質問主意書

第132回国会(常会)

答弁書


答弁書第二号

内閣参質一三二第二号

  平成七年二月十七日

内閣総理大臣 村山 富市   


       参議院議長 原 文兵衛 殿

参議院議員翫正敏君提出返還高レベル放射性廃棄物に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員翫正敏君提出返還高レベル放射性廃棄物に関する質問に対する答弁書

一の1について

 本年二月後半に開始される予定のフランスから我が国へのガラス固化体(使用済燃料を溶解した液体から核燃料物質その他の有用物質を分離した残りの液体をガラスにより容器に固型化したものをいう。以下同じ。)の返還輸送(以下「本輸送」という。)に関しては、本輸送に用いられる輸送船がフランスのシェルブール港を出港する一日ないし二日前に電気事業者等がその出港予定日を公表することとしているが、現時点においては、当該予定日が公表されていないので答弁は差し控えたい。輸送航路については、本輸送の関係国の政府及び事業者の間で公表することについて合意が得られていないため、答弁は差し控えたい。また、我が国のむつ小川原港へ到着するまでに一か月半から二か月程度を要すると承知している。
 今後のフランスから我が国へのガラス固化体の返還輸送については、その頻度は一年に一回から二回程度であり、経路は未定であると承知している。

一の2について

 フランス核燃料会社(以下「COGEMA」という。)は、昨年四月に電気事業者等が公表したとおり、本輸送を本年二月後半に開始する予定であると承知している。なお、当該輸送船がフランスのシェルブール港を出港する一日ないし二日前に電気事業者等がその出港予定日を公表することとしている。

一の3について

 本輸送は、輸送容器等については国際原子力機関及び輸送船については国際海事機関の定める国際的な安全基準を取り入れた国内法令等に基づいて実施される等、十分に安全が確保されるものである。したがって、我が国としては、かかる輸送に際し、輸送航路の沿岸諸国が防災対策をとる期間が必要であるとは考えていない。

一の4について

 輸送航路の沿岸諸国に対する輸送航路及び輸送日程の通知については、これを行うことの是非を含め、関係国の政府と調整中である。

一の5について

 我が国としては、本輸送に関する情報は可能な限り公開する方針であり、当該方針については本輸送に関し照会があった諸国に申し述べている。他方、具体的な国名については相手国政府との関係もあり言及を差し控えたい。

一の6について

 輸送航路及び日程等の公表については、昨年四月より、関係国政府の間で協議されている。

一の7について

 仮定の御質問に対し、見解を述べることは差し控えたい。

一の8から10について

 本輸送は、輸送容器等については国際原子力機関及び輸送船については国際海事機関の定める国際的な安全基準を取り入れた国内法令等に基づいて実施される等、十分に安全が確保されるものである。我が国としては、これら両国を含め諸外国が有する安全性についての懸念を払拭し、輸送が円滑に行われるよう、引き続き所要の施策を推進していくこととしている。

二の1について

 科学技術庁は、電源開発促進対策特別会計法(昭和四十九年法律第八十号)第一条第二項に規定する電源立地対策として、放射性廃棄物の廃棄に係る安全性を実証することにより、放射性廃棄物の廃棄施設の立地の円滑化を図るため、高レベル放射性廃棄物輸送物が海中に没したことを想定した場合の環境への影響について事例の検討を行い、その結果については、本年二月十三日に公表している。

二の2について

 本輸送は、輸送容器等については国際原子力機関及び輸送船については国際海事機関の定める国際的な安全基準を取り入れた国内法令等に基づいて実施される等、十分に安全が確保されるものであり、海洋環境に対して実質的な汚染をもたらす等のおそれがあると信ずる合理的な理由はないので、二の1についてにおいて述べた事例の検討以外に環境影響評価を行う予定はない。
 なお、二の1についてにおいて述べた事例の検討結果について、カリブ諸国を含め、外国から照会があった場合には、その内容を通知することとしている。

三の1について

 フランスから返還されるガラス固化体に関し、COGEMA及び我が国の電気事業者間の再処理契約に基づきCOGEMAは電気事業者にガラス固化体の仕様を提示したが、今回返還されるガラス固化体について国が当該仕様の確認を行うような法令に基づく制度はない。
 なお、今回返還されるガラス固化体に関し、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「原子炉等規制法」という。)に基づき、輸送容器にガラス固化体を収納したものがBM型輸送物に係る技術上の基準に適合することについて科学技術庁長官が確認しており、また、ガラス固化体が電気事業者により廃棄物管理設備に廃棄される場合に講じられる保安のために必要な措置が、核燃料物質等の工場又は事業所の外における廃棄に関する規則(昭和五十三年総理府令第五十六号)の規定に適合することについて科学技術庁長官が確認することとなっている。

