質問主意書

第140回国会(常会)

質問主意書


質問第四号

予備費使用の国会承諾に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成九年四月二十一日

栗原 君子   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   予備費使用の国会承諾に関する質問主意書

 平成八年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(その1)ほか予備費案件が、国会の承諾を求めるため、例年なら九年三月末までには提出されるはずであるが、未だ提出されていない。そこで調べてみると、予備費使用の国会承諾案件を、決算と同じく衆参両院に別々に提出するよう求める具体的動きが、与党・自由民主党を中心に行われているという情報を得た。
 申すまでもなく、日本国憲法は、「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。」(第八十三条)、「国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。」(第八十五条)、「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。」(第八十六条)と、財政処理に関する国会中心主義と事前議決の原則を明らかにしている。そして、予備費制度はこの事前議決の原則の例外として憲法が認めたものであるが、「すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。」(第八十七条第二項)と定めており、これを受けて財政法では、「内閣は、予備費を以て支弁した総調書及び各省各庁の調書を次の常会において国会に提出して、その承諾を求めなければならない。」(第三十六条第三項)と規定している。
 憲法及び財政法においては、予備費の使用について国会の承諾を求めなければならないとされているにもかかわらず、予備費使用の事後承諾案件を、両院関係のある議案としてではなく、各議院に提出し、各議院が別々に審議し議決すれば足りるとして、これまでの予備費の扱いを変更しようとする動きは、国会の権威と権能を低下させるものであり、憲法施行五十年を前にして極めて遺憾なことと言わざるを得ない。
 そこで、予備費使用の事後承諾案件の扱いについて、その提出責任のある内閣に、以下質問する。

一、平成八年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(平成八年四月から九年一月の間の使用分)ほか予備費使用の事後承諾案件が、未だ国会に提出されていない理由は何か。

二、予備費使用の事後承諾案件が、第二回国会(常会)以降第百三十九回国会まで、「両院関係のある議案」として国会に提出(衆議院先議)されてきたが、この取扱いは、どのような根拠に基づくものか。
 私の理解では、予備費の使用について憲法が明文で「国会の承諾」を要求しており、「両議院の承諾」あるいは「各議院の承諾」としていない以上、「両院関係のある議案」として提出することは、内閣の当然の責務であり、疑問の余地のないものと考えるが、どうか。

三、私は、予備費使用の事後承諾案件を各議院に提出して、各議院がそれぞれ審議し議決する方式に変更することは、憲法上の疑義があると考える。
 しかし、憲法学説の中には、第八十七条第二項は、予備費使用の事後承諾案件の提出の仕方まで規律したものではないとして、「両院関係のない議案」すなわち「一院限りの議決案件」として両院に提出することも、憲法上可能であるとの説があることも承知しているので、一歩譲って、仮にそのような解釈を採るとしても、現行財政法が「内閣は、予備費を以て支弁した総調書及び各省各庁の調書を……国会に提出して、その承諾を求めなければならない。」(第三十六条第三項)と明文で規定している以上、同法の改正なくして、予備費使用の事後承諾案件を「一院限りの議決案件」として提出することは、許されないと思うが、憲法上の疑義を含めて、内閣法制局の見解はどうか。
 なお、決算の提出と予備費の事後承諾の違いについても政府の見解を示されたい。

四、私は、予備費使用の事後承諾案件を「一院限りの議決案件」とした場合には、国会法第六十五条、第五十八条、第八十三条以下の両議院関係の規定が適用できず、同法全体の見直しを含めた検討が必要であると思う。
 憲法上も疑義があり、財政法や国会法の改正も必要と思われる「予備費使用の事後承諾案件の提出及び議決方式の変更」を、憲法施行五十年を前に行わなければならない積極的理由を見いだし難く、また、その動機が不明であり、理解し難いのであるが、政府の認識はどうか。

五、各年度の予備費使用の事後承諾案件は、これまで、(その1)(その2)として、分割して国会に提出されてきたが、それは、どのような国会論議を踏まえての政府の対応であったか、分割提出の目的は何であったかなど、分割提出に至った経緯を具体的に明らかにされたい。

  右質問する。