の(3)について

 ダイオキシン類に係る情報については、健康にかかわる問題として国民からの関心が高いと認識しており、これまで第一回調査及び第二回調査における個別のごみ焼却施設の排ガス中のダイオキシン類濃度を公表する等積極的な情報の公開に努めてきたところである。今後もダイオキシン類に係る情報について、関係省庁のホームページの掲載内容の充実を図る等国民への情報提供に努めてまいりたい。