質問主意書

第140回国会(常会)

答弁書


答弁書第七号

内閣参質一四〇第七号

  平成九年六月六日

内閣総理大臣 橋本 龍太郎   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員荒木清寛君提出遺伝子組換え食品の表示等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員荒木清寛君提出遺伝子組換え食品の表示等に関する質問に対する答弁書

一の1について

 遺伝子組換え技術を応用した食品(以下「遺伝子組換え食品」という。)及び遺伝子組換え技術を応用した飼料(以下「組換え体利用飼料」という。)の輸入実績については、把握していない。
 したがって、遺伝子組換え食品を原材料に使用した食品が消費されているか否かについても把握していない。

一の2について

 食品又は飼料の輸入実績に占める遺伝子組換え食品又は組換え体利用飼料の作物ごとの比率については、把握していない。

二の1について

 平成九年三月十四日に食品衛生調査会バイオテクノロジー特別部会から「組換えDNA技術応用食品・食品添加物の安全性評価指針」(平成三年十二月二十六日衛食第百五十三号厚生省生活衛生局長通知。以下「安全性評価指針」という。)に従って安全性の評価が行われていると判断する旨報告がなされた御指摘の八品種の食品及び一品目の食品添加物については、平成九年五月十三日に行われた食品衛生調査会の答申を踏まえ、同月二十六日に申請者に対して厚生大臣が安全性評価指針への適合を確認した旨の通知を発出したところである。

二の2について

 遺伝子組換え食品の安全性評価指針への適合確認に対する第三回目の申請の受付の期限は、平成九年四月三十日までであり、それまでに除草剤耐性わた二品種、除草剤耐性なたね二品種及び日持ちのよいトマト一品種並びに食品添加物一品目(リボフラビン)について申請が行われたところである。御指摘の国内企業とは何を指すのか明らかではないが、いずれの申請者も日本国内において法人格を有する者である。

二の3について

 農林水産省においては、平成九年四月末時点において、組換え体利用飼料の製造業者等の申請に基づき、除草剤耐性なたね三品種、害虫抵抗性とうもろこし二品種、除草剤耐性雄性不稔とうもろこし一品種及び害虫抵抗性わた一品種について、「組換え体利用飼料の安全性評価指針」(平成八年四月十九日八畜B第五百八十五号農林水産事務次官依命通達)に適合しているかどうかを確認中である。

三について

 諸外国の遺伝子組換え食品の表示をめぐる動きは、逐次、在外公館等を通じて情報収集しているところであるが、本問題への各国の対応は最近、一層流動的になっており、すべての国の直近情報の把握には十分でない面もあると認識している。
 今後とも、諸外国の本問題への対応についての情報を、在外公館等を通じて逐次収集することに努め、我が国での対応を検討する上での参考としてまいりたい。

四の1について

 遺伝子組換え食品に関する意見書を提出した地方議会の数は、本年四月現在で、約百四十である。意見書の内容は、主に遺伝子組換え食品の表示の実施、遺伝子組換え食品の安全性確認のより一層の努力、遺伝子組換え食品に関する情報の公開等を求めるものである。

四の2について

 遺伝子組換え食品に関する消費者団体からの要望書は、本年四月現在で、約百団体から提出されている。要望書の内容は、地方議会からの意見書とおおむね同様である。

四の3について

 遺伝子組換え食品をめぐる動きについては、消費者に、その旨の表示をして欲しいという要望があり、また、消費者のそのような意見を踏まえて地方議会が意見書を議決されたものと認識している。
 今後とも、最新の科学的知見の収集に努め、遺伝子組換え食品の安全性の確保を図るとともに、遺伝子組換え食品の表示の在り方については、農林水産省において、消費者、生産・流通業者及び学識経験者からなる検討会を開催し、有識者等から広く意見を求めるとともに、消費者の要望、生産・流通の実態、国連食糧農業機関及び世界保健機関合同の食品規格委員会(以下「コーデックス委員会」という。)の食品表示部会での検討状況との整合性を踏まえつつ、検討してまいりたい。

五について

 遺伝子組換え食品の表示の在り方については、有識者等から広く意見を求めるとともに、消費者の要望、生産・流通の実態、国際的な検討状況との整合性を踏まえつつ、検討してまいりたい。

六の1について

 遺伝子組換え食品の安全性については、従来から食品衛生調査会で議論していただいており、消費者の選択に資するという観点も踏まえて、遺伝子組換え食品の表示の在り方を農林水産省において検討しようとするものである。

六の2について

 検討会の委員数は、二十人である。検討会のメンバーは、消費者、生産・流通業者及び学識経験者から選任したものである。

六の3について

 第一回目の検討会を五月三十日に開催し、以後、年度内に数回開催することを予定している。終了時期については、検討会における今後の審議の状況を踏まえつつ、検討してまいりたい。

