質問主意書

第140回国会(常会)

答弁書


答弁書第一号

内閣参質一四〇第一号

  平成九年三月十八日

内閣総理大臣 橋本 龍太郎


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員瀬谷英行君提出シベリア抑留日本人死没者に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員瀬谷英行君提出シベリア抑留日本人死没者に関する質問に対する答弁書

一について

 旧ソヴィエト社会主義共和国連邦(以下「旧ソ連邦」という。)及びモンゴル人民共和国の地域(以下「旧ソ連邦等の地域」という。)に抑留された日本人(以下「旧ソ連邦抑留者」という。)の実数等については、昭和二十一年から昭和三十三年までの間に、旧引揚援護院、旧復員庁等において、旧ソ連邦等の地域から帰還した者に対する聴き取り、留守家族から提出された未帰還届等に基づいて調査した結果、旧ソ連邦抑留者が約五十七万五千人、旧ソ連邦等の地域において抑留中に死亡した日本人(以下「抑留中死亡者」という。)が約五万五千人であると推定している。

二について

 恩給法(大正十二年法律第四十八号)及び戦傷病者戦没者遺族等援護法(昭和二十七年法律第百二十七号)においては、御指摘の捕虜収容所において死没した者等抑留中に死亡した者は公務傷病により死亡した者とみなし、その遺族に対し、恩給法に基づく公務扶助料又は戦傷病者戦没者遺族等援護法に基づく遺族年金等が支給されている。

三の1について

 御指摘の捕虜収容所に収容されていた者に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定(平成三年外務省告示第三百十一号。以下「協定」という。)第一条1に基づき、平成三年四月に旧ソ連邦政府から提出されたソ連邦抑留中死亡者名簿の登載者数は三万八千六百四十七人であり、厚生省において内容を点検し、これらから重複している者を除いた実数は三万六千七百二十人であった。
 また、平成六年四月にカザフスタン共和国政府から提出された名簿(千三百六十人分)から判明した三百二十六人及び平成七年三月にロシア連邦政府から提出された名簿(五千六百四十九人分)から判明した二千九百七十九人を合計すると、協定に基づき旧ソ連邦政府等から提出された名簿による抑留中死亡者の数は四万二十五人である。

三の2について

 埋葬地等に関する資料については、協定第一条2に基づき、平成三年四月に旧ソ連邦政府から、平成六年四月にカザフスタン共和国政府から及び平成七年三月にロシア連邦政府から提出された。これらを厚生省において整理したところ、旧ソ連邦の三十一地域における五百四十三か所の埋葬地ごとに埋葬された者四万二十五人の姓名、生年、軍の階級、死亡年月日及び埋葬年月日を記載した名簿、埋葬地の所在を記した四十二枚の資料、埋葬地の所在を記した三百四十五枚の地図、埋葬地内の埋葬箇所を記した百二十六枚の見取図並びに埋葬地についての百二枚の写真等であった。

三の3について

 抑留中死亡者の埋葬地の状態については、遺骨収集及び墓参のための事前調査等として把握してきているが、埋葬地が広範な地域に点在していること及び積雪等のためその実施時期が限られることから、現在までのところそのすべてについては把握していない。現在までに確認されたものについては、墓地として整備されている埋葬地がある一方、抑留中死亡者が埋葬されたままの状態で現在に至り、未整備となっている埋葬地も多数存在している。
 なお、抑留中死亡者の遺骨収集については、こうした未整備の埋葬地を優先的に行っている。

三の4について

 協定第三条に基づく抑留中死亡者の慰霊碑については、日本国政府は、平成七年七月にロシア連邦ハバロフスク市に建立したところである。
 一方、協定第三条に基づくロシア人死没者の慰霊碑の建立については、現在のところ行われていない。

三の5について

 埋葬地及び埋葬者の数の確定については、協定第一条1及び2に基づき、ロシア連邦政府を始めとする旧ソ連邦諸国の政府に対し、日本人死亡者の名簿及び埋葬地の資料でこれまで提出されたもの以外のものがあれば、日本国政府に提出するよう引き続き要請していくこととしている。
 また、埋葬地の保全等については、今後とも可能な限り早期に抑留中死亡者の遺骨を収集することとしているが、それまでの間、協定第一条4に基づき、ロシア連邦政府を始めとする旧ソ連邦諸国の政府に対し、埋葬地が破壊されたり他の用途に転用されたりすることがないよう引き続き要請していくこととしている。

四について

 今後とも本件については、問題の人道的性格を踏まえるとともに、遺族及び関係者の心情を勘案しつつ、ロシア連邦政府を始めとする旧ソ連邦諸国の政府の協力を得ながら、協定に基づく名簿及び埋葬地に関する資料の提出並びに墓参及び遺骨収集の円滑な実施に取り組んでまいりたい。