質問主意書

第132回国会(常会)

答弁書


答弁書第三号

内閣参質一三二第三号

  平成七年三月七日

内閣総理大臣 村山 富市   


       参議院議長 原 文兵衛 殿

参議院議員栗原君子君提出自衛隊法第百条の八に基づく自衛隊機派遣に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員栗原君子君提出自衛隊法第百条の八に基づく自衛隊機派遣に関する質問に対する答弁書

一について

 武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空へ派遣するいわゆる海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されないが、他方、武力行使の目的を持たないで自衛隊の部隊を他国に派遣することは、憲法上許されないわけではない。御指摘の自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第百条の八の規定による在外邦人等の輸送は、武力行使の目的を持つものではないから、憲法第九条との関係で問題を生ずるものではない。

二について

 自衛隊法第百条の八の規定による自衛隊機の派遣は、生命等の保護を要する在外邦人等を航空機により輸送することを目的とするものであり、武力行使の目的を持つものではなく、御指摘のようなおそれはないと考えている。

三について

 自衛隊法第百条の八の規定により、外務大臣から防衛庁長官に対して在外邦人等の輸送の依頼があった場合には、防衛庁長官は、当該輸送の運航責任を有する者としての専門的見地から、運航の安全が確保されているか否かの判断を行う。この場合、防衛庁長官は、外務大臣が行う安全性に関する判断を踏まえた上、更に空港の滑走路の状況や飛行経路上の航空保安施設の機能等の面から安全性の判断を加えることとなる。
 このように、外務大臣及び防衛庁長官が在外邦人等の輸送を行うに当たって安全性に関する判断を行い、両者が共同して安全が確保されていると認めるときに初めて当該輸送が実施される。

四について

 御指摘の答弁は、従来、政府が答弁書等で述べてきた「仮に、海外における武力行動で、自衛権発動の三要件に該当するものがあるとすれば、憲法上の理論としては、そのような行動をとることが許されないわけではない」という純理論的な話を申し上げたにとどまり、その上で、自衛隊法第百条の八の規定による自衛隊機の派遣に当たっては、派遣先国政府等の措置によって安全が確保されていることが前提であって、当該自衛隊機が攻撃されるような事態はおよそ考えられないとの趣旨を述べたものである。

五及び六について

 自衛隊法第百条の八の規定による在外邦人等の輸送の際に当該邦人等が生命身体に損害を受けた場合、不可抗力によるような事態のときには、国に責任が生じないところである。
 かかる事態の具体的な態様について想定することは困難であるが、いずれにせよ、政府としては、かかる事態についても、個々の具体的事情等を踏まえ、適切に対応してまいる所存である。