七の1について

 例えば、石油から分離したノルマルパラフィン等を栄養源として酵母等の微生物を培養し、その微生物をたんぱく源として利用するいわゆる「石油たんぱく」が、御指摘のいわゆる新開発食品に該当するものと考えている。

七の2について

 食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号)第一条において「飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、公衆衛生の向上及び増進に寄与することを目的とする」と規定されている趣旨をかんがみれば、遺伝子組換え食品は、遺伝子が組み換わるという点において、伝統的な方法で改良された既存の食品又は食品材料と同様であることから、公衆衛生の見地から他の食品と区別して御指摘のような表示基準の設定を同法の改正によって行うことは適切ではないと考えている。

七の3について

 遺伝子組換え食品の表示の在り方については、検討会を開催し、有識者等から広く意見を求めるとともに、消費者の要望、生産・流通の実態、コーデックス委員会の食品表示部会での検討状況との整合性を踏まえつつ、検討してまいりたい。

八の1について

 平成八年八月に厚生大臣による安全性評価指針への適合確認が行われた遺伝子組換え食品の安全性については、十回にわたる食品衛生調査会バイオテクノロジー特別部会組換えDNA技術応用食品の安全性評価に関する分科会における審議において、個別の品目ごとに、製造業者等が安全性評価指針に従って評価を行ったかどうかの確認を、製造業者等が安全性評価指針に掲げられた評価項目に関して作成した資料に基づいて行ったところである。御指摘の食品衛生調査会常任委員会においては、こうした専門家による審議を経てまとめられた食品衛生調査会バイオテクノロジー特別部会報告及び消費者団体から寄せられた要望書等を総合的に検討し、審議を行ったものであり、安全性の評価については、現在の科学的知見に基づいて十分に行われたものと考えている。

八の2について

 食品衛生調査会の委員については、食品衛生法第二十五条第五項に基づき「学識経験のある者の中から、厚生大臣がこれを任命する」こととされている。
 食品衛生調査会における審議は、衛生規制の根拠となる規格基準の審議等専門的、かつ、技術的な審議が中心であるため、従来、消費者の意見を反映できる者一名のほか科学的な専門知識を有する者を委員に任命してきたが、平成六年十二月の「食と健康を考える懇談会」(厚生大臣の私的懇談会)における報告書等を踏まえて、平成八年七月の改選時には、委員として消費者の意見を反映できる者を新たに一名増員し、合計二名とするとともに、生産者の意見を反映できる者、ジャーナリスト経験者等広範囲の専門家及び有識者を選任したところであり、次回改選時においても、同様に広範囲の専門家及び有識者を選任することとしている。
 食品衛生調査会バイオテクノロジー特別部会の委員については、同部会が専ら遺伝子組換え食品の安全性の評価という高度な先端技術に関する専門的、かつ、技術的な審議を行うことから、消費者の意見を反映できる者を任命することは考えていない。

九の1について

 コーデックス委員会食品表示部会の事務局から、これまでの経緯と事務局が準備した遺伝子組換え食品の表示についての資料について簡単に説明がなされたが、次回会合で議論することとなっている。

九の2について

 コーデックス委員会の議論に積極的に参加することとしている。

九の3について

 厚生省から生活衛生局食品保健課新開発食品保健対策室長他二名、農林水産省から食品流通局品質課長他二名によって構成されていた。

九の4について

 公益法人等から技術に詳しい次の四名が随行していた。

細谷 憲政  食品衛生調査会委員
浜野 弘昭  (社)日本食品衛生協会技術委員
浜島 守男  (財)食品産業センターのコーデックス連絡協議会専門部会委員
鈴木 英毅  (財)食品産業センターのコーデックス連絡協議会専門部会委員

九の5について

 テクニカルアドバイザーは、食品表示部会の多数の議題について、政府代表団に対し必要に応じて技術的助言を行うものであるが、今回の食品表示部会の遺伝子組換え食品の表示の検討では、テクニカルアドバイザーからの技術的助言は行われなかった。

九の6について

 承知していない。

九の7について

 今回の食品表示部会においては、遺伝子組換え食品の表示について、国際消費者機構、国際有機農業運動連盟が発言をしたと承知しているが、これ以外については承知していない。

九の8について

 食品表示部会の事務局が準備した、遺伝子組換え食品の表示についての資料では、これまでの経緯、同部会で対応すべき分野、遺伝子組換え食品の表示をめぐる背景等を説明するとともに、遺伝子組換え食品の表示の基準を設ける場合は、包装食品の表示の一般基準の改正の形で行うことを提案している。

九の9について

 我が国政府としては、本件が国内で大きな問題となりつつあり、消費者団体等からは表示を求める意見が出され、業界が議論の帰趨を懸念している中で、今後、検討会を開催することとしており、本件に関する立場は留保するが、表示部会における意義ある解決のための作業には積極的に参加する旨発言したところである。