質問主意書

第134回国会(臨時会)

質問主意書


質問第五号

最低資本金制度の適用猶予に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成七年十二月十一日

荒木 清寛   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   最低資本金制度の適用猶予に関する質問主意書

 平成二年の商法改正によって、株式会社及び有限会社の最低資本金がそれぞれ一千万円、三百万円に引き上げられ、最低資本金額に満たない会社は、来年三月三十一日までに増資をするか、合名又は合資会社に組織変更しなければ解散したものとみなされることになっている。
 会社の資本金が、万一の場合の債権者保護のために確保されていなければならない重要なもので、その額が多いほど経営の安定化にもつながるものであることは十分に理解している。
 しかし、最低資本金引上げの改正は、バブル経済の真っ盛りの時期に立案され、実施されたものであり、現在の経済情勢はこの制度の導入時とは一変している。しかも経済の不況は長期化し、今なお回復の兆しは見えていない。最低資本金の引上げによって増資が義務付けられるのは、中小企業とりわけ零細な企業であり、現在の不況の中で最もしわ寄せを受けている企業である。中小零細企業のほとんどは企業の存続自体に汲汲としている状態で、増資を行うにも余裕のない企業が多い。適用猶予期限が間近となったこの時期になっても、今なお対象会社の約三分の一が基準未達成といわれている状況は、このことを証明するものである。
 このような状況下において、強制的に増資を義務付け、それができなければ会社を解散させる措置をとることは著しく酷といわざるを得ない。
 よって、次の諸点について質問したい。

一、法改正当時、最低資本金額に満たない会社数は、株式会社が約八十三万五千社、有限会社が約七十万社と推計されていたが、現時点において、なお最低資本金額に達していない会社数はどのくらいあると把握しているか。

二、増資ができず会社が解散となれば、経営者はもちろんのこと従業員、取引先等に与える影響は大きく、失業や不況をさらに拡大することにもなりかねない。経済の活性化のため、あらゆる施策が必要とされているこの時期に、あくまでこのような措置をとることは政策的に問題であると思うがどうか。

三、株式会社及び有限会社の最低資本金に関する改正商法附則の適用猶予期間については、阪神・淡路大震災の影響を考慮して適用猶予期間を一年間延長する措置がとられた地域も含め、経済情勢が回復するまで延長するよう法改正が必要だと思うがどうか。

四、改正商法附則によると、法務大臣がみなし解散の旨の官報公告をしなければならない時期は、猶予の「期間が満了したとき」となっている。仮に三で述べたような新たな法改正を行わない場合でも、みなし解散公告を当分の間見合わせる考えはないか。

五、増資ができない会社には、合名会社又は合資会社への組織変更が認められるが、物的会社から人的会社への組織変更は、無限責任社員を生み出さなければならないという甚だ難しい問題が横たわっており、営業活動の継続の面からいっても取引先の信頼を失うなど弊害も多い。組織変更の措置ではそれらに対する有効な手当にはならないのではないか。

六、会社存続の便法として人的会社に組織変更をした場合、将来、増資の条件が整うに至ったときには、再び物的会社である株式会社や有限会社に組織変更することを認める措置を講ずるべきではないか。

七、来年三月三十一日までの猶予期間内に資本増額の登記をすると、登記に要する登録免許税が軽減されるが、解散会社とみなされた後、総会で会社継続の特別決議をして三年以内に増資をした場合には、この優遇措置はどうなるのか。

八、建設業、宅地建物取引業、風俗営業など、営業に当たって官公庁の免許、許可を受けている業種の場合、会社が解散とみなされたとき、これらの許認可はどうなるのか。また再び営業を開始する場合でも、許認可を取り直さなければならないのか。

  右質問する。