質問主意書

第139回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一号

小麦と小麦粉の安全性に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成八年十二月十二日

竹村 泰子   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   小麦と小麦粉の安全性に関する質問主意書

 本質問主意書は、わが国に流通する内外の小麦および小麦粉に関する諸問題を取り上げる。小麦粉には薄力粉、中力粉、強力粉の三タイプがあり、それぞれの用途で国民が日々食している。
 ところが三タイプの小麦粉は、産地、品種、天候等の条件で品質が安定せず、品質のぶれを「調整する」ため、食品添加物や、栽培中や収穫後の小麦への農薬投与等、化学物質が使用されている。また例えば、強力粉であれば世界のパン業界が争奪戦を演じることで需給不安を現出させ、食糧問題をより複雑化させているように見える。
 本質問主意書では、小麦および小麦粉に関する問題の所在を明らかにすることに重点を置く。そのため政府関係機関には多大の労力を強いることになってしまうが、世界最大の農産物である小麦(小麦粉)が孕む諸問題を、大消費国であるわが国で取り上げ、その打開策の解明をめざすという旗幟を鮮明にすべく答弁の労をおとり頂きたい。

一、食品添加物「臭素酸カリウム」の危険性について

 強力粉を使用するパン業界では、強力粉の品質のぶれを補い、パンの品質を安定させるため、「小麦粉処理剤」として臭素酸カリウムが世界的に使用されていた。ところがこの事実に警鐘を鳴らす動きが出ており、ここではそれを取り上げる。

1 一九八二年、厚生省がん研究助成金による研究で、臭素酸カリウムに発癌性の疑いがあるという中間報告がなされた。この中間報告後、厚生省は最終報告の早急な提出を求めたが、その最終報告の骨子を説明されたい。
2 一九八三年、国立衛生試験所食品添加物部長谷村顕雄氏は、雑誌「NEWFOOD INDUSTRY」NO. 6 VOL. 25において「食品添加物の指定と削除~特に発癌性の評価について」という論文を発表し、臭素酸カリウムの強い発癌性を指摘しているが、その内容を説明されたい。
3 この物質は、自然界にどの程度存在しているか説明されたい。
4 食品添加物としての臭素酸カリウムの年間生産量、並びに国内での使用量の推移を過去一五年間にわたって示されたい。
5 臭素酸カリウムは、人体に摂取された場合、発癌性があるために危険であると認識している。食品添加物「臭素酸カリウム」は、食品中に一切残留してはいけないというのがわが国の姿勢であると理解しているがいかがか。

二、臭素酸カリウムについての諸外国の現状について

 諸外国では後述のように「小麦粉処理剤」として臭素酸カリウムを禁止する国が出現している。なぜ禁止したのかは、わが国としても緊急に知る必要があると考えるため、以下のとおり質問する。事は、日々のわれわれの食卓の問題である。

1 FAO/WHO合同食品添加物専門家委員会(以下、JECFAと略)の活動内容、および設置理由について簡潔に説明されたい。
2 一日摂取許容量(ADI)について説明されたい。
3 JECFAでは、ADIの設定されている食品添加物のリストをA(1)リスト、A(2)リストとして発表していると聞くが、これらについて説明されたい。
4 最新のA(1)、A(2)リストはいつ発表されたものか。また最新版に記載されている食品添加物は何品目あるか。
5 一九九四年末現在のA(1)、A(2)リストに臭素酸カリウムは指定されていないが、削除された年次、および削除理由を明らかにされたい。
6 一九九五年二月一四日~二三日、第四四回JECFAがローマで開催された。この会議においては、小麦粉処理剤として使用された臭素酸カリウムがパン製品中に残留しているとの報告がなされ、改めて遺伝毒性を示す発癌物質である臭素酸カリウムの使用禁止の勧告がなされているが承知しているか。この報告文書の概要を示し、説明されたい。またこの報告の根拠となった分析技術を調査のうえ説明されたい。
7 英国農水省食品安全監督局が発行する定期刊行物「食品添加物と汚染」(FOOD ADDITIVES AND CONTAMINANTS)の1994. VOL11 NO. 6 633-639によれば、イギリス政府は、一九九〇年にパン製造時における臭素酸カリウムの使用を全面的に禁止している。この事実を承知しているか。一九九〇年、イギリス政府がこのような措置をとるにいたった経緯を説明されたい。
 EU(欧州連合)でも臭素酸カリウムの使用を禁止していると聞くが、禁止していれば禁止の年次、および禁止理由(測定方法等も含む)を説明されたい。
8 アメリカでは、臭素酸カリウムの使用を禁止としている州と、使用を認めている州があると聞くが承知しているか。使用禁止措置をとっている州名を説明されたい。またそれらの州政府が禁止措置をとるにいたった経緯を説明されたい。
9 二の7のイギリス政府の禁止措置と、二の8で指摘した事態に対する政府見解を表明されたい。

