質問主意書

第140回国会(常会)

質問主意書


質問第一五号

国連ハビタットに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成九年六月十六日

横尾 和伸   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   国連ハビタットに関する質問主意書

 国連人間居住センター(以下「国連ハビタット」という。)は、人間居住の分野における国際協力を増進するため、一九七八年(昭和五十三年)十月に国連経済社会理事会の下部組織として設立された。ケニアのナイロビに本部を置き、スラム問題、都市・農村の過密・過疎、都市計画、土地・住宅、上・下水道、交通、廃棄物処理、建築資材、住宅融資などの広範な問題について、問題解決のための研究、指針の作成、各国・各国際機関との情報交換、広報活動、研修、専門家派遣、パイロットプロジェクトの実施などの活動を行っている。
 一方、昨年六月にはトルコのイスタンブールにおいて、「すべての人に適切な住居を」及び「都市化する世界における持続可能な人間居住開発」を基本テーマにして第二回国連人間居住会議(ハビタットII)が開催された。この会議では、国連ハビタットの機能強化に関連して、福岡県知事がハビタット・アジア太平洋地域事務所の福岡誘致を表明した。また、現在、先進国に対して設定されている、GNPの〇・七%をODAに充て、そのうち〇・一五ポイントを後発の最貧開発途上国に充当するという数値目標について、途上国側からその達成目標年次を明確化し、二〇〇〇年にすべしとの動きがあった。これは先進国側の反対で採択には至らなかったが、この時同時に途上国やEU諸国からは、居住分野へのODA投入の重要性が指摘されている。
 ところで我が国のODA実績は、近年、世界第一位を続け、内容的にもODA大綱に基づいて、その重点項目に掲げられた地球規模問題に対する開発途上国の努力に対する支援や、開発途上国の貧困層に直接働きかけることに主眼をおく基礎生活分野(BHN)を中心とした支援の比重を高めている。これは最近における開発援助の基本的考え方である「人間中心の開発」に沿っており、評価できるものである。今後、このような取り組みが一層推進されるべきであり、特に、まさに人間の基礎生活分野である人間居住(ハビタット)の分野が重要視されていくべきであろう。
 かつて我が国は、一九九二年の地球サミットで環境ODAの拡充強化を掲げ、五年間で九〇〇〇億円から一兆円の環境ODAの実現を目指し、これを四年でほぼ達成した実績を有する。財政再建のためODA予算も削減が検討される中で、限りある資金を最大限有効に活用する観点からも、環境ODAにならってハビタットに関わる案件・分野を定めることによりいわば「ハビタットODA」(以下、同じ)を概念化し、これを政策的に拡充強化することが望まれる。
 こうした認識に立って、次の諸点について政府に質問する。

一、国連ハビタットについて、いかなる基本認識、将来展望を有しているか。

二、国連ハビタットの活動状況について説明されたい。また、それをどのように評価しているか。

三、我が国は、国連ハビタットに関して具体的にいかなる活動、支援等を行っているか。

四、ハビタット・アジア太平洋地域事務所が来る八月に福岡に開設される意義、又これに対する政府の協力方針はいかなるものか。

五、国連ハビタットは、我が国において一般に馴染みが少ないように思われるが、政府として積極的に広報活動に努め、より一層国民の理解を得る努力をすべきであると思うがどうか。

六、財政再建のためODA予算も主な削減対象の一つとされる中で、ODAの質的改善が急務となっているが、我が国が実施してきたこれまでのODAをどのように評価しているか。また、今後いかなる分野に重点をおいてODAを実施していくつもりか。

七、すでに人間居住(ハビタット)の分野に対するODA実績は、実質的に相当な規模になると思われる。政府は、ハビタットに関わるODA案件をどのような考えで分類すべきと捉えているか。又ODA案件のODA実績に占める総額及び件数の割合はどの程度になっていると把握しているか。具体的に数字で示されたい。ちなみに、環境ODAの積算にならって、平成六年度の政府公表資料に基づきハビタット案件に該当すると思われる無償・有償資金協力案件及び技術協力案件を積算したところ、総額は約五千億円になっている。

八、我が国ODAの重点分野として、ODAのうちハビタットに関わる案件等を対象とする「ハビタットODA」とも言うべきグループ分類の考え方を導入し、環境ODAの場合のように、数値目標を掲げた五年程度の中期目標としてこれを政策的・継続的に実施し、ハビタット分野の拡充強化を図っていくべきことを提案するがどうか。

九、我が国は「ハビタットODA」の拡充をはじめとする諸活動について、国内外への広報活動を強化するとともに、ハビタット推進に係る国際的リーダーシップを強化すべきと考えるがどうか。

  右質問する。