質問主意書

第140回国会(常会)

質問主意書


質問第一三号

地球温暖化防止対策等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成九年六月十三日

加藤 修一   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   地球温暖化防止対策等に関する質問主意書

 本年一二月、気候変動枠組条約第三回締約国会議(COP3)が京都で開催される。この会議は、二〇〇〇年以降の温室効果ガス排出量の数値目標と政策措置を国際的に取り決める、二十一世紀の温暖化対策が決定される重要な会議である。日本は成功に向けて開催国として重大な責務を課せられている。
 この条約(一九九四年三月発効)では、先進各国が二酸化炭素等の温室効果ガスの排出量を、二〇〇〇年までに一九九〇年のレベルまで戻すこととされているが、日本は、この国際約束を達成することが難しい状況となっている。世界自然保護基金は、日本の温暖化防止の取り組みを、世界ワースト2と評価している。これでは、第三回締約国会議の開催国としての指導性や調整力を発揮するのは極めて難しい。政府はこの目標を達成するべく、あらゆる対策の強化に全力を傾注すべきである。
 さらに、COP3の温室効果ガス削減の目標値や具体策をめぐる準備交渉は、遅々として進まない。その大きな理由として、開催国日本が削減量も、削減目標年も明らかにせず、リーダーシップを発揮していないからである。
 我が国は速やかに明確な目標と政策措置を決定し、各国をリードし、COP3を成功裡に導くべきである。
 こうした観点から以下質問する。

一、温室効果ガスを二〇〇〇年に一九九〇年レベルに戻す目標について

1、温室効果ガスを二〇〇〇年に一九九〇年レベルに戻す目標について、政府は断念したのか。
2、断念していないとするならば、これからの四年間の年毎の排出量の目標値とそれを達成するための具体的な方策を明らかにされたい。なお炭素税など経済的手法の導入をこの際積極的に検討すべきではないか。
3、地球温暖化防止行動計画(一九九〇年一〇月)を決定し、これに基づき温暖化防止のための各種対策として省エネルギー、廃棄物の減量化、交通体系の見直し、自然エネルギー・新エネルギーの開発等が推進されることになっているが、実行は遅々として進んでいない。実施状況とそれによる温室効果ガスの削減効果について明らかにされたい。
4、気候変動枠組条約に基づく第二回日本国報告書を四月一五日までに提出することになっているが、日本は本日時点(六月一三日)まで未だ提出していない。なぜ、遅れているのか。とりまとめ官庁は環境庁であるが、どの省庁と、どの部分について、調整がついていないのか、明らかにされたい。調整を密室で行うのではなく、省庁の考えをそれぞれ国民の前に提示して、国民に判断を委ねてはどうか。

二、気候変動枠組条約第三回締約国会議(COP3)に対する通産省の取り組みについて

1、通産省は、五月二九日の参議院商工委員会で、気候変動枠組条約第三回締約国会議(COP3)の議定書の内容について「現在の状況をみると、二〇〇〇年以降九〇年レベル以下に抑制するという目標が仮にあったとすれば、その実現は我々としては非常に難しいものと考えている。」と答弁している。「我々としては非常に難しい」というが、我々とは、日本国をいうのか、日本政府をいうのか、通産省をいうのか。
2、通産省は、同参議院商工委員会で「かつて二〇〇〇年目標を現行条約に基づいて各国がプレッジをした中でこれを実現できる国はほとんどないというこの現実を見ながら、今後の問題について実行のできない事を、各国は約束しあうような条約交渉はしたくないという思いを持っている。」と答弁している。これは、日本国が現行条約の目標である温室効果ガス排出量を二〇〇〇年に、九〇年レベルに戻すことを通産省としては、断念したということか。
3、条約交渉で二〇〇〇年以降、九〇年レベル以下に抑制するという目標がでた場合、通産省としては、反対するということか。
4、通産省として、実行できる目標とは、どういうものか明らかにされたい。
5、仮に気候変動枠組条約第三回締約国会議(COP3)で、二〇〇〇年以降九〇年レベル以下に抑制するという目標が成立した場合、通産省は、温暖化防止へ向けて責任を放棄するのか。
6、条約の準備過程で「世界の中で、日本が孤立している」といわれている状況で、通産省の後ろ向きの姿勢は、気候変動枠組条約第三回締約国会議(COP3)の条約交渉のブレーキをかけるものと懸念する。温暖化防止は、未来の子孫に、かけがえのない地球を引き継ぐ現世代の責任である。通産省はこの責任をどう果たすつもりか。

三、気候変動枠組条約第三回締約国会議(COP3)に対する我が国の取り組みについて

1、削減の対象とする温室効果ガスの種類については、二酸化炭素のみを対象とするのか。複数の温室ガスを含めるのか。複数のガスを対象にする場合、ガス毎に目標を決めるのか、何らかの換算計数を用いて合計するのか。特に、二酸化炭素の一三〇〇倍もの温室効果があるとされるHFC(ハイドロフルオロカーボン)をどのように規制するのか。
2、温室効果ガスを排出量と吸収量とに分けるのか。排出量から吸収量を引いた値にするのか。
3、削減目標については、排出量の削減量を地球温暖化防止の効果、実現可能性、公平性などとの関連でどのように設定するのか。各国一律か、各国で差異をつけるのか。
4、削減目標の年限については、単年度か、複数年の積算・平均とするか、短期か長期か。
5、温暖化防止の政策措置については、各国共通の導入を義務づけるのか、それとも各国の自主性にまかせるのか。
6、取り決めについては、先進国のみとするのか、途上国は参加するのか、新しいOECD加盟国はどうするのか、途上国の約束の実施の促進をどうするのか。
7、法的拘束力を持つことが決められているが、それは最終年度においてのみ拘束するのか、年次毎に評価するのか。評価体制はどのようにするのか。

  右質問する。