質問主意書

第139回国会(臨時会)

質問主意書


質問第三号

遺伝子組換え食品に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成八年十二月十七日

荒木 清寛   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   遺伝子組換え食品に関する質問主意書

 本年八月、厚生省の食品衛生調査会が、遺伝子組換え七品種について「組換えDNA技術応用食品・食品添加物の安全性評価指針」に適合していることを確認したことから、これらの食品が市場に出回ることになる。しかし、安全性を証明するデータは第三者機関によるものではない等、その安全性に強い不安を抱く消費者も少なくない。さらに、遺伝子組換え食品か否かは外見上区別がつかないため、消費者は、店頭に並んだ食品を判別する方法はない。消費者の選択権を確保する観点から、表示の義務付けが強く求められている。こうした観点から、以下質問する。

一 遺伝子組換え食品の流通実態について

1 遺伝子組換え食品の輸入・生産量、摂取量について把握しているか。流通実態を把握すべきではないか。
2 諸外国、特にアメリカ合衆国、カナダ及びEU諸国における遺伝子組換え食品の認可状況、生産・使用状況について明らかにされたい。

二 遺伝子組換え食品の安全性について

1 遺伝子組換えは、DNAという生命の根元を操作する技術であり、これによる作物は、従来の作物には存在しなかった性質を持つ全く新しい食品である。安全性評価指針の根底にある「実質的に同等」という考えを改めるべきではないか。また、政府が「実質的に同等」を主張する科学的根拠を示されたい。
2 遺伝子組換え食品は、食品衛生法第四条の二で定める新開発食品に該当するか。第四条の二を改正し、新開発食品についての事前届け出を義務付けるべきではないか。また、「組換えDNA技術応用食品・食品添加物の安全性評価指針」を改め、組換えDNA食品が同指針に適合していることの厚生大臣による事前確認を義務付けるべきではないか。
3 宿主となる作物に従来なかった遺伝子を導入することで、人間にとって未知の毒性やアレルゲンがつくりだされる可能性はないか。仮に否定する場合、その根拠は何か。
4 マーカー遺伝子がアレルギーを引き起こしたり、腸内細菌に抗生物質耐性を広める可能性はないか。仮に否定する場合、その根拠は何か。
5 安全性評価で求められている資料は急性毒性に係るものが中心で、慢性毒性や遺伝毒性の評価は行われていない。安全性評価に当たり、慢性毒性や遺伝毒性等の試験を必須とすべきではないか。
6 遺伝子組換え食品の安全性については、国立衛生試験所及びこれを改組する「国立医薬品食品評価研究所」において、逐次安全性の再評価を行うべきではないか。特に、人体への影響に関する長期的な臨床実験を行う必要があるのではないか。

三 自然環境への影響について

1 除草剤耐性作物によって農薬依存が強まり、農薬の使用量が増えることになるのではないか。仮に農薬使用量が減ると主張する場合、その根拠となるデータを示されたい。
2 除草剤耐性作物に対する除草剤の使用によって、それに耐性を持つ雑草が増える等生態系に大きな影響を及ぼす可能性はないか。仮に否定する場合、その根拠は何か。
3 米国のフェイガン博士は、組み換えられた遺伝子が、自然交配によって短期間で周囲の生物に拡散する例がヨーロッパで確認されていると主張している。この事実を確認しているか。
4 3について確認していない場合、自然交配による組換え遺伝子の拡散はありうるか。仮に否定する場合、その根拠は何か。

四 遺伝子組換え食品の表示について

1 食品衛生法第十一条の規定に基づき、遺伝子組換え食品について表示基準を設定すべきではないか。仮に、安全性が確認されているから表示は必要ないという立場をとる場合、従来天然添加物については、一般に食品として飲食に供されている物であって添加物として使用されるものや、古くから使われ食生活に定着している既存天然添加物についても表示を義務付けてきたこととのバランスをどう考えるか。
2 農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律第十九条の八を活用し、遺伝子組換え食品の表示を義務付ける制度を導入すべきではないか。また、当面、現在の「青果物の一般品質表示ガイドライン」を見直し、遺伝子組換え食品についてはその旨を表示するよう指導すべきではないか。

  右質問する。