三の2について

 今回返還されるガラス固化体の日本原燃株式会社(以下「日本原燃」という。)の廃棄物管理施設(以下「管理施設」という。)への受入れ及び輸送に関し、ガラス固化体が核燃料物質を含むこと等から法令上特に必要とされる手続として、今後、原子炉等規制法に基づき、科学技術庁長官に事業開始の届出及び青森県公安委員会に運搬の届出を行うとともに、同委員会の運搬証明書の交付、科学技術庁長官の廃棄に関する確認及び運輸大臣の運搬に関する確認を受けることとなっている。

三の3について

 COGEMAは既に電気事業者にガラス固化体の仕様を提示している。また、ガラス固化体の廃棄に係る安全性は、原子炉等規制法に基づく廃棄物管理の事業に係る規制及び工場又は事業所の外において行われる廃棄に係る規制等によって確保される。

三の4について

 今回返還されるガラス固化体が電気事業者により廃棄物管理設備に廃棄される際には、原子炉等規制法に基づき、その放射能濃度、発熱量等が当該廃棄物管理設備において管理することができるものとすること等の保安のために必要な措置を講ずること等が電気事業者に義務付けられている。

三の5について

 今回返還されるガラス固化体の容器の材料はステンレス鋼である。ステンレス鋼がどれだけの期間問題なく使用できるかについては、使用される環境条件等により異なる。

四の1及び11について

 高レベル放射性廃棄物の処分については、長期間にわたり人間環境から隔離された状態にする必要があるとの観点から、「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」(平成六年六月二十四日原子力委員会決定。以下「長期計画」という。)において、安定な形態に固化した後、三十年間から五十年間程度冷却のための貯蔵を行い、その後、地層処分(地下の深い地層中に処分することをいう。以下同じ。)を行うことを基本的な方針とすることが示されている。

四の2について

 長期計画においては、処分予定地の選定は西暦二千年を目安に設立を図ることとされている処分事業の実施主体(以下「実施主体」という。)が行うこととされているが、実施主体が地層処分の候補地として適切と思われる地点を選定するに当たっては、文献調査等により地質環境等の自然環境や土地利用状況等の社会環境について候補地として特段の問題が見いだされないことが重要な判断基準になるものと一般的には考えられる。

四の3について

 長期計画においては、高レベル放射性廃棄物の処分予定地の選定は、実施主体が地元の了承を得て行うこととされている。処分場の建設及び操業の計画については、西暦二千三十年代から遅くとも西暦二千四十年代半ばまでの操業開始が目途とされている。

四の4について

 本年一月に竣工した管理施設の建設費は、約六百億円であると承知している。

四の5、6及び9について

 管理施設については、原子炉等規制法に基づき日本原燃に対して廃棄物管理の事業の許可をするに際して、「廃棄物管理施設の安全性の評価の考え方」(平成元年三月二十七日原子力安全委員会決定)等を用いて審査を行い、管理施設の敷地及び敷地周辺には管理施設の耐震設計上考慮すべき活断層はないこと及び管理施設は「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」(昭和五十六年七月二十日原子力安全委員会決定)に示されている地震力に対して耐震性を有する設計であることを確認している。また、管理施設においては、放射性物質を敷地外へ放出する可能性のある異常な事象の発生は考えられない。
 海外の事故については、現時点で把握している範囲では、ガラス固化体の貯蔵中にガラス固化体から放射性物質が想定以上に放出されたことはないと承知している。
 なお、管理施設における事故等の対策については、原子炉等規制法により、非常の場合に採るべき処置等について定めた保安規定を遵守すること等が日本原燃に義務付けられている。

四の7及び8について

 科学技術庁は、平成六年三陸はるか沖地震の発生後、日本原燃が管理施設の巡視、点検を実施し、安全上異常のないことを確認して、その旨を速やかに公表したとの連絡を受けている。なお、科学技術庁は日本原燃から文書による報告は受けていない。また、今後も地震発生後は、日本原燃は必要に応じて管理施設の巡視、点検等を行うこととしていると承知している。

四の10について

 管理施設において管理されるガラス固化体が腐食等によりその閉じ込め機能に異常を来すことは想定されていないが、管理施設では施設からの排気中の放射性物質の濃度を測定することとしており、これによりガラス固化体の閉じ込め機能の健全性が確認されることとなっている。

四の12について

 海外から我が国に返還されるガラス固化体は冷却のための貯蔵が行われた後地層処分されることとなっているが、その貯蔵管理から処分に至るまでの総費用については、処分に係る費用の見積りが今後検討されることとなっていることから、現時点では具体的に取りまとめられてはいないと承知している。
 海外から我が国に返還される低レベル放射性廃棄物の貯蔵管理から処分に至るまでの総費用については、返還される数量等が今後事業者間の協議を経て決められることになっていること等から、現時点では具体的に取りまとめられてはいないと承知している。