三、臭素酸カリウムについてのわが国の現状について

 四で触れる通り、一九八四年、世界に先駆けて「臭素酸カリウムの規制措置」を打ち出したわが国も、前述の諸外国での「使用禁止措置」に対する反応は、以下のとおり鈍いと言わざるを得ない。わが国で使用継続状態が続いているのはなぜか、という疑問は国民が等しく持つものであると考えるため、以下質問する。

1 JECFAの研究成果はわが国の食品行政に反映されるか。反映されるとすればそのシステムを説明されたい。
2 わが国の食品衛生調査会の性格、設置趣旨を簡潔に説明されたい。
3 食品衛生調査会の現在の構成メンバーを、各人の所属を含め明らかにされたい。
4 食品衛生調査会毒性・添加物部会(以下、合同部会と言う)の性格、および設置趣旨を説明されたい。
5 合同部会の現在の構成メンバーを、各人の所属も含め、説明されたい。また、部会長は誰か。
6 合同部会の審議課題は誰が決定するか。
7 JECFAが適宜改定しているA(1)、A(2)リストを検討し答申することは合同部会の任務と認識しているがいかがか。
8 二の6から二の8までで指摘した事実について、合同部会での議事録を提出されたい。
9 合同部会での臭素酸カリウムに関する討議が前項以外にあれば、その諮問内容や発言者を含め、議事録を公開されたい。
10 臭素酸カリウムを食品添加物リストから削除し、国内での使用を禁止しても、輸入小麦粉や小麦粉調製品に添加されてわが国に入ってくる可能性があると思われるがいかがか。また過去においてそのような事例があれば示されたい。
11 前項の質問への回答として、「事例がある」あるいは「事例がありうる」とするならば輸入相手国に対して禁止措置を求めることはできるのか。禁止措置を求めることができるならば、輸入小麦粉あるいは小麦粉調製品のチェックはどの機関が行うのか。
12 臭素酸カリウムの使用を禁止した後イギリス政府は、一九九二年に追跡調査を実施し臭素酸カリウムを違法に使用したパンの有無を調べ、監視を続けている。
 わが国では、一九八四年に臭素酸カリウムの使用規制強化措置を実施したあと、前記のような監視・追跡調査等を実施したか。その後の監視・追跡調査の実績があれば、その年月日、結果および測定方法について詳細に説明されたい。
 また、監視・追跡調査を実施していなければその理由を説明されたい。
13 臭素酸カリウムが添加された小麦粉の輸入を禁止し、食品添加物リストから削除すべきであると考えるがいかがか。

