質問主意書

第140回国会(常会)

答弁書


答弁書第二号

内閣参質一四〇第二号

  平成九年五月二十日

内閣総理大臣 橋本 龍太郎   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員荒木清寛君提出ごみ処理に伴うダイオキシン類の発生防止対策等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員荒木清寛君提出ごみ処理に伴うダイオキシン類の発生防止対策等に関する質問に対する答弁書

 一の1について

 御指摘の厚生省が都道府県に対して求めた報告のうち、平成七年十二月に行ったもの(以下「第一回調査」という。)は、ダイオキシン類の排出濃度の測定の実施状況を把握することを目的とし、平成八年七月に行ったもの(以下「第二回調査」という。)は、第一回調査の結果及び同年六月の厚生省におけるダイオキシン類の毒性評価に関する調査研究の中間報告を踏まえ、市町村(一部事務組合を含む。以下同じ。)の設置する千八百五十四か所(平成六年三月末現在)の一般廃棄物の焼却施設(以下「ごみ焼却施設」という。)すべてについて、ダイオキシン類の排出濃度を測定した上で報告を求めたものである。
 第二回調査については、本年一月二十日までに、御指摘の七百五か所の施設について報告があったところであるが、その後、同年三月末までに、更に四百四十五か所の施設について報告があり、合計千百五十か所の施設について測定結果の報告があったところである。
 第二回調査に対する報告が遅れているのは、ダイオキシン類の測定には精密な機材及び高度な専門技術を必要とするため、調査の対象施設の数に比べて当該測定を行う能力を持つ機関の数が限られていることによるものと考える。

一の2について

 第二回調査について本年一月二十日までに報告がなかった都道府県は富山県のみであったが、同県からは同年三月末までに同県内の市町村の設置する十四か所のごみ焼却施設のうち、十一か所について報告があったところである。また、同年一月二十日時点で報告のあった施設の割合が御指摘の三十八・〇パーセントを下回っていた都道府県は、北海道、青森県、岩手県、福島県、新潟県、富山県、石川県、福井県、岐阜県、静岡県、三重県、兵庫県、奈良県、和歌山県、岡山県、徳島県、香川県、高知県、佐賀県、長崎県、大分県、鹿児島県及び沖縄県である。

一の3について

 厚生省において、都道府県を通じて市町村に対し、いまだに報告のないごみ焼却施設について、速やかに測定を実施し、結果を報告するよう指導しているところである。

一の4及び5について

 第一回調査及び第二回調査においては、排出量が多いとされているごみ焼却施設のうち、その数及びごみ焼却量のほとんどを占める市町村の設置するごみ焼却施設について、ダイオキシン類の削減対策を早急に講ずるために排出濃度の測定の実態等を把握する必要があることから、市町村の設置するごみ焼却施設を対象としたものである。
 市町村以外の者が設置するごみ焼却施設及び産業廃棄物の焼却施設も含めた廃棄物の焼却施設から排出されるダイオキシン類の削減対策については、現在、必要な知見の集積に努めるとともに、生活環境審議会廃棄物処理基準等専門委員会において施設の構造及び維持管理に関する基準の見直し等の規制の方策を検討しているところであり、燃焼温度等の燃焼条件がごみ焼却施設と異なる産業廃棄物の焼却施設におけるダイオキシン類の排出実態把握等のため、厚生省において必要な範囲における調査を実施することとしている。

二について

 厚生省において、御指摘のダイオキシン類の排出濃度が一立方メートル当たり八十ナノグラムを超えるごみ焼却施設に限らず、本年三月末までに同省に報告のあったすべてのごみ焼却施設(千百五十施設)について、設置している市町村名、施設名、焼却炉の形式、処理能力、集じん器の形式、使用開始年月及び排出ガス中のダイオキシン類濃度の測定結果を、同年四月十一日に公表したところである。
 また、厚生省において、本年一月に、各都道府県知事に対して「ごみ処理に係るダイオキシン類の削減対策について」(平成九年一月二十八日衛環第二十一号厚生省生活衛生局水道環境部長通知)を発出し、当該通知において、都道府県知事が市町村に対してごみ焼却施設から排出されるダイオキシン類濃度の測定結果を公表するよう指導することを求めたところである。
 厚生省において、各都道府県のダイオキシン類排出濃度の測定結果の公表状況について調査したところ、本年四月十一日現在で二十一都道県が既に公表し、十県が公表を予定している旨の回答があったところである。

三の1について

 市町村がダイオキシン類の削減対策として実施するごみ焼却施設の集じん器の交換等の改良事業に要する費用については、国庫補助の対象とすることができるものであるので、申請があった場合には、優先的に補助することとしているところである。

三の2について

 ごみ焼却施設の整備事業に対する国庫補助については、御指摘の公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律(昭和四十六年法律第七十号)第二条第二項に規定する公害防止計画に基づく事業のほか、これまで離島振興法(昭和二十八年法律第七十二号)第五条第一項に規定する離島振興計画、奄美群島振興開発特別措置法(昭和二十九年法律第百八十九号)第二条第一項に規定する振興開発計画及び沖縄振興開発特別措置法(昭和四十六年法律第百三十一号)第三条第一項に規定する振興開発計画に基づく事業について、その他のごみ焼却施設の整備事業に比べて高い補助率を設定しているところである。

三の3について

 御指摘のごみ焼却施設の改良期間中のごみ処理については、都道府県に対し、引き続き、当該市町村が適正なごみ処理を確保するために周辺市町村にごみの焼却を委託することができるように市町村間の調整を図る等必要な市町村に対する技術的援助を与えるよう指導してまいりたい。

三の4について

 ごみ焼却施設の労働環境については、ダイオキシン類の削減対策としてその発生防止を進めることにより改善が図られるものと考えるが、民間事業者が設置するごみ焼却施設については、労働省において、地域別、業種別等に組織された中小企業集団又は当該集団の構成員である中小企業者が行う職場における作業環境改善の事業に対して中央労働災害防止協会が助成する「中小企業労働安全衛生活動促進事業助成制度」を設けており、その効果的な活用を図ってまいりたい。

四の1について

 御指摘の焼却灰の溶融固化処理を行う施設は、本年四月現在、全国の市町村のうち十七所において設置されていると承知している。

四の2について

 溶融固化処理に伴って発生するスラグの再生利用については、例えばアスファルト舗装の骨材、路盤材等として用いられていると承知している。

五の1について

 御指摘のダイオキシン類を規制する条例については、現在のところ、所沢市以外で制定されている例は承知していない。このような条例は、地方公共団体において、ダイオキシン類の削減対策の必要性にかんがみ、地域の実情に応じて制定されるものと承知しており、政府としても、このような状況を踏まえつつ、必要なダイオキシン類の削減対策を講じてまいりたい。

五の2について

 学校等の教育現場におけるダイオキシン類への対応の実態については、現在のところ把握していないが、今後、焼却施設の設置状況の調査を含め、その対応について早急に検討してまいりたい。