四、臭素酸カリウムの食品業界での用途について

 なぜ、危険な臭素酸カリウムを使う必要があるのか、という素朴な疑問について、以下その実情を明らかにすべく質問する。

1 食品添加物としての臭素酸カリウムの用途、使用方法、使用基準、残留基準等につき食品衛生法関係法令、告示等ではどのように定めているか、説明されたい。
2 一九八四年に厚生省は、食品添加物としての臭素酸カリウムに関する法令、告示等を改正しているが、その内容および改正理由について説明されたい。
3 水産練り製品の製造において、食品添加物としての臭素酸カリウムの使用を厚生省は認めていたが、前記法令、告示等の改正時に禁止している。禁止した理由は何か。
4 前記法令、告示等の改正時に、パンの製造においては臭素酸カリウムの使用を認めたが、その理由を説明されたい。また、使用を認めるについて、業界サイドからなんらかの要望等はあったか。あればその年月日、内容について説明されたい。
5 わが国では、製パン用の小麦粉処理剤以外に、食品業界において臭素酸カリウムの使用を認めているか。
6 日本パン工業会が「小麦粉処理剤としての臭素酸カリウム」の使用を自主的に規制していると聞くが事実か。事実であれば二で触れた諸外国での現状に鑑み、この際全面使用禁止措置をとるべきであると考えるが、政府の見解を明示されたい。

五、化学物質「臭素酸カリウム」の検出技術について

 危険な化学物質である臭素酸カリウムをパンの原料の一部に使用しても、パン製造時の加熱で分解するので残留しない、と言われても国民は納得できない。JECFAが援用する「新しい分析方法」など、科学技術の進歩は目覚ましいものがある。ここでは、「パンに臭素酸カリウムは本当に残留していないのか」という疑問に答えるべく、分析方法について質問する。

1 食品中に残留する臭素酸カリウムの測定に際しては、臭素酸イオンを測定するのか、臭素を測定し臭素酸カリウムの量を推計するのか、あるいは全く別の方法がとられているのか。その際の検出限界はppmで考えているか、あるいはppbで考えているか。
2 最高水準のイオンクロマトグラフ分析装置が国立衛生試験所に導入されていると聞くが、導入している部門およびその目的を説明されたい。
3 国立衛生試験所に導入されているイオンクロマトグラフ分析装置のメーカーをすべて部門ごとに明らかにされたい。
4 厚生省・農水省所管の研究・分析機関で、イオンクロマトグラフ分析装置を使用し、食品添加物の分析をしたことはあるか。あれば、その内容を説明されたい。
5 四の2で述べた法令、告示等の改正時に厚生省が実施した、パン中に残留する臭素酸カリウムの測定試験の測定方法、測定結果を公表されたい。
6 イオンクロマトグラフ分析装置で測定すると、パンの中に残留する臭素酸イオンが、数十ppbまで検出可能との結果が出ているが把握しているか。
 また、イギリス政府がパン製造時の臭素酸カリウム使用を禁止する根拠となった測定方法でも、パン中に残留する臭素酸カリウムが最少一七ppbという数値で検出されていると聞くがいかがか。
7 パン中に残留する臭素酸カリウムの測定方法として、指定検査機関で行われているオルトトリジン吸光光度法での検出限界を説明されたい。またその他の測定方法があれば、その検出限界についても説明されたい。
8 食品衛生法で定める食品分析の指定検査機関で、パンに残留する臭素酸カリウムの検出に際し、イオンクロマトグラフ分析装置を使用している機関はあるか。あるとすればその機関名を報告されたい。
9 食品衛生検査指針によれば、食品中の臭素酸カリウムの測定方法は「臭素酸カリウムを測定するイオンクロマトグラフィーで行うものとする」と規定されているが、この場合の検出限界を示されたい。
10 前項の測定方法が指定された年月日を明らかにされたい。
11 (財)日本食品分析センターでは、パンの中に残留する臭素酸カリウムの分析をどのような分析方法で行っているか。イオンクロマトグラフィーで分析している場合、同センターが導入している装置のメーカー名をすべて挙げられたい。またそれぞれの分析装置の検出限界をあわせて明らかにされたい。

六、小麦粉処理剤としての臭素酸カリウムの代替技術について

 私の調査では、小麦粉処理剤としての臭素酸カリウムの代替技術が開発され、すでに食品業界で独自の流通が始まっている。この事実をより明確にするため、以下質問する。良い技術はどしどし採用し、国民の食卓を一層安全なものたらしめることは国の責務であると考えるためである。

1 国産小麦は、グルテンの含有量が少ないためパンは焼けないとされてきたが、小麦粉改良剤(麹)を使用すると、国産小麦でもパンが焼け、実際に商品が流通している。その現状を説明されたい。
2 この、小麦粉改良剤(麹)の技術をもってすれば、国産、外国産を問わず、小麦粉への臭素酸カリウムの添加を禁止できると考えるがいかがか。
3 小麦粉処理剤としての臭素酸カリウムの使用を禁止している(あるいは禁止しようとしている)国・地域等に、この小麦粉改良剤(麹)の技術を紹介し、この技術を使用した小麦粉についてのみ輸入を許可すべきであると考える。民間が臭素酸カリウムの使用を禁止している国・地域等の小麦粉の輸入を行った場合、現行法規に抵触する可能性はあるのか。また、政府は率先して臭素酸カリウムを使用しない技術の紹介と、臭素酸カリウムの使用を禁止している小麦粉の輸入を推進されてはいかがか。

七、ポストハーベスト農薬について

 次に、世界各国で収穫された小麦そのものについて質問する。最近やや下火になった観のある「ポストハーベスト農薬が小麦に残留し、国民の体内に入りつつある」という問題である。
私の調査では、ポストハーベスト農薬に替わりうる新技術の実験が食糧庁で開始されていると聞く。また、ポストハーベスト農薬問題の解決には、国際的な枠組みづくりが必須であり、政府の果敢な対応を期待する意味もあり、以下質問する。

1 輸入農産物において、外国で収穫後に農薬投与が必要な理由を説明されたい。
2 輸入農産物に残留が許可されている農薬名およびその残留基準を、農産品目ごとに説明されたい。
3 輸入農産物において、残留あるいはその使用を認めていない農薬が摘発された事例を過去三年間にわたって挙げられたい。
4 農薬取締法には、農産物についての検査義務や、同法において環境庁長官が定める基準と規定されている農薬登録保留基準を超えた場合の規制措置、罰則規定が定められていない。これはなぜか。そもそも農薬取締法を施行した趣旨はなにか。
5 輸入農産物において、指定農薬の残留基準オーバーや指定外農薬の使用が判明した場合、通常どのような措置をとっているか。措置の根拠を説明されたい。
6 輸入相手国に対して、ポストハーベスト農薬やくん蒸剤投与に関するわが国の使用基準を示し、その遵守を呼びかけたことはあるか。あればその内容を説明されたい。
7 七の5のチェックはどのようにしているか。農薬の種類ごとにその検出方法、検出機関、およびその機関がいつの時点で検査しているかを説明されたい。
8 ポストハーベスト農薬としてわが国が指定している農薬以外の薬物が使用されている場合、輸入相手国からの事前の情報開示はあるのか。あるとすれば具体例を挙げ、そのシステムを説明されたい。
9 前項で、輸入相手国からの事前の情報開示というシステムがない場合、わが国でのチェックシステムはあるか。あれば具体例を挙げ、そのシステムを説明されたい。
10 食糧庁は、米・麦について、炭酸ガスによる貯蔵試験を行っていると聞くが、その内容を説明されたい。
11 わが国で収穫された米について、炭酸ガスによる長期保存が可能となったと聞くがその内容を示されたい。
12 炭酸ガスによる貯蔵技術の確立は、化学薬品を使用したくん蒸処理やポストハーベスト農薬に替わる新技術であると認識するがいかがか。
13 輸入米とともに輸入小麦について、なぜこの技術を適用しないのか。その理由を説明されたい。
14 輸入小麦のポストハーベスト農薬の代替技術として、産地およびわが国での炭酸ガスによる貯蔵技術は使用可能か。可能でなければその理由を説明されたい。
15 輸入小麦の相手国で、収穫後の長期保存並びに輸送の各段階で、炭酸ガスによる保存技術への切り替えはできないか。民間がこれを行った場合、現行法規に抵触するか。
16 食糧庁が推進している炭酸ガスによる農産物貯蔵技術を、他の農産物の長期保存・長期輸送に応用できるものは応用すべきであると考えるがいかがか。
17 ポストハーベスト農薬の使用を削減し、将来的に全廃していくための新技術は他にあるか。
18 最後に、輸入小麦について、ポストハーベスト農薬の種類、使用状況を、輸入相手国(地域)別に詳しく説明されたい。

八、国内施設における輸入農産物に対するくん蒸処理について

 収穫された小麦は、わが国に輸入される際、害虫等が発見された場合は致死性のあるガス等による「くん蒸」が行われている。「残留しないから安全」というがやはり、分析技術や毒性化学の進歩によってはどうなるか分からない、というのが国民の率直な不安であると考える。したがって、以下のとおり質問する。

1 輸入農産物につき、くん蒸対象としている品目を示されたい。
2 対象品目ごとのくん蒸剤の名称、物質名および使用基準(残留基準を含む)を示されたい。
3 使用基準設定の理由であるくん蒸剤の危険性を、品目ごとに説明されたい。
4 前項で示されたくん蒸剤の残留の有無を測定する分析方法およびそれらの検出限界をすべて示されたい。
5 前項で説明された分析方法の適用年度を方法別に明らかにされたい。
6 くん蒸剤の残留測定方法(装置)は分析技術の進歩に伴い、当然見直しがあるものと考えるが、八の4で説明のあった分析方法の、適用年度後の見直し作業について説明されたい。
7 くん蒸剤の残留基準が遵守されているか否かをチェックする機関および部署名を明らかにされたい。
8 例えば輸入小麦において、臭化メチルを使用したくん蒸処理を行う場合、農水省ではその残留基準を一五ppm以下としているが、厚生省では五〇ppm以下であれば食用として大丈夫であるとしている。この差異の理由を簡潔明瞭に説明されたい。
9 臭化メチルの残留濃度が高いため食用として流通できなくなった輸入小麦粉の処分はどのようになされているか。実例があれば例示し説明されたい。
10 輸入相手国でポストハーベスト農薬を使用していない場合でも、輸入に際し、くん蒸を行うのであれば、くん蒸剤が残留基準以内であれば輸入農産物は一〇〇%安全であるという保証を消費者に対してするべきであると考えるがいかがか。
 また仮に、くん蒸剤の現在の残留基準が医学的見地から危険であると判定された場合の責任の所在、罰則を含めた処分、および販売できなくなった輸入農産物の所有者に対する責任ある処理方針を明確にすべきであると考えるがいかがか。
11 くん蒸処理を全面的に廃止する条件とは何か。輸入農産物の品目ごとに説明されたい。
12 国内施設におけるくん蒸処理を廃止するという根本方針を持っているか。国際的な枠組みづくりや、炭酸ガス使用等の新技術開発推進なども含め、明確に答弁されたい。

九、国産小麦の奨励策について

 国産の小麦ならばより安全ではないのか、というのが率直な発想であるが、実際はどうなのかについて質問する。

1 国産小麦の生産数量を、過去五年について示されたい。
2 国産小麦の生産量の推移について、今後の見通しを説明されたい。
3 農林水産省「麦類作付面積調査」では、昭和三五年の小麦作付面積は約六〇万haであり平成三年の小麦作付面積は二四万haへと激減したが、国産小麦の生産量を拡大する計画はあるか。また、国産小麦の消費拡大政策はあるか。あれば説明されたい。
4 国産小麦の生産量を増大させることは、食糧自給率の向上と、農薬の規制・管理など国内法規で対応ができるという意味での安全性の向上にとって有益であると考えるがいかがか。
5 国産小麦の収穫後、ポストハーベスト農薬は使用されているか。またくん蒸処理はされているか。
6 国産小麦を市場流通させる場合、炭酸ガスによる貯蔵は可能か。
7 食糧用として輸入される小麦の数量、そのうちハード小麦と呼ばれる、主に製パン用強力粉の輸入数量をそれぞれ最新の統計で示されたい。
8 民間企業が、国内の生産農家と直接、自由に小麦の取引を行った場合、現行法規に抵触するか。抵触する法規があれば説明されたい。
9 国内の全農産物について、市場流通を自由化する計画はあるか。
10 外国産の小麦(小麦粉)に比べ、より安全性の高いと思われる国産小麦に小麦粉改良剤(麹)を使用すると食パンの製造も可能となるため、国産小麦を奨励していきたいと考えるがご意見をうかがいたい。

十、より安全な小麦(小麦粉)の選択的輸入について

 個人、もしくは企業が、食の安全を考え「ポストハーベスト農薬不使用」「臭素酸カリウム無添加」の小麦粉、あるいは「ポストハーベスト農薬不使用」の小麦を輸入し、くん蒸しないことを希望した場合、現行法規に抵触するか。抵触する法規があれば明示されたい。

十一、小麦粉輸入について
 気候等の諸条件に規定され、現状では小麦(小麦粉)の大半は輸入に頼らざるを得ない。ポストハーベスト問題のある小麦よりは、「ポストハーベスト農薬不使用」という小麦粉での輸入が食の安全を考えればベターである。次に小麦粉輸入にまつわる問題について質問する。

1 小麦粉一〇〇%での輸入を実施する場合、関係法規によれば、重量換算でkg当たり三〇円四七銭の関税のほかに、食糧庁分の関税相当量として七〇円二〇銭を納めなければ輸入できない。したがって輸入=販売者はkg当たり一〇〇円前後の費用負担を強いられている。そのため国内での不利な価格競争を強いられ、小麦粉一〇〇%での輸入販売は事実上不可能となっている。小麦粉調製品での輸入販売を考えると、実行関税率表では一六~二四%前後の関税がかけられ輸入=販売者サイドにとっては厳しい規制となっている。こうした規制をする理由はなにか。
2 小麦粉一〇〇%での輸入に関する輸入者の費用負担を小さくすれば、無駄な作業が省かれ、国民の利点は多いと考えられるがいかがか。
3 小麦粉輸入に際して、関税の引き下げを行ってはどうか。

十二、表示について

 私の調査では、臭素酸カリウムや収穫後農薬を使用していないという証明書を発行するという輸出国(輸出者)が存在する。それでは、そのような小麦粉を使用したパンや加工食品が出回り、消費者が一目でそれとわかる表示がなされればと考えるため、以下質問する。

1 体内に摂取された場合、その危険性が指摘されている臭素酸カリウムについて、同物質を添加していない小麦粉、およびそれを原料として製造された加工食品について、明確に認識できるよう表示を指導するか義務化するべきであると考えるがいかがか。また、この表示を民間独自で行った場合、現行法規に抵触するか。
2 ポストハーベスト農薬についても、同様に、ポストハーベストフリーの小麦(小麦粉)についての表示を指導するか義務化するべきと考えるがいかがか。また、この表示を民間で行った場合、現行法規に抵触するか。
3 くん蒸処理についても、くん蒸処理を行っていない小麦(小麦粉)については、表示を指導するか義務化するべきと考えるがいかがか。また、この表示を民間で行った場合、現行法規に抵触するか。

十三、最後に

 世界最大の貿易農産物である小麦(小麦粉)について質問をしてきた。私は、この質問主意書で取り上げた事項およびその他の事項について、いずれも大消費国であるわが国が果たしうる役割、果たすべき役割が存在すると確信している。異常気象や人口問題で、世界の食糧危機が叫ばれ始めて久しいが、いまこそ代替技術の普及を含め、わが国がその役割を果たすべきときであると考え、質問するものである。

1 臭素酸カリウム無添加、ポストハーベスト農薬を使用せず、くん蒸処理もしていない小麦(小麦粉)使用を推進し、これらの代替技術である小麦粉改良剤(麹)、炭酸ガスによる保存技術を推奨し、食の安全を願う国民の期待に応えるべきであると考えるが明確な回答を頂きたい。
2 これら代替技術を世界規模に普及させることにより、世界の食糧問題にわが国が貢献することが可能となると考えるがいかがか。またこうしたことを民間が主導する前に、政府が積極的に動かれることを期待するが考えを明確にされたい。
3 小麦(小麦粉)に関する本質問主意書の各項も含め、民間人をも含めた食糧問題全般に関する新たな審議機関を設置するべきであると思うがいかがか。

  右